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院長コラム

平成23年7月号(Vol.75)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)って知っていますか?

2011/07/01(更新日)

今年の夏はこれまでの夏と異なり、互いに節電を意識しながら生活をしていきましょう。エアコンの設定温度を上げるなどの節電対策をしながら、水分を適切にとり、熱中症にならないように気をつけたいものです。今回の原発事故は私たちが使用している電気をどうするかを問われています。私たちは県内の電気をどうしたらいいのかを考える必要があります。山梨県は他県と比べて日照時間が長く、自然に恵まれ水が豊富にあります。県内の電気をどうするかを考え提言することは私たちが被災者の方々にできることではないでしょうか?

 わが家の高1の長男が高校の将棋部に入ったことをきっかけに、先月、息子から将棋をしようと初めて誘われ対戦しました。結果は2戦して全勝でした。父親として手を抜かず真剣に勝負をして勝ったこと、また幼い頃とは違った子どもの成長の2つの喜びを感じました。

 今月はPTSDというこころの病気に関する話をします。

 

PTSDとは

 PTSDとはPost Traumatic Stress Disorderの略で、心的外傷後ストレス障害と言います。不慮の事故や災害などにより思いがけない体験が心の傷となり、後にその記憶が様々なストレスとなり、不眠や不安・悪夢や恐怖・無気力感などの症状が現れます。子どもの場合、指しゃぶりをしたり、母親から離れないなどの退行現象が起こったりすることもあります。

PTSDという言葉は阪神・淡路大震災の後、マスコミで大きく取り上げられて多くの人に知られるようになりました。その後、大きな事件や出来事が起こるたびにPTSDが注目されるようになりました。

多くの人はショックな出来事を経験しても時間経過とともに心身の安定を取り戻していきますが、子どもは自我が未発達であることもあり、大きな出来事が起こるとこころが不安定になります。そのため、赤ちゃん返りなどが起こり、安定を求めるようになります。短期間であれば問題ありませんが、1ヶ月以上これらの症状が消えないときは専門的な関わりが必要になってきます。

5月、私の妻が保育士らと一緒に、被災地(岩手県山田町)の子どもたちの保育ボランティアに行ってきました。被災地の子どもが保育士に甘えるようにまとわりついたり、抱っこをせがんできたり、通常の年齢の子より幼い行動がみられ、こころが不安定な状態であったと知らされました。

 

PTSDにならないために

親の適切な対応で子どもたちの心の傷を癒すことができます。今回の震災のような大災害などが起こったときの子どもたちの動揺を大人がどのように対応していけばいいのかについて箇条書きで、分かりやすく書いてある冊子をご紹介します。日本小児科医会から発行されている「もしものときに・・・子どもの心のケアのために」というもので「http://jpa.umin.jp/download/kokoro/PTSD.pdf」から無料でダウンロードできます。その冊子には、親が子どもに対して「大丈夫だよ」と言葉に出して子どもに伝えること・子どもの話に耳を傾けること・赤ちゃん返りをしてもバカにしないこと・十分なスキンシップをとることなど、子どもに安心感を与えるように対応することが大切だと述べられています。さらに、親自身も動揺しているため信頼できる人に話をすること・がんばりすぎないように自分のペースを守ることなどが大事であると付記されています。

 

PTSDは他人事ではない

PTSDは被災者の方々だけではなく、私たちにも関わってくることだと思います。まだまだ収束しない原発問題で今後も私たちは不安を抱きながら生きていくことでしょう。大人が不安になると、子どもも不安になります。例えば、テレビで原発や津波のニュースを見ていてお子さんが不安になるようでしたら、子どもがいない時に見るようにしてください。お子さんが不安そうであれば、たくさん抱きしめてください。また、震災に関連する質問をしてきたらわかりやすく話をしてあげてください。こうした対応でお子さんを安心させることができます。

 

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