平成29年12月号(Vol.151)
色覚検査を受けよう!
今年も残す所、1か月を切りました。毎年のことですが、子どもがいる家庭では年賀状の作成はもちろん、クリスマスのサンタさんの準備など慌ただしく時間が過ぎているのではないでしょうか。私は仕事が一番忙しい月でもあるためこの時期忘年会の予定はほとんどありません。仕事上の付き合いも大切ですが、かわいいお子さんが待っているご家族との時間も大切にしてください。子どもはすぐに成長し、親離れしていきます。私の経験では親と一緒に楽しんでくれるのは小学生ぐらいまでです。今月は最近、新聞などで話題になっている「色覚検査」について取り上げます。
色覚検査、復活!
色覚検査は平成14年度まで学校健診の必須項目でしたが、一斉検査の方法がプライバシーの配慮が欠けていたり、色覚異常を指摘されても有効な指導や配慮が実施されていないなどの理由で廃止されました。廃止後、検査がなくなったことで色覚異常の学生が就職時に初めて気づき、困惑するケースなどが明らかになり、再び平成28年から希望者に対して学校で実施され、色覚検査を受けることの重要性と学校での適切な指導や配慮が求められるようになりました。
色弱(色覚異常)とは
私たちが見ている世界には色があふれています。もし自分だけ色の見え方が他の人たちと違っていたらと想像したことがあるでしょうか?多様な色覚(色の感じ方)に配慮し、上手な色づかいを用いて誰に対しても正しく情報が伝わるように色の使い方や文字の形などを配慮することを「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」と言い、現在では学校などの教育現場や社会にも広がってきています。また、「色覚異常」「色盲」「色覚障がい」という言葉が一般的でしたが、CUDでは多様性の一つとしてとらえる観点から、異常や障がいといった言葉ではなく「色弱」と呼ぶようにしています。残念ながら、現在の医学では色弱を治す治療はありませんが、色弱がどんなタイプでどの程度の状態であるかを眼科できちんと診断していただくことが大切です。
色弱の頻度は、色弱に関係する遺伝子がX染色体にあるため、X染色体を1本しか持たない男性で多く、日本人の男性の20人に1人、女性の500人に1人の頻度といわれており、40人学級で1人いる計算になります。色弱者は赤と緑を区別がしづらいことが多いのですが、程度も様々で緑と茶・オレンジと黄色・赤と黒・ピンクと灰色などの識別に困難を生じることもあります。
色弱者の配慮
色弱者のお子さんの両親は色弱者でないことも多いため、ご両親の理解が欠かせません。スマホアプリの「色のシミュレータ」を用いると色弱者の見え方が理解できるので、一度試していただくことをお勧めします。特に園や学校の先生には色弱者が40人クラスで1人いる頻度のため、常にそういったお子さんがいる想定で環境設定などを考えていって欲しいです。
私も今回読んだ「色弱の子どもがわかる本」や「考えよう学校のカラーユニバーサルデザイン」に実例が多数掲載されており、大変参考になります。例えば、「靴下を色違いで履き間違えるのを防止するためにマークをつける」「色の名前の頭文字(青ならブルーのB)を書いたりして色以外でもわかるようにする」「友達と色違いのカバンを持っている時はストラップやキーホルダーなどの目印をしたりする」「黒板(緑)にチョークが赤色だと緑と赤では赤が見えづらいため、黄色を使う」といった工夫などがありました。お子さんが色の違いがわからず困っているような場合は、子どもが関わっている先生方に相談し理解していただくことで環境を改善することも大切です。また進学や就職を考える際には、現在ほとんど職業上の制限は無くなりましたが、警察官・自衛官・消防士・パイロット・航海士・鉄道運転士などの職業は制限があるようですので、希望される場合は採用条件を確認する必要性があります。
最後に、目の悪い人に対して道に点字ブロック、足の悪い人に階段のスロープを設置してきていますが、色弱者に対しての配慮がまだまだ遅れているのが実情です。色弱に関しても皆さんに理解していただき、社会全体がどのような方でも生活しやすい環境になっていって欲しいと願っています。
参考文献
岡部正隆:<健康診断>色覚障害を指摘された児童・生徒への対応. チャイルド ヘルス Vol.20 No.3:30-34, 2017
岡部正隆:色弱の子どもがわかる本. かもがわ出版, 2016
彼方始:考えよう学校のカラーユニバーサルデザイン. 教育出版, 2011