令和3年12月号(Vol.199)
50歳以上方必見!~帯状疱疹ワクチン~
コロナ禍でまだ自粛モードではありますが、コロナ感染者数が今夏をピークに急減し、先月は県内の感染者数ゼロが続きました。感染予防を考えながらも楽しみやリラックスの時間を確保するのも大切ではないかと思っています。
先月、甲府市の千代田湖近くにある武田の杜で行われたツリークライミング体験に娘と一緒に参加しました。ツリークライミングは専用のロープを利用して木に登り、自然との一体感を味わう活動です。コロナ禍のため親の参加はできませんでしたが、娘がロープを使って楽しそうに木に登っている姿や、紅葉の中散策し甲府盆地や富士山を見ることができ最高の一日になりました。
今月は『帯状疱疹ワクチン』について取り上げます。対象年齢が50才以上になるため、多くの読者の方が対象外になってしまいますが、皆様のご両親等の健康のために参考にしていただけたら幸いです。
帯状疱疹とは
水痘・帯状疱疹ウイルスの感染に伴って水痘(みずぼうそう)にかかり、治った後もウイルスが体内(神経節)に潜伏し、過労やストレスなどで免疫が低下すると、再び活性化して、帯状疱疹を発症します。発症すると体の片側に水疱を伴う紅斑が帯状に広がります。症状は痛みを伴うことが多く、3~4週間ほど続きます。治療は抗ヘルペスウイルス薬を使用します。全国では毎年約60万人が発症し、80歳までに約3人に1人が経験すると推定されています。日本人成人の90%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に潜伏しているのでほとんどの人が帯状疱疹になる可能性があります。
最も多い合併症として帯状疱疹後神経痛(PHN)があり、これは皮膚症状が治った後も、3か月以上痛みが続きます。50才以上で帯状疱疹を発症した人の約2割の方がかかります。
帯状疱疹を発症した場合、接触感染によって水痘にかかる可能性があります。そのため、水痘ワクチンがまだしていない乳児や水痘にかかったことがなく、さらに水痘ワクチンもしていない人とは接触を避けてください。
帯状疱疹の患者数が増加傾向
水痘は定期接種化が始まる前までは、毎年子どもを中心に約100万人がかかり、約4千人が入院、20人弱が死亡と推定されていました。2014年から水痘ワクチンの定期接種化が始まり、水痘の患者数が大きく減少しています。一方で、帯状疱疹の発症者は増加しています。宮崎県においては1997年から2017年にかけて人口は減少しているが、帯状疱疹の発症数は増加しているというデーターが出ています。
水痘ワクチンの定期接種がなかった時代は、自然の水痘が一定の割合で流行しており、自然感染による免疫の増強(ブースター)を受けて、結果的に帯状疱疹の発症を免れてきました。水痘ワクチンの定期接種により、水痘に対する免疫の低下から、帯状疱疹にかかりやすくなっていると言われています。
つまり、水痘の患者がいなくなり、免疫の増強を受けられなくなったことから、免疫を増強させる目的として帯状疱疹ワクチンがあります。
帯状疱疹を予防するワクチン
帯状疱疹の予防ワクチンは「水痘ワクチン」と「乾燥組替え帯状疱疹ワクチン」の2つがあります。対象は50才以上のすべての方です。
「水痘ワクチン」は子どもが定期接種として使用しているものと同じで生ワクチンで1回接種です。50才以上に帯状疱疹ワクチンとして2016年から認可されました。「乾燥組替え帯状疱疹ワクチン」は不活化ワクチンで2回接種です。2020年から認可されました。2つのワクチンは予防効果・持続期間・副反応などで違いがあります。情報をしっかりと収集していただき、かかりつけ医に相談をし、ぜひとも前向きに接種していただくことをお勧めします。
今年1月、元横浜市長が帯状疱疹にかかり、左顔面麻痺を合併し1か月間入院したことが報道されました。ご本人は帯状疱疹にかかった痛みは「耳に鉛筆を刺されたような痛さ」であったと語っていました。
今回の対象者は50才以上の方になります。ぜひ、対象年齢である周囲の方にお伝えいただけたら幸いです。
参考文献
公益社団法人 日本皮膚科学会ホームページ
予防接種に関するQ&A集 一般社団法人日本ワクチン産業協会
帯状疱疹ワクチンに関するファクトシート(平成29年2月10日版)国立感染症研究所