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院長コラム

平成23年12月号(Vol.80)
最新の予防接種情報 Part4

2011/12/01(更新日)

今年もまもなく終わりを告げようとしています。今年の重大ニュースは3・11の震災に尽きるのではないでしょうか。大地震・津波・原発事故により本当に多くの方々の人生が大きく変わったと思います。被災地の復興はまだ始まったばかりですが、これからも継続して応援していきましょう。一方で原発の処理や子どもたちへの放射能の影響については、目を離すことができません。

今年の小児医療の話題は何と言っても「ワクチンの進歩」が際立ちました。このコラムでも、今月を含めて4ヶ月にわたり特集してきました。先月登場したロタウイルスワクチンを始め、諸外国では接種されているワクチンが日本でも使用できるようになりつつあります。不活化ポリオワクチンについては、神奈川県知事が県民の子どもたちに緊急輸入し接種をする声明を出し、小児科医だけでなく、保護者をも巻き込んで世論の関心が高まってきました。ただし、不活化ポリオワクチンの正式な国内導入は再来年以降になりそうです。

さて、私自身の今年の話題はIBCLC(国際認定ラクテーション・コンサルタント)という「母乳育児支援に関する専門家」の国際資格を取得したことです。3年前から日本ラクテーションコンサルタント協会(JALC)という母乳育児支援について勉強をしてきました。JALCは科学的根拠に基づいた母乳支援のための情報を提供するという目的のもと様々な研修会を開催しており、私自身もそれらに参加し納得しながら勉強することができました。この資格を持っている人は全国でまだ1000名弱、山梨県ではほとんどいません。ご興味のある方は、JALCのホームページ(http://www.jalc-net.jp/)をご参照ください。

 

ロタウイルスワクチンはじまる

胃腸炎には、乳幼児が重症化しやすいロタウイルスがあります。11月21日からロタウイルスワクチンが使用できるようになりました。ロタウイルスによる胃腸炎は年明けから流行が始まります。ロタウイルスにかかると、ノロウイルスよりも重症になりやすく、特に0~1歳のお子さんがかかると入院することもしばしばあります。発症すると抗生剤は効かず、特効薬もなく対処療法のみとなります。けいれん・脳炎・脳症などの重い合併症が起こることもあります。

 ロタウイルスワクチンは8割の予防効果があり、また重症化を9割防ぐと言われています。つまり重症化を防ぐことで、入院や点滴を避けられます。重症化が防げるワクチンにより、子どもたちの苦しみや親御さんの看病する負担を減らすことができると考えられるため強くお勧めします。アメリカではこのワクチン導入でロタウイルスによる胃腸炎で入院する割合が89%減少し、流行がなくなっているそうです。また、このワクチンは飲むタイプで注射ではないのでお子さんの痛みはありません。対象は生後6週から24週までに2回飲みます。生後25週以降のお子さんは接種できません。費用は、行政からの補助の話がないので自費扱いになります。

 

水痘ワクチン・おたふくワクチンとも2回接種がお勧め!

水痘ワクチン・おたふくワクチンは任意接種扱いになっていて、行政からの補助もなく自費となっているため、接種率は約40%と低いのが現状です。世界の多くの国では1回接種では発症を完全に抑えることができないため、2回接種をしています。今年4月、日本小児科学会から水痘ワクチン・おたふくワクチンを2回接種することを推奨するようになりました。2回目は5~6歳で接種して下さい。

 

お詫び

先月号の「今シーズンからのインフルエンザの接種量」に一部誤りがありましたので訂正いたいします。

「今シーズンから生後6~11カ月は1回0.25ml、1~5歳は1回0.25ml、6~12歳は1回0.5ml 」ではなく、「生後6カ月~2歳は1回0.25ml、3~12歳は1回0.5ml」でした。

 

参考文献

Cortes JE, et al. N Engl J Med 2011; 365: 1108-17.

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