平成23年11月号(Vol.79)
最新の予防接種情報 Part3
秋が深まってきました。2011年も残すところ2か月となりました。今年は3・11の地震と津波、さらに原発事故で甚大な被害がでました。まだまだ復旧作業が続いています。私は4月被災地へ医療ボランティアに出向きましたが、自然の脅威に圧倒されました。原発事故は日本の方向性を変えた大きな出来事です。節電を続けながら、私たちに何ができるかを考え続けなければなりません。
政権が自民党から民主党に変わり、世の中が大きく変わったのでしょうか?原発事故であれほど大きな被害がでても、9月に行われた山口県上関町の町長選で原発建設推進派が勝利しました。原発ができて町が潤う構図があるのでしょうか?目先のことではなく、将来のこどもたちが安心できる社会にするために我々大人は考えなければならないと思います。読者の皆さんである若い方々の力が必要な時代がやってきています。
先月お話ししたロタウイルスワクチンが始まりそうです。今月もまだワクチン情報を伝えていきます。
インフルエンザワクチンの接種量が増量!
昨シーズンまで生後6~11カ月は1回0.1ml、1~5歳は1回0.2ml、6~12歳は1回0.3mlを計2回接種していました。今シーズンから、アメリカなどの国々と同じ接種量に変更されました。生後6~11カ月は1回0.25ml、1~5歳は1回0.25ml、6~12歳は1回0.5ml、に増量され、接種回数は今までと同じ2回です。生後6~11カ月のお子さんは昨年に比べて2.5倍増しに増量されました。接種量が増えることで、抗体量(=免疫)が上がり、インフルエンザから守る力が増します。今まで以上にインフルエンザワクチンの効果が期待できると思います。まもなく、インフルエンザがやってきます。うがい・手洗いでの予防、ワクチンを接種することで、インフルエンザに対する備えをしましょう。
予防効果は他のワクチンと比べて、低いと言われていますが、今回、接種量がアップしたことで、予防効果は上がってくると思われます。ワクチンをしても、インフルエンザにかかることはありますが、かかっても症状がひどくないことが多いので、小さい子ほど、毎年の接種をお勧めします。
B型肝炎ワクチンもお勧め!
不活化ポリオワクチンが来年度(来年12月以降)に認可される予定となり、一歩一歩、日本の予防接種政策も先進諸国からの遅れを取り戻しつつあります。不活化ポリオワクチンと同じく導入が大幅に遅れている予防接種として、B型肝炎ワクチンがあります。まだあまり知られていないワクチンですが、B型肝炎ワクチンはほとんどの国で定期接種になっています。日本ではHBs抗原陽性の母親から生まれたお子さんに対して、B型肝炎ワクチンを接種しています。実は、母子感染だけでなく、乳児期に父などからの感染や大人になってからの性交渉からの感染も考えられています。さらに、感染経路が分からず感染することもあります。 日本では、B型肝炎ウイルスの感染者は約100万人(約100人に1人)と推定されています。B型肝炎ウイルスに感染することで慢性肝炎になり、将来、肝硬変や肝臓がんに進行することもあります。生まれたら、できるだけ早いうちにB型肝炎ワクチンを接種し病気を予防しましょう。世界標準の接種スケジュールは生まれた時・生後1カ月・生後6カ月時の計3回接種します。
おまけ~エピペンが保険適応!~
エピペンって知っていますか?エピペンはハチなどに刺されたり、卵などを食べて、呼吸困難・めまい・意識障害・ショックなどの強いアレルギー症状(アナフィラキシー)がでた場合に使用する薬剤です。エピペンを携帯して、アナフィラキシーになったらすぐにその場で、注射します。今までは保険で取り扱いができなかったため、高額の自己負担が必要でしたが、今年9月から保険適応になっています。アナフィラキシーがあった方が対象になりますので、かかりつけ医に相談してください。
参考文献
Know VPD VPDを知って子どもを守ろう!