平成28年8月号(Vol.135)
熱性けいれん~新着情報~
山梨県が日本一番の暑さの日が続いています。夏休みは花火大会・盆踊り・夏祭り、海や山にと家族で出掛ける行事がたくさんあるのではないでしょうか?うちは神明の花火大会(市川三郷町)と家族旅行を予定しています。今までうちの寝室にはクーラーがなく、がんばって耐えてきましたが、先月体のためを考えてクーラーを設置しました。年々老いていく体をいたわりながら余生を送りたいと思います。
先月は参議院選挙があり、県内では宮沢由香さんが当選しました。子育て支援を強く訴えていた方です。女性の目線で現場の声を伝えながら政策に生かして欲しいと願っています。6年間健康に気を付けて頑張っていただきたいです。
今月は「熱性けいれんガイドライン2015」が昨年3月発表されたことを受けて、熱性けいれんについて取り上げたいと思います。
18年ぶりに改訂され、新しい知見もありますのでこれについてお話します。
熱性けいれんについて
熱性けいれんは生後6か月から5歳までに起こり、熱を伴ったけいれんが起こります。頻度は20~30人に1人程度、発作の時間は5分以内におさまることが多く、後遺症などは基本的にはありません。
けいれんが起こった場合、非常に慌ててしまいますが、冷静になることが大切です。まず安全な場所へお子さんを寝かせて、服をゆるめ、顔は横向きして、口には決して物を入れないで下さい。人を呼び、痙攣時間・痙攣の様子を観察し、痙攣が続くようであれば救急車を呼ぶことを考える必要もあります。
ダイアップ予防投与の基準が変更
ダイアップ予防投与とは熱が出た場合、ダイアップ(ジアゼパム)坐薬を使用することでけいれんを予防する方法です。37.5度以上を目安にダイアップ坐薬を入れ、8時間後に熱があればもう1度ダイアップ坐薬を入れることでけいれんを予防します。その反面、ダイアップ坐薬による副作用として、眠気やふらつきなどがみられることがあるため注意する必要があります。熱性けいれんは発熱後24時間以内に起こることが多いので3回目の使用は必要ありません。期間は最終けいれんから1~2年もしくは4~5歳までとなっています。
今回のガイドラインでは、ダイアップ坐薬の使用を従来よりも控える方向となりました。対象者は15分以上のけいれんを認めた方、もしくは(1)部分的なけいれんまたは24時間以内に反復する(2)熱性けいれん出現前より存在する神経学的異常・発達遅滞(3)熱性けいれんまたはてんかんの家族歴(4)12か月未満での発症(5)発熱後1時間未満のけいれん(6)38度未満でのけいれんの6項目のうち2つ以上を満たし、かつ2回以上けいれんをした場合となりました。よってそれ以外の場合は対象者となりません。再発率は(3)~(6)が該当しなければ約15%、該当すると約30%になります。
ただし、ガイドラインはあくまでも目安となります。1人1人対応が違って構いません。一番はかかりつけ医と相談し、医療体制や家族の不安・心配を加味し対応していくことが最善と思われます。
てんかんになりやすくなるのか?
熱性けいれんがあるお子さんがてんかんを起こす頻度は2~7.5%、一般人口比0.5~1%より高くありますが、熱性けいれんのお子さんの90%以上はてんかんを発症しません。熱性けいれんになると、てんかんへ進展・移行することにはなりません。
なお、ガイドラインは以下に公開されていますので参考にして下さい。
ウティナンさんの裁判結果報告
不法滞在の母親の元に日本で生まれた現在高校生のウォン・ウティナンさんが在留許可を求め、昨春から裁判が始まり数回の公判を経て、先月ようやく判決結果が出ました。「完全敗訴」という残念な結果でした。ただ、判決文の最後に「仮に、お母さんが帰国しウティナンさんの監護養育をする人がいる場合に限り、ウティナンさんだけ在留許可が出る可能性もある」という趣旨の事が書かれていました。これは皆様からの署名・ご寄附・温かい応援の言葉・多くの方の公判の傍聴など多大なご支援があったからこそ、このような判決の文章を引き出すことができたのだと思います。皆様には心から感謝申し上げます。今後については2人の意思を確認し、お母さんはタイに帰り、ウティナンさんだけが日本に残る方向で進めていくことになりました。まだ決着していませんので、これからも見守っていただけたら幸いです。
参考文献
熱性けいれん診療ガイドライン2015
minds4.jcqhc.or.jp/minds/febrile_seizures/febrile_seizures.pdf