平成26年6月号(Vol.110)
ぜんそくをよく知ろう!
一年で最も気持ちのいい季節になりました。青空を見ていると心にゆとりが生まれてきます。先月、あるショッピングセンターで私(45歳)が愛娘(1歳)を抱きながら歩いていたところ、高齢の男性から「失礼ですが、お孫さんですか?」と聞かれてしまいました。「自分の子どもです。」と素直に答えました。がっかり・・・。気になったとしても言わないでください。
先月行われたアレルギー学会に出席し勉強してきましたので、最新のアレルギー事情についてお話します。今月はまず「ぜんそく」についてです。
ぜんそくの今昔
「ぜんそく」とは息を吐くときにヒューヒュー、ゼーゼーという笛のなるような音(喘鳴)がして、呼吸が発作的に苦しくなる病気です。私が医師になりたての20年前には、現在の治療の根幹をなす吸入ステロイドは乳幼児に適用することができませんでした。発作は夜起きやすいこともあり、病院で勤務していたころは呼び出され対応に追われた日々が多々ありました。そのため発作による入院や救急受診が多かったのです。最近ではガイドラインの普及や吸入ステロイドなどの薬が乳幼児でも使用できるようになったおかげで、ぜんそくの病態である「慢性の気道炎症」が治まり、発作が減り、生活・人生の質(QOL)が向上するようになりました。
コントロールをよくするためには
ぜんそくは長期管理が必要な病気で毎日薬を使用するため、患者さんが自ら治療に参加し、積極的に治していこうとする気持ちを持つことが大切です。また、慢性的に気道の炎症が起きているので、発作がない時でもお薬を使うことが大切です。
発作が起こり、気道が傷つくと、傷ついた気道の組織はもとに戻ろうとするときに正常な状態に戻るわけではなく、傷を残したままで治っていきます。皮膚の傷口が治っていく時にその部分だけが硬くなったりしますが、同じようなことが気道の中でも起きています。なるべく発作をおこさないようにコントロールすると気道が傷まず、次の発作を抑えることができます。
発作が起こった時の原因がわかると発作を抑えることにつながります。布団の上で遊んだ時、花火やたばこの煙を吸い込んだ時、猫と触れ合った時、疲れたりした時などの場合はそのきっかけに気をつければ防げるかもしれません。運動をして発作が起こることがありますが、この場合、運動をしないようにすることはお勧めできません。子どもが体を動かすことは成長する上で大切なことですので、運動して発作がでる場合は治療薬を見直すことが必要です。
治療の目標は「日常生活が支障なく過ごせる」ことです。スポーツを含めて昼夜を通じて症状がなく、β2刺激薬の頓用がない状態が続くことが大切です。夜の咳がないかと気にしがちですが、昼間の咳の様子も注意してください。
海外の報告から
最近、海外で吸入ステロイドの副作用で子どもの身長の伸びが抑えられる可能性があると報告がありました。5~13歳の小児で吸入ステロイドを4~6年間使用した場合、コントロール群と比べて最終身長が平均1.2cm低かったという結果です。この報告が出たことで吸入ステロイドは使用しないということではなく、副作用もわかって対応してもらえれば幸いです。恐がって使用しないことは発作が増えるため生活・人生の質(QOL)が低下します。一方で漫然と使用し続けることも得策ではありません。吸入ステロイドはぜんそくにとっては欠かせない薬であるため、かかりつけ医とよく話をしながら、病状や薬とうまくつきあっていくことをお勧めします。
うちの夫婦げんか対処法
うちの夫婦はそろそろ20年を無事経過しようとしています。夫婦げんかは時折してしまいますが、昔に比べると減ってきてはいます。原因は些細なことです。仲直りの方法はどちらがいけないのかははっきりしませんが、私が「ごめんね」と謝って終わります。好きで結婚したわけですから、長引かせない方がいいと思います。子どもは巣立ちます。残された時間を夫婦で楽しめるような関係を築いておきましょう。
参考文献
日本小児アレルギー学会(監修):家族と専門医が一緒に作った小児ぜんそくハンドブック2012年改訂版. 協和企画, 2008
濱崎雄平, ほか(監修),日本小児アレルギー学会(作成):小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012. 協和企画, 2011