平成26年12月号(Vol.115)
子どもの貧困
2014年も残り1か月となりました。12月は忘年会・クリスマス・年賀状作成など何かと忙しくも楽しい月です。うちは昨年クリスマスケーキの注文が遅れて何件もお店に電話をして苦労しました。クリスマスケーキ・プレゼントの準備はお早めに。先月告知したフルマラソンの結果は次月にご報告します。
今月は「子どもの貧困」についてお話します。8月末に外来小児科学会でこのテーマでのシンポジウムに参加しました。私自身が初めて耳にする事実があり、子どもに関わる仕事をしている立場からより意識していく必要性を感じています。新聞記者の中塚久美子さんが多くの取材を踏まえてまとめられた本の内容も紹介し、子どもの貧困について知っていただきたいと思います。
子どもの貧困って?
日本の子どもに貧困がいるのかという疑問を持っている方も多いと思います。貧困は「絶対的貧困」と「相対的貧困」に分けられ、発展途上国にみられる食料・生活必需品が足りていない貧困を絶対的貧困、日本のような先進国で問題となっている貧困は相対的貧困と言います。相対的貧困は全国の平均所得の半分を下回る世帯で暮らす子どもの割合のことです。相対的貧困率が2012年に過去最悪の16.3%(2012年は手取り所得122万円)になりました。実に約6人に1人(約300万人)が貧困状態にあります。先進国20か国中、アメリカ・スペイン・イタリアの次に高い結果です。多くの国は国策として貧困率を下げる努力をしていますが、日本では年々高くなっていることが問題となっています。
子どもの貧困対策法
「子どもの貧困対策法」が昨年6月に成立しました。今夏安倍首相が「子どもたちが夢と希望をもって成長していける社会の実現を目指す」と述べ、大綱は子どもの将来が生まれ育った環境で左右されたり、貧困が世代を超えて連鎖することを断ち切るという基本方針となっています。しかし、貧困率をどの程度下げるのかなどの数値目標が出たわけではないので、すぐに効果が得られる所までは進んではいません。
子どもの貧困ってみなさんどうイメージをもっていますか?食事がままならない・洋服がボロボロといったケースはまれですが、医療費の自己負担が高いため病院に行かない・修学旅行に行けない・給食が唯一のちゃんとした食事のため夏休み中に痩せてしまう・お風呂に毎日入れないといった「当たり前」の生活ができない子どもたちがいます。こうした子どもたちは不登校・高校中退の割合が高く、健康状態も悪いことがわかっています。そして、このような不利を背負うことから大人になって就労状況や所得にも影響し、彼らの子どもがまた貧困になるという「貧困の世代間連鎖」が起こっています。子どもの貧困はその子にとっても不幸ですが、社会にとっても不幸で日本の活力が衰退してしまいます。
「学び」と「居場所」作り
全国各地で貧困家庭の子どもたちに無料学習支援活動が生まれています。行政やNPO・民間団体・地域住民などが主体となり、場所はアパートや家、公的施設、空き店舗などを利用し、ボランティアとして元教員・市民・大学生らが小中学生にマンツーマンで勉強を教えています。大学生は兄や姉の存在として勉強以外の相談に乗ることもあります。子どもたちが意欲的になり、親にもよい意味で変化がでてきています。学校だけでは限界があるので、こうした無料学習教室の役割は貴重な存在です。中には家庭の事情により夜1人で過ごさなければならない子どもに週に1回、サポーター役の大学生が勉強を教えて、一緒に夕食をとり、さらに銭湯で風呂に入って自宅に帰す事業をしているNPO法人もあります。無料学習教室は山梨にもあります。また、企業や農家などから食料を寄付してもらい貧困にあえぐ家庭に提供する活動をしている「フードバンク山梨」というNPO法人があります。
今回はみなさんに日本にも子どもの貧困が存在し、根深い社会問題になっていることを知っていただき、貧困の連鎖をなくし、どの子どもたちも将来に希望を持てるような社会を作っていく必要性を理解していただきたいと思っています。今月は衆議院選挙があります。アベノミクスだけが政治ではありません。子どものこと、貧困のことも候補者を選ぶ上で考えなければなりません。若い世代が投票に行くことで政治家は若い人の声を聞くようになります。選挙は必ず行きましょう。
参考文献
貧困のなかでおとなになる 中塚久美子 かもがわ出版
子どもの貧困対策に関する大綱(内閣府)
www8.cao.go.jp/kodomonohinkon/pdf/taikou.pdf