令和4年12月号(Vol.211)
HPVワクチン~最新情報、9価追加~
2022年も残すところ1か月を切りました。年越しへ向けて慌ただしさが増している頃ではないでしょうか?今秋は3年ぶりのお祭りなどの行事が再開され、ウィズコロナの生活に転換しつつある兆しが感じられます。子どもたちの園・学校生活も同様にのびのびできるようにと願うばかりです。
11月6-9日、県立図書館のイベントスペースにて「18トリソミーの子どもたち写真展」が開催され、見に行きました。うちのクリニックに併設している重症心身障がい児一時預かり施設でご縁があるお子さんの写真も展示されていて、身近に感じました。一方で全国の18トリソミーの子どものたくさんの写真を目の当たりにしたことで、子どもはもちろんのこと、家族や兄弟の環境や心境にも思いを寄せる時間となりました。企画・運営した保護者の方と話をしたところ、この写真展を契機に同じ環境の人と初めて話したという家族もいたそうです。SNSのつながりが容易になってきた時代ですが、顔を合わせて直接話したことで得られた元気・勇気が孤立していた家庭の新たな一歩に繋がることを願うばかりです。
今月は子宮頸がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについてお話します。HPVワクチンは小学校6年から高校1年相当の女子が接種対象で、2013年に定期接種化された直後、体の痛みなどを訴える人が相次いだため、積極的な接種の呼びかけが中止されていました。8年間の経過を経て、ワクチンの安全性について特段の懸念が認められず、接種による有効性が副反応のリスクを明らかに上回ることが認められたため、今年4月から定期接種が再開されました。さらに今年11月の発表で、来年4月から従来の2・4価だけでなく、より効果が高いとされる「9価」ワクチンの使用が可能になりましたのでお話します。
子宮頸がんについて
子宮頸がんは子宮の入り口付近にできるがんで、20~40代の女性を中心に毎年約1.1万人が新たに診断されて、年間約2,900人が亡くなっています。30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまう(妊娠できなくなってしまう)人も毎年約1,000人います。性的な接触によるHPVの感染が原因と言われ、感染してもほとんどの人は自然に消えますが、一部の人でがん化します。HPVワクチンは感染を防ぐことができ、将来の子宮頸がんを予防できることが期待できます。合わせて20歳をすぎたら2年に1度の子宮頸がん検診受診が大切です。
9価HPVワクチン
HPVワクチンは定期接種で使用できるのが2・4価ワクチンの2種類があります。2価ワクチンは子宮頸がんをおこしやすい16・18型のタイプの感染予防効果があり、4価ワクチンはこの2つのほか、良性のいぼ(尖圭コンジローマ)の原因となる6・11型にも効果があります。2・4価ワクチンともに子宮頸がんの約50~70%を防ぎます。さらに来月4月から追加される9価ワクチンは16・18型に加えて、31・33・45・52・58型のタイプまでカバーでき、約90%防ぎます。欧米をはじめ多くの国では9価ワクチンを使用しています。
安全性のデーター
2015年、HPVワクチン接種と接種後報告され多様な症状を認めた24症状の因果関係を調べるために、名古屋市によって約7万人の若年女性を対象に大規模疫学調査が実施されました。調査結果から、非接種群と比較して、この24症状のいずれの発症率も接種群で有意な上昇は認められなかったそうです。
親子で接種について話そう!
2013年、HPVワクチンが始まって2か月後に接種後の副反応と見られる症状の報道が多くの親御さんは今でも記憶に残っているのではないかと思います。実際、HPVワクチンの接種券が届き、効果も知りつつ接種すべきかを迷っている人も多いと思います。情報が厚生労働省ホームページなどに詳細に記載されており、わかりやすく一般向けのリーフレットなどもあります。親子で読んでいただき、特にお子さんが納得するように親子で話をしていただくことがよいのではないかと思います。このプロセスが今後の親子関係にもよい影響があると思います。日頃、勉強ばかりの話に行きがちですが、体が資本です。健康でなければ何事も前に進みません。接種に迷った場合はかかりつけ医に相談しても良いと思います。自分の体のことですのでお子さんの納得が大切だと思っています。ちなみに私の娘(小4)がまもなく接種対象を迎えますが、親としては9価ワクチンを勧めるつもりです。