平成23年3月号(Vol.71)
気になっている不活化ポリオワクチンについて
2度の積雪もあっという間に溶けて、もうすぐ春の到来ですね。
最近話題の「大相撲の八百長問題」は本当に残念です。すべての取り組みがもしかして八百長?なんて考えるとつまらないものに感じてしまいます。膿をしっかり出し切って生まれ変わり、将来の宝である子どもたちに夢が持てるような大相撲になることを期待します。
今年に入ってから保護者から不活化ポリオワクチンについての問い合わせが続いており、意識の高まりを感じています。今月は不活化ポリオワクチンについてお話をしていきます。
ポリオって?
ポリオは、ポリオウイルスが中枢神経への感染により引き起こされ、手足の麻痺が生涯にわたり残る病気です。日本は1960年代にポリオの大流行があり、生ワクチンを導入した結果1981年以降はポリオにかかる人がいなくなりました。生ワクチンは口から飲むタイプで、針が必要なく気軽に接種できることから、大流行を阻止する方法として当時の日本で即効性がありました。現在でもポリオの流行地域にはかかせないものです。
しかし、現在は生ワクチンを飲んだことが原因でポリオにかかる人が年に数人程度でることが問題になっています。生ワクチンを飲んだ乳幼児だけでなく、その周囲の方々にも感染の危険があります。さらに昭和50年から52年生まれの方(ポリオの抗体価が低い)・免疫が低下している方・抗がん剤治療後の人は健康な方より危険が高まります。
先進国のほとんどが不活化へ、日本はまだ生
アメリカではこのような背景から2000年に不活化に変更しました。不活化にすればワクチンが原因によるポリオの発生はなくなります。日本においては不活化の導入は数年先という話を聞いていますが、見通しが立っていないのが現状です。このまま生ワクチンを続けていると生ワクチンが原因によるポリオの患者さんが続いてしまいます。この悲劇を防ぐには不活化ワクチンへの切り替えを国に求めていかなければなりません。
昨年12月、患者団体「ポリオの会」は、約3万5000人の署名を持って「不活化ワクチンの緊急輸入」を厚生労働省に申し入れました。現在もパキスタン・アフガニスタン・インド・ナイジェリアの4カ国ではポリオの流行が続いています。グローバル化された昨今、流行地域からいつポリオが入ってくるかわかりませんので、免疫はつけておく必要があります。ポリオワクチンは不活化でも生ワクチンでも必ず接種はしてください。今年に入ってから、県外の医療機関で個人輸入をしてワクチンを入手し、不活化ポリオワクチンの接種を行う医療機関が増えてきています。
最後に、ポリオワクチンだけでなく、日本のワクチン事情は先進国中最下位で大変遅れています。不活化ポリオワクチンを早期に認可することだけでなく、おたふく・水痘・B型肝炎ウイルスを定期接種化することが子どもたちに不要な病気にかからせないことだと思います。私たち小児科医だけの力だけでは難しく、皆さんの力が必要です。
参考文献
国立感染症研究所「ポリオワクチンに関するファクトシート 平成22年7月7日版」http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bybl.pdf
~山梨子育て再発見!~
先月から多くの自治体でヒブワクチン・肺炎球菌ワクチン・子宮頸がんワクチンの助成が始まりました。小さいお子さんほど効果が期待されますので、早く接種していただき子どもたちを病気から守ってください。
山梨県は、全国的に早い時期からヒブ・肺炎球菌・子宮頸がんワクチンの助成が導入されています。先日東北へ転勤が決まったある患者さんから、「転入先の自治体では、医療費助成が就学前までのみで、3つのワクチンの補助もない」と聞きました。さらに県内では、ここ数年医療費助成の対象年齢が引き上げられています。山梨県の子育て対策の先駆的な面が見られ、県民として嬉しく思っています。