平成25年2月号(Vol.94)
けいれんの対応法
成人の日には大雪が降り、次の日は昭和バイパスの大混雑の影響でいつもの2倍以上の時間をかけて通勤しました。まだまだ寒さが残っています。皆さん、体調管理には気をつけてくださいね。
寒さのためなかなか寝床から離れられない私は9年ぶりの子育てで、久しぶりにお風呂に入れたりおむつを変えたりしたことで、初めて腱鞘炎になってしまいました。親指を動かすと激痛が走り、夜中知らず知らずの内に手をひねり痛みで起きてしまうほどです。動かさないことが一番なので、上の子どもたちに子育てを協力してもらい安静にしています。
さて、今月は「けいれん」についてです。お子さんのけいれんを目の当たりにした経験をお持ちの方がもう2度と経験したくないと思うのは当然です。 仕事上けいれんのお子さんの対応は慣れている私自身、毎回ドキドキします。けいれんの多くが家で起こるため、ご両親がけいれん時の対応がわかっていると慌てずに済みます。
けいれんってどんな様子ですか?
「けいれん(=ひきつけ)」は顔が真っ青になり目が上を向き、意識がなくなり手足をガクガクさせる状態を言います。意識がなくなるので、呼びかけに反応しません。「けいれん」と似ている状態に「悪寒(おかん)」があります。悪寒は熱が上がるときに、ぶるぶる震える状態で、意識があります。悪寒をけいれんと間違えるケースがありますが、決定的に違う点は意識の有無です。言葉をかけて応答があれば悪寒です。
けいれんしたらどう対応したらいいですか?
けいれんが起こったら、まず慌てずに落ち着いてください。冷静に対応することが一番大切です。家の人がいたらすぐに呼び出しましょう。以下に対処法を述べます。
1. とにかくあわてない。落ち着くこと。
2. 衣服をゆるめて,特に首周りをゆるくします。
3. 仰向きにしてください。吐物や分泌物があれば拭き取ってください。口の中に指などを入れる必要はありません。
4. 元に戻るまでは必ずそばにいるようにします。
5. 持続時間・眼球の様子・手足が突っ張っているか・左右対称かなどの様子を観察してください。
6.救急車や自家用車を利用し病院で診察を受けましょう。
けいれんの多くが熱に伴う「熱性けいれん」ですが、中には髄膜炎や脳炎脳症といった病気が隠れている時もあります。熱がない場合は「てんかん」という病気を考える必要があります。けいれんの形も様々です。脳波などの検査をし、診断をしていきます。治療は抗てんかん薬を使用します。
熱性けいれんとは
熱に伴うけいれんの多くは「熱性けいれん」です。脳が発達過程にある時期に起きると言われています。年齢は生後6ヵ月から4,5歳までがほとんどで、1歳代が最も多く、頻度は7~8%前後とよくある病気です。けいれんの時間は多くが1~2分ですが、中には10分以上続く場合もあります。発熱から12時間以内に約6割、24時間以内に約8割がけいれんを起こします。過半数がけいれんは1回のみで、3回以上起きる場合が約1割います。
痙攣時間が長かったり回数が多いなどの場合は、ダイアップ坐薬というけいれん止めのお薬を使って予防する方法があります。熱がでたときにダイアップ坐薬を8時間あけて2度入れ予防します。ちなみに、解熱剤の坐薬では予防できません。解熱剤の使用は最低限にとどめておいてください。
インフルエンザの治療薬いろいろ
今シーズンは例年より流行が遅くなっています。ただ、毎年流行しますので予防接種はもちろんのこと手洗い・うがいの予防はとても大切です。抗インフルエンザ薬は4つの薬があり、状況に応じて使い分けています。飲むタイプの「タミフル」・吸うタイプの「リレンザ・イナビル」・点滴で使用するタイプの「ラピアクタ」があり、外来では、飲むタイプか吸うタイプを使用します。吸うタイプは小学生以上、飲むタイプは乳幼児にお勧めです。入院した場合は点滴から薬が選択できます。
参考文献
福山幸夫・監:熱性痙攣の指導ガイドライン. 小児科臨床49:207-215, 1996
柏木充:熱性けいれん. 小児内科Vol.44増刊号:740-741, 2012