令和4年7月号(Vol.206)
コロナ禍、子どもを熱中症から守ろう!
夏がやってきました。まだまだコロナの感染者が落ち着いてはいませんが、海外からの入国制限の緩和や学校の体育授業でのマスク着用をやめることなど少しずつ緩和の流れがあります。さらに5月14日東京都医師会からコロナの扱いを感染症法上の「2類相当」から「5類相当」に引き下げ、入院や就業制限や健康観察の措置を不要とするインフルエンザと同様の対処にすべきだとする案が出されました。私が診察でコロナにかかった子どもの様子をみると、多くが軽症で済んでおり、過度に恐れる必要はないのではないかと思っています。ご家庭でも感染対策を気にしながら、お子さんのために夏ならではの経験をしてください。
私は健康のために週2日ほど、1時間程度ランニングをしています。先月気温が高い日にランニング後、血尿が出てとても心配になりました。信頼できる泌尿器科医の先輩に相談をしたところ、筋肉の一部が壊れたことによるミオグロビン尿ということがわかりました。水分摂取不足が原因と言われ、運動時は水分をしっかりととるように言われました。皆さんも気を付けてください。
今月は夏を迎え、コロナ禍での子どもの熱中症対策についてお伝えします。
熱中症とは
熱中症は高温多湿な環境に長時間いることで、体温調整機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態で起こります。屋外だけでなく、室内で何もしていないときでも発症し、救急搬送や、場合によっては死亡することもあります。お子さんの場合は公園で遊んでいる時や、スポーツなどで運動をしているときに起こりやすいです。車内はクーラーをかけていても高温になりやすいので子どもだけにするのは危険です。例年、炎天下でサッカーや野球などの部活動や試合で無理をして気分が悪くなり、受診されるケースがあります。炎天下での部活動や試合は行うべきではありません。
初期の症状としてはめまい・立ちくらみ・筋肉痛・汗を多くかく・気持ち悪いなどがあり、症状が進行してくると、頭痛・嘔吐・だるさなどが出て、重症になると、意識がなくなる・けいれんが起こります。
子どもは大人より熱中症になりやすい!
子どもが大人よりも熱中症になりやすいのは、子どもは体重に比べて体表面積が広い分、気温など周囲の影響を受けやすい・子どもは大人よりも身長が低いため地面からの照り返しの影響を強く受けやすい・子どもは発汗の機能(汗を出して体温を下げる)が弱いため、体温を下げる能力が低く、体の中に熱がこもりやすいためです。さらに、子どもは自分で適切な水分摂取ができないことがあります。のどが渇いていても親に訴えることができず、遊びや運動に夢中になると体の不調を訴えなくなるため、異変がないか大人が気にする必要があります。
予防法
予防法はこまめな水分補給が大切です。水分補給は水とともにナトリウム(Na)などの電解質が失われるため、必要に応じてイオン飲料や経口補水液がお勧めです。お子さんが「のどが渇いた」と言ったときは、水分が失われています。のどが渇く前に少しずつ水分をとってください。通気性のよい涼しい服を着させ、帽子もかぶってもらえるといいです。子どもは大人よりも照り返しの影響を受けることを気にして、こまめに日陰や屋内で休憩をとってください。また、子どもは体調の異変を言葉にできないことを知っていただくことも大切です。もし、気持ち悪い・頭がいたい・くらくらするなどの訴えがあった場合は早めに対応しましょう。
コロナ禍ではマスク着用が気になります。マスクをしていると皮膚からの熱が逃げなくなり、熱中症のリスクが高まります。屋外では人と2m以上離れていれば、マスクをはずすことをお勧めします。
対応法
熱中症かもと思ったら、衣類をゆるめ、涼しいところに頭を低くして寝かせてあげてください。イオン飲料・経口補水液などをこまめに少しずつ飲ませてください。冷たい濡れタオルで体を拭き、クーラーの効いた部屋に寝かせて、積極的に体を冷やしてください。意識がない・けいれんをしている場合はすぐに救急車を呼んでください。
コロナ禍で子どもがコロナにかかり亡くなったケースはほとんどいません。そのため、マスク着用を気にしすぎて、熱中症でお子さんが亡くなることがあってはならないことだと思います。
最後に今月10日に参議院選挙が行われます。一票で何も変わらないように思いがちですが、決してそんなことはありません。一票の積み重ね、特に若い人が投票に行くことで若い人や子どもたちの声が政治に反映されます。ぜひ、子どもを連れて投票に行ってください。子どもが選挙のことを親に聞いてきたら、わかりやすく政治について話をしてください。選挙は子どもの教育にもなります。
参考文献
国立成育医療研究センターホームページ
厚生労働省ホームページ
熱中症診療ガイドライン2015