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院長コラム

平成30年1月号(Vol.152)
発達障害について~幼児編~

2018/01/01(更新日)

 新年あけましておめでとうございます。2018年、皆さんはどんな年にしたいですか?私は仕事面では家庭で過ごしている医療的ケア児のいるご家族がもっと過ごしやすくなるように尽力していきたいと思っています。家庭では三男(高3)、四男(中3)が今春、高校、大学へそれぞれ進学します。進路が決まるまで親としては緊張していますが、子どもたちはその何十倍も緊張しているので応援していくつもりです。うちにはその緊張を和ましてくれる娘(5歳)がいて、無邪気に振る舞い笑いを誘ってくれるので助かっています。
 今月は発達障害について取り上げます。3年前から県内では「こころの発達支援センター」が中心となり勉強会を企画し、大学・病院・開業の小児科医らが参加してきました。その勉強会に参加することで、発達障害に関する新たな知見を得ることができました。
最近では診療中に両親や祖父母から「うちの子が発達障害ではないか?」といった質問を受けることがあります。より身近になりつつある発達障害に関して今月と来月の2回(幼児編・学童編)に分けてお話します。

発達障害とは 

 発達障害とは発達の過程で明らかになる行動やコミュニケーションなどの障害で、根本的な治療は今の所ないが、適切な適応により社会生活上の困難は軽減される障害のことを言います。自閉症スぺクラム障害(自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害)、学習障害、注意欠陥・多動性障害(ADHD)などが含まれます。原因は脳の機能的障害であり、親の育て方や愛情不足から起きるわけではありません。発達障害の頻度は約15人に1人の割合で、1クラス30人いれば2人程度いる計算になります。

気になる場合は

 言葉の遅れ・こだわり・パターン化した行動・不器用さなどがあると発達障害が気になります。気になる場合は専門家(小児神経科・児童精神科)の診察を受けることをお勧めします。発達障害という診断を告げられることは不安もありますが、お子さんの特性がわかることで、生活上の困難さを少しでも解決できる術について専門家からアドバイスを受けることができます。両親だけで悩まず、専門家と一緒に考えることで、子育てしやすくなることが期待できます。
最近私は、成人してから職場のトラブルから思い悩み、当院を受診し専門医につなげて、ようやく診断に至ったという方に関わりました。一番困っていたのは親でもなく本人でした。成人までの20年間の親や学校も含めた周囲の関わり方は子どもの成長に大きく影響します。勇気を持って専門家に相談をすることをお勧めします。親が気づいていない時は、信頼関係がある周囲の方(親族・園や学校の先生など)がお子さんの将来のために親に伝えていただくとありがたいです。

診断よりも大切なこと

 発達障害のお子さんは社会性や対人関係に悩んでいます。医療機関で診断されるとそれで終わりではなく、園や学校でどうやって過ごしていけるかを考えていく必要があります。お子さんの様子を一番知っているご両親が、園や学校にお子さんの特性を伝えていただくことがとても大切です。担任の先生だけでうまくいかない場合は園長先生や校長先生にもご両親がお伝えすることが大事です。子どものことは母親任せになりがちですが、父親も一緒になって伝えることは園や学校によい影響を与えます。
家庭での対応は、自尊心・自己肯定感を高めるために「ほめる」ことを意識してください。ほめるときのコツは1秒以内に思いきり感情を込めて、「やったね・さいこー・すごいね・かっこいー・すばらしー」という言葉を使いましょう。お手伝いをしてできたら、ほめてあげてください。おもちゃで遊んで散らかしてしまって片づける時、「ちゃんと片付けなさい」と言うのではなく、バスケットに入れてもらい、できたらまずほめて、元の場所に戻したら、またほめるといった方法もお勧めです。この場合、片づけるものをまず2~3個で始め、増やすことも大切です。焦らず、急がず、あきらめずに対応しましょう。
就学相談の時期になると、通常学級・特別支援学級・特別支援学校のどこに通学すべきか悩まれると思います。まず自分の目で確かめることが大切です。子どもと一緒に考え、いくつか見学に行くことをお勧めします。和式トイレの使い方や学校のチャイムで動くこと等も、事前に練習しておくと学校生活のスタートをうまく切れるかもしれません。
小学校入学は決してゴールではなく、最終目標は自分に自信を持ち生きていくこと、社会で生きていけるようになること、自分で稼げるようになることです。このことはすべてのお子さんに言えることです。

参考文献

発達障害 厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_develop.html
発達障害の理解と対応A(DVD) 平岩幹男 ジャパンライム株式会社
「おうちでできる学校準備」道城裕貴、寺口雅美:合同出版

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