平成22年4月号(Vol.60)
RSウイルスってご存知ですか?
読者の皆様・ちびっこプレスのスタッフの皆様のお陰で、早60回を迎えることができました。毎月、締め切り日が近づくとストレスを感じることもありましたが、読者の方から「読んでいますよ」なんて言われるとうれしくなり、それを励みに取り組んできたというのが正直な心境です。これからも地域に根差した最新の医療情報を提供していきたいと思いますのでどうぞお付き合いください。
今月から県内では初めて、市川三郷町で「ヒブワクチン」の助成制度がスタートします。現在自費の予防接種は、おたふく・水痘・ヒブ・肺炎球菌のワクチンがあり、保護者の経済的な負担も多大です。今後さらに多くの市町村がヒブワクチンだけでなく他のワクチンも含めて助成制度が広がることを願っています。
また、5年前から事実上中断している日本脳炎ワクチンが来月から再開することになりました。昨年8月には熊本市在住の7歳男児が日本脳炎にかかっていますのでお早めに日本脳炎ワクチンを接種していただきたいと思います。ちなみに日本脳炎ワクチンは3歳以上が対象になります。
さて今月は今年に入り猛威をふるっているRSウイルス感染症についてお話します。
RSウイルス感染症とは
例年11月から1月にかけて流行を繰り返していますが、今年は新型インフルエンザの影響でまだ流行が続いており、さらに患者数が例年より多い状況です。RSウイルス感染症は咳・鼻水・熱が主な症状で、2~3歳以上のお子さんは大抵症状が軽く済むのですが、乳幼児のお子さんは重症化しやすく細気管支炎や肺炎になり入院することもあります。併せて1歳以下のお子さんは中耳炎の合併もよくみられます。インフルエンザと同様、注意が必要な病気です。
そもそもあまり聞いたことがないウイルスですが?
RSウイルスは以前から存在していたウイルスですが、最近、外来で迅速診断ができる検査方法が普及し始めたこともあり、診断が容易になってきたことで耳にすることが多くなりました。検査はインフルエンザの検査と同様に綿棒を使用して、鼻に入れて行います。ただ、この検査は一般的には保険で効かない検査のため、インフルエンザ簡易検査と比較して広がりにくい状況があります。
2度以上かかりますか?
このウイルスは乳児の約70%が1歳までにかかり、2歳までにはほぼ100%かかってしまいます。1度かかれば、2度とかからない病気ではなく、繰り返し感染してしまいますが、回数がふえるほど症状は軽くなります。
予防法は?
潜伏期間が4~6日で、飛沫や接触によって感染しますので、インフルエンザと同じく手洗いうがいをしっかりしてください。感染力も強いのでしっかりと治ってから通園させてください。また、ワクチン開発が進められていますが、現在のところワクチンがありません。ただし低出生体重・先天性心疾患・慢性肺疾患をもつ子どもたちに限って、数年前から「シナジス」という抗体(抗RSVモノクローナル抗体)を注射して重症化を防ぐ方法があります。
治療法は?
インフルエンザに対しては特効薬がありますが、RSウイルスには特効薬がなく、抗生剤も効きません。対処療法のお薬が中心で、外来では吸入をしたり鼻水を吸引器で吸ったりしています。家庭では安静にして加湿に配慮して水分をしっかりとってください。乳児は咳がひどくなったり、飲みが悪くなり、無呼吸や突然死につながることもあります。早めに受診されることをお勧めします。普通のかぜと違い熱が4~5日続く場合も多く、症状が治まるまで10日前後かかります。
診察をしていて、乳幼児を持つ家族の多くがRSウイルス感染症を知りませんでした。
読者の皆様の中でも、今まで知らなかった人が多いのではないかと思います。来月もお楽しみに。
参考文献
国立感染症研究所 感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k04/k04_22/k04_22.html