平成28年12月号(Vol.139)
インフルエンザ ~最新情報~
アメリカ大統領選挙ではトランプ氏が勝ちました。予想に反しての勝利でとても驚きました。こんなに盛り上がる選挙だと自然と政治に関心を持ちますね。イギリスではEU離脱への国民投票で熱狂的な様子がみられました。諸外国における政治への関心の高さを伺い知ることができました。日本においてもいろいろな問題が多くありますが、何か盛り上がりに欠ける気がします。先月、県内の首長として初めて女性の北杜市市長が誕生しました。これからもっともっと女性が活躍していただくことを期待しています。今月は毎年必ず流行するインフルエンザの最新情報について皆さんにお伝えします。
インフルエンザ対策について
県内ではすでに学級閉鎖の学校もでており、例年より早い流行が予想されています。7年前に新型インフルエンザの発生があり、その際国中が対応に追われました。ここ数年のインフルエンザウイルスのタイプはA型がA(H1N1)pdm09亜型とA(H3N2)亜型の2種類、B型が山形系統とビクトリア系統の2種類が検出されています。今シーズンも同タイプのインフルエンザウイルスの流行が予想されるため、ワクチンも同じ4種類が入っています。
予防はワクチン接種が基本で手洗い・うがいの励行が大切です。咳や鼻水がでる場合は他の方にうつさないためにもマスクを着用してください。咳・鼻水・熱などの疑われる症状があった場合、無理して園・学校・職場に行くと感染を広げることにつながります。自分だけではないことを配慮していただけるとうれしいです。
現在、抗インフルエンザ薬は飲む・吸う・点滴の3タイプがあります。通常は飲むタイプの「タミフル(10歳代は禁忌)」、吸うタイプの「リレンザ・イナビル」で、服薬により熱や症状の期間を短縮すると言われており、発症48時間以内に薬を使用すると効果が期待できます。
迅速検査の限界を知る
インフルエンザが疑われる場合は迅速検査をします。迅速検査は熱が出て時間が経たないとウイルス量が少なく陽性となりづらいため、熱がでて12時間以上たってからの検査が信頼できます。熱の早期では検査せず、抗インフルエンザ薬を使う場合もあります。また熱がでて12時間以上経っていても検査が陰性でも家族中でかかっていたり、症状からインフルエンザと判断される場合は抗インフルエンザ薬を内服して構いません。迅速検査は万能ではなく、早期に検査をしたり、微熱であったり、採取が上手にできなかったり、B型の方が陰性になりやすかったりすることがあります。検査に限界があることを知ってください。受診は信頼関係もあるかかりつけ医に診てもらうことがその後の対応も含めてお勧めです。
ワクチンって効くの?
他のワクチンに比べて、インフルエンザワクチンの効果が弱いのは、インフルエンザワクチンが突然変異を起こし、抗原性が毎年少しずつ変化するからです。前年の流行ウイルスからワクチンを作製するのですが変異が起きると効果が低下します。
昨年8月、慶応大学小児科から患者数8,479名の大規模な調査結果が発表されました。2013-14シーズンではワクチンの有効率がA型63%、B型26%、全体45%、2014-15シーズンでワクチンの有効率がA型37%、B型47%、全体38%という結果で4割程度の効果が期待できます。ただし、1歳未満の乳児では2013-14シーズンで21%、2014-15シーズンで3%と低率でありました。
菅谷らの別の調査結果では、日本で行われた1960年代から1994年まで学童集団接種とその後の集団接種中止となった時代との死亡者の比較し、集団接種中止以降、インフルエンザ死亡者が増加、多くが高齢者であったことから、学童集団接種により高齢者の死亡が抑えられていたこと、さらに幼児の死亡・学級閉鎖も抑えられていたことがわかりました。ワクチン接種は自分だけを守るだけではなく、その家族や周囲の人々、さらには社会のハイリスク群も守るという集団免疫の効果が再認識されました。
うちの保育園では職員は全員接種しており、園児さんのご両親の協力もあり、インフルエンザワクチンをすべての園児に接種しているおかげで集団免疫の効果が得られています。昨年は100人中、10人程度しか罹らず、集団免疫の効果を肌で感じています。インフルエンザワクチンの効果は100%ではありませんが、少なからず効果が期待でき、特に低年齢児においては接種をお勧めしたいと考えています。
参考文献
インフルエンザ診療ガイド2016-17 菅谷憲夫 日本維持新報社
厚生労働省ホームページ