令和3年8月号(vol.195)
お子さんの新型コロナワクチンについて
猛暑がやってきました。今年の夏も昨年同様、マスク着用を気にしなければなりません。猛暑時は通常より熱気がマスク内側にこもり、息苦しくなりやすいため、特に幼児はマスクを外して顔の表情を確認してください。
6月末、県内でオリンピック聖火リレーが行われました。うちの息子(大学生)が企業枠で応募し聖火ランナーの1人に選出していただいたため、沿道での応援に行ってきました。親として子どもの応援者として関わり、子どもの成長を感じ、親孝行をしてくれた息子に感謝・感無量の時間となりました。
ここ最近、県内にてRSウイルス感染症が猛威を振るっています。RSウイルス感染症は咳・鼻水・熱が主な症状で風邪と同じような症状ですが、風邪よりも咳がひどくゼイゼイして発熱が見られたり、熱が長引くこともあります。0~1歳代のお子さんがかかると、重症化しやすく気管支炎や肺炎になって入院することがありますので、インフルエンザと同様、注意すべき病気です。園で流行した場合は重症化しやすい0~1歳児を守るために、咳や鼻水の症状があるお子さんはRSウイルス感染症の可能性があることを気にする必要があります。RSウイルス感染症にかかった場合の当園のめやすは「呼吸器症状が消失し、全身状態がよいこと」(保育所における感染症ガイドラインより)となっています。
今年に入り、国内でも新型コロナワクチン接種ができるようになりました。医療従事者から高齢者、さらに64歳以下の方へ接種対象者が広がって、当科でもお子さんや妊娠・授乳している方はどうすればいいのか、質問が増えてきましたので、今月は新型コロナワクチンについてお話をします。
子どもを守るには子どもの接種より大人の接種が大切!
日本では新型コロナウイルス感染症にかかった人が2021年7月までに約83万人が感染、約1.5万人が亡くなりました。新型コロナウイルス感染症対策としての切り札として期待されているワクチンの対象者が医療従事者・高齢者・さらに64歳以下の方へと広がっています。
国内においては、新型コロナにかかった子どもの7割が家庭内、1割強が学校や保育所などでの感染であることがわかっています。子どもを取り巻く周囲の大人がワクチン接種することで家庭内や保育所にウイルスを持ち込まないことが重要ですので、子どもが接種する前段階として、周囲の大人である親や教師・保育士が接種し子どもたちを守ることが大切です。
7月12日、重度障がい者や医療的ケア児を在宅で介護しているご家族が感染することで生活が立ちいかなくなることが危惧されるため、県から市町村へ早めの接種への配慮の必要性について文書にて伝えられました。対象者は遠慮せず、お住いの市町村に問い合わせをしていただければ幸いです。
12歳以上の子どもへの接種について
日本小児科学会から重篤な基礎疾患のあるお子さんは重症化が危惧されるため、ワクチン接種で重症化が防ぐことが期待されること、12歳以上の健康な子どもも受ける意義があることが言われています。12歳以上の健康なお子さんの接種についてはメリットとデメリットを本人と養育者が十分に理解することが大切です。
メリットは海外の報告で小児(12~15歳)への接種経験で、新型コロナワクチン2回接種後、ワクチン接種群で新型コロナウイルス感染症を発症したのは1,119人中0人、プラセボ群(接種していない人)では1,110人中18人でした。この報告から高い予防効果が期待できます。また、自分自身が接種によって免疫を持つことで周囲の人を守ることにつながり、大勢の人がワクチンを受けることで流行を抑えることができます。
デメリットとして、国内の医療従事者2万人の調査の結果から接種した同日から翌日にかけて、8~9割の人が接種した腕の痛みや重み、5~6割が倦怠感や頭痛、2~3割が悪寒や筋肉痛、2割が38度以上の発熱がみられました。しかし、いずれの症状もほとんどの場合は2~3日で軽快しています。まれに接種直後にアナフィラキシーという重度のアレルギー反応が起こることがあるため、15~30分間、接種会場で様子を見る必要があります。主に若年の男性にワクチン接種数日以内にまれに心筋炎が発生することが報告されていますが、ほとんどが軽症でした。
今後もいろいろな報告が出てきます。最新の情報を知りながら、メリットとデメリットを考えて決めていただきたいと思います。大切なお子さんの接種となると慎重になります。かかりつけの小児科医の助言もお聞きになって判断してはいかがでしょうか。来月もワクチンの話をしますね。
参考文献
日本小児科学会ホームページ
厚生労働省ホームページ
VPDを知って子どもを守ろうの会ホームページhttps://www.know-vpd.jp/