平成29年5月号(Vol.144)
適切な情報を知って子どもを守ろう!
桜も散り、新緑があふれる気持ちのよい季節になりました。休日は4歳になる娘とよく公園に行きます。ブランコが好きで何度も押してあげると喜んでいます。反面大学生の息子2人は大学生活を満喫しているようで、連絡してもなかなか返答してくれません。「遊んで!遊んで!」とまとわりついていた子どももやがて親離れします。パパ、ママと言ってくれる貴重な時期に子育てを楽しんでください。
先月、生後6か月児がハチミツ入りジュースで亡くなったという小児科医としては大変残念な事故が報道されました。今月はこの事故を受けて改めて乳幼児を育てる上での注意点を確認したいと思います。
生後6か月児、ハチミツ入りジュースで死亡
今年2月、東京で生後6か月の赤ちゃんがハチミツ入りのジュースを飲んで亡くなりました。離乳食として発症1か月前から毎日、市販のジュースにハチミツを混ぜて与えていたそうです。けいれん・呼吸不全等の症状を呈し、医療機関に救急搬送され、翌日に別の医療機関へ転院しました。検査の結果、便及び自宅に保管していたはちみつから、ボツリヌス菌が検出され「乳児ボツリヌス症」と診断されました。死亡例は国内で初めてだそうです。1歳未満の乳児は消化吸収の機能が未発達のため、菌が増殖されやすくなります。ただし、授乳中のママは摂取しても大丈夫です。情報が氾濫している時代、ネットではハチミツ入り離乳食レシピが紹介されていました。適切な情報収集について考えさせられる出来事でした。
窒息事故に注意!
赤ちゃんは何でも口に入れてしまいます。口がふさがってしまうと息ができず死亡することもあります。寝返りがままならない乳児には柔らかい布団の使用でうつぶせになって口がふさがれる、食べ物ではピーナッツなどのナッツ類、枝豆、あめ、ミニトマト、こんにゃくゼリー、キュウリ・にんじんなどのスティック、キャラメル、ポップコーンなどは形状や素材の特性により気管につまり窒息の危険があります。
食べ物以外にも、おもちゃのスーパーボールを飲み込む、コンビニの袋を頭にかぶったり、電気コード、カーテン・ブラインドのひもを首に巻きつけて窒息する危険があります。これは今までの事故を分析した結果から報告されています。過去の報告を活かして同じ過ちをおこさないことが大切です。合わせて誤飲で問題になるのがタバコ・医薬品・ボタン電池などです。子どもの手が届かない所に置きましょう。
溺水が家庭の浴槽で起こる!
溺水により毎年300人前後の子どもが亡くなっています。特に1歳前後の子どもが家庭の浴槽で溺水しています。わずかな残り湯も溜めない・1人や子ども同士だけで入浴させない・ママの洗髪中は子どもを浴槽から出すといった配慮で溺水の事故が防げます。わずか10cm溜めた水でも溺水が起こりますので、子どもが幼い時期には入浴後は残り湯を溜めないで下さい。
熱傷をさせないために
テーブルの上にある味噌汁・カップラーメン・お茶・コーヒーなどの入った器をこぼして、熱傷を負うケースをよく目にします。テーブルにテーブルクロスが敷いてあるとより危険です。ポットや炊飯器の蒸気・アイロン・ストーブ・グリルの蓋・整髪用の電気ゴテ・コンセントを入れたままの電気コードのプラグを舐めて口を痛めることもあります。予防としては、テーブルクロスは子どもが小さい時は使用しない・テーブルに置く熱い物は子どもの近くに置かない・ポットや炊飯器は子どもが届かない場所に置くなどの対策が必要です。熱傷は痛みが強く、瘢痕を残す場合もあります。熱傷した場合はまずしっかり冷やしてください。
1~19歳までの死因トップは不慮の事故です。この事故は保護者の注意で約6割防げると言われています。安全な環境で安心して子育てをしましょう。
祝!6市町村が病児保育事業、相互利用へ
病児・病後児保育施設を利用するには、住所によって利用が制限されていました。4月から甲府市、甲斐市、笛吹市、南アルプス市、中央市、昭和町の6市町村が協定を結び、6市町村の方は相互利用できるようになりました。全国的にも相互利用はまだ進んでいません。全国に先駆けて山梨県では少しずつ子育てしやすい環境が整備されてきていると感じます。今後、他市町村でも利用が広がることを期待します。
参考文献
厚生労働省ホームページ ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから
子どもの事故と対策 日本小児科学会小児救急委員会