令和3年5月号(vol.192)
スマホと上手に付き合おう!
暖かくなり新緑が満ち溢れ、生命の躍動を感じられる頃になりました。
先月、私は昭和町で新型コロナワクチンの集団接種に向けたシュミレーションに参加してきました。町内の医療機関で働く医師・看護師、行政の担当者、地区のボランティアの方々と本番に備えた対応を行いました。今まで経験をしたことがない集団接種は皆が慣れていません。混乱も予想されますが、何卒ご理解とご協力をお願いします。新型コロナワクチンを多くの方が接種することで一日でも早いコロナの終息を期待します。
3年前にお子さんへのスマホの対応についてのコラムでお伝えしたところ、予想以上の反響がありました。診療で相談を受けることはもちろんのこと、さらに県外からのテレビ局からの取材依頼があり、関心が非常に高いことがわかりました。今月はスマホと上手に付き合っていく方法についてお話します。
スマホ育児は要注意!
日本小児科医会から「ムズかる赤ちゃんに子育てアプリの画面で対応せず、赤ちゃんと目と目を合わせ、語りかけることで赤ちゃんの安心感と親子の愛着が育まれること」「親も子どももメディア機器の接触時間を減らし、絵本の読み聞かせをすることで親子の会話や体験を共有することで親子の育ちになること」「外で遊んでいても親がスマホに夢中にならず、一緒に遊ぶことで子どもの体力や運動能力そして五感や共感力を育むことができること」などが提唱されています。
健全な子どもの成長にとって、スマホとなるべく接触を控える工夫が大切です。子どもたちはスマホなどのメディア機器を食い入るように見てとても楽しみ、止めると大泣きしてしまうため、親はついつい見させてしまいます。スマホが身近であると、将来的なゲーム障害・不登校・引きこもりなどに発展していきます。ゲーム障害へ向かうお子さんは現実生活が充実せず、現実逃避としてスマホへ依存していきます。
スマホ時間を減らすには
スマホをやめなさいと注意しても子どもは聞かず、スマホ時間が長時間に及んでしまいます。スマホ時間を減らすためには、スマホ以外の時間を親子で共有することが大切です。お勧めしたい例として、食事中は食卓にスマホは置かず、テレビを消して親子の会話を楽しんでください。食事の準備や片づけ・ゴミ捨て・新聞を取ってくる・洗濯物を干すなどのお手伝いをしてもらい、1人でできない場合は親子で実践していいと思います。お手伝いが終わったら、褒めることで親子関係がグッと良くなり、お子さんの自己肯定感の向上に繋がります。うちの娘(小3)は洗濯物を私と一緒に干す、朝刊を1人で取りに行くお手伝いをしています。
スマホ時間が長いと学力が低下する
東京都の調査(令和2年)でスマホの所有率が小学校低学年19%、小学校高学年35%、中学生75%、高校生92%でありました。東京都の調査ではありますが、山梨県内でも同等の割合で所有しているのではと思います。
仙台市の児童7万人を対象に東北大学の川島隆太先生が行った結果によると、スマホの使用時間が平日1時間を超える児童・生徒では学力が使用時間と相関して低下することがわかりました。このことからスマホの使用時間を平日1時間以内に留めることが学力を保つことに大切であることがわかります。
日常生活よりゲームを優先する状態などが1年以上続く「ゲーム障害(依存症)」を防ぐために、2020年4月、香川県で全国初となる「ネット・ゲーム以前症対策条例」が施行されました。18歳未満を対象にゲーム利用時間を1日60分、休日は90分まで、スマホの利用時間を中学生以下が午後9時まで、高校生は午後10時までにすることが骨子であります。韓国や中国でも未成年者には同じような規制ができています。今回、行政の方で目安を出したことはとても大切なメッセージになったと思います。親子だけでスマホの使用についてルールを決めるのは難しく、この条例のような目安があるおかげで、ルールも決めやすくなったのではないかと思います。ちなみに、うちのルールは娘に宿題を終えてからスマホのゲームは1日15分までと決めています。
スマホ時間が長時間になったら
親子で決めたルールが守らない場合は、スマホを強制的に没収したりしても効果は薄く、親への暴力が生まれ、解決にはなりません。お子さんの現実生活で困り感について取り除くことが大切です。親子だけで解決することは難しいので、ゲーム障害・不登校・引きこもりになる前に、家庭だけで対応せず、学校や医療機関に相談をして一緒に考えていくことがとても大切です。
参考文献
日本小児科医会ホームページ 子どもとメディア委員会
http://www.jpa-web.org/about/organization_chart/cm_committee.html
スマホゲーム依存症 内外出版社 樋口進