令和2年2月号(Vol.177)
病児・病後児保育について
寒い日が続いていますね。うちの第3子が先月、成人式を迎えました。式を終え、中学・高校時代の旧友と親睦を深め、夜中に帰宅してきました。あっという間のような20年だった気がします。思えば、中学生頃から友達や学校が生活の中心となり、だんだんと親から離れていきました。子どもの育ちとしては健全な姿だと自負はしておりますが、親としては子が離れていくのを寂しく感じます。子育ては6歳までとても手がかかりますが、その後は徐々に手が離れてきます。今月は当科でも行っている「病児・病後児保育」について取り上げます。
『病児・病後児保育』って?
『病児・病後児保育』とは保育所・幼稚園・学校などに通っているお子さんが、病気にかかった場合、看護師・保育士がお子さんを預かる制度です。多くの病児・病後児保育室が加盟している全国病児保育協議会では「病児保育とは単に子どもが病気のときに保護者に代わって子どもの世話をすることを意味しているわけではなく、病気にかかっている子どもに、子どもにとって最も重要な発達のニーズを満たしてあげるために専門家集団(保育士・看護師・医師・栄養士等)によって保育と看護を行い、子どもの健康と幸福を守るためにあらゆる世話をすること」と言われています。また、県内では全国病児保育協議会に加盟している施設(7施設)で年1回の勉強会を実施しながら質の向上を保っています。
『病児・病後児保育』は病児と病後児の2つのタイプがあり、施設によって受け入れられる病状が違ってきます。病後児保育は「病気の回復期」に限られます。実際の利用に関しては利用したい施設にお問い合わせいただけたらありがたいです。
病んでいる我が子を他人に預けることには不安があると思いますが、質の高い病児保育事業に携わるスタッフに安心して預けていただき、お迎え後におうちでゆっくりとお子さんと過ごしてください。また、お子さんだけでなく、お子さんが病気にかかってしまった不安を抱いているご両親に対しても気持ちに寄り添いながらサポートしています。
私が携わっている病児保育室「ドリーム」
昭和40年に全国で初めて病児保育が誕生しました。私たちの病児保育室は11年前から始まりました。初めは2部屋で受け入れ、病気別で部屋を受け入れるため手狭になり、補助金を利用し昨年、増築し5部屋で受け入れをしています。利用人数は年々微増し、1日平均3~4名、年間約1000名近くになっています。山梨県においては、県や市町村が主導になって全国で初となる【病児保育相互乗り入れ制度】ができ、2年前から県内どの市町村の方でも利用ができるようになり、利便性が向上しています。【山梨県内の相互乗り入れ制度】については、昨年12月25日のNHKの「おはよう日本」でも取り上げていただき、全国でも先進的な取り組みだと評価していただきました。当施設の昨年の利用は町内4割、町外6割になっています。また、利用年齢は低年齢が多いのですが、1割程は6歳以上の利用です。インフルエンザによる転落事故のことも考えると家で1人休ませるよりも病児保育の利用をお勧めしたいと思います。12歳まで利用可能できます。
実際、運営してみると、初めて利用のお子さんは泣いてしまうことが多いのですが、しばらくすると泣き止み落ち着いてきます。病児保育室への受け入れを保育士は上手に対応してくれますのでご安心下さい。病児保育は保育士1名に対し子どもが3名以下で対応していることもあり、通っている園よりも手厚い対応をするため利用した経験のあるお子さんから「病児に行きたい」と言う場合もあるそうです。
気になること
「病気のときぐらいは親(特に母親)がみるべき」と考えている社会の冷ややかな目が気になります。両親が気軽に休める職場や、祖父母などにサポートしてもらえたらありがたいのですが、すべての家庭がそうであるとは言えません。「困ったら病児保育がある」という安心感が子育て中の両親には必要ではないかと思います。子育ては親だけでできるものではなく、社会全体で行うべきものです。皆さんに「病児・病後児保育」の存在意義をわかっていただきたいと願っています。もう一つ、運営側に経営的な問題があります。病児保育があまり広がらないのは病児保育に対する補助金が少なく、多くの病児保育施設が赤字経営であることです。安定経営のためにも補助金制度の改善を期待します。
最後に利用する場合はまず登録をしていただきます。山梨県が運営している「やまなし子育てネット(www.yamanashi-kosodate.net/)」に利用方法の詳細がわかり便利です。
参考文献
全国病児保育協議会ホームーページ(byoujihoiku.net/)