令和5年10月号(Vol.221)
学習障害(LD)について知ろう!
9月に入っても猛暑日が続き、夏が好きな私もさすがに体に応えましたが、皆さんはどうですか?
ところで先日、追突事故に遭いました。お店の駐車場に車を止め、シートベルトをはずし車から降りる直前に、後ろから体に強い衝撃が走りました。幸い、首の痛み以外の症状はありませんでしたが、皆さんも車の運転にはくれぐれも気をつけてください。
例年、小児科は9月頃感染症が落ち着く時期なのですが、今年はコロナやインフルエンザの受診が多く、まだまだ落ち着いていない現状です。この3年間インフルエンザはコロナ禍の感染対策の効果もあって、流行が抑えられていました。多くの人たちはインフルエンザに対する免疫力が低下していることを考えると、今冬は例年通りにインフルエンザワクチンの接種も忘れずに備えるべきだと思います。
今月は、知的な遅れがないが「読み・書き」「計算」などの習得がうまくいかない発達障害の中の一つである「学習障害」について皆さんにお伝えしたいと思います。
学習障害とは
学習障害とは、全般的に知的発達に遅れはないが、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つないし複数の特定の能力について習得できない、もしくはうまく発揮することができないため、学習上、様々な困難に直面している状態をいいます。学習障害は発達障害の一つとして位置づけられています。
原因は中枢神経系の何らかの機能障害によるものと推定されています。頻度として、2012年に小中学校教師を対象とした全国調査が行われ、学習面に著しい困難を示す児童生徒は4.5%存在することが示されました。タイプとして読字・書字表出の障害(読み書き障害、ディスレクシア)・算数の障害に分けられます。
学習障害の診断など
幼児期に文字に興味がない・文字を覚えようとしない・文字を一つ一つ拾って読む・読んでいるところを確認するように指で押さえながら読む・本を読んでいるとすぐ疲れるなどがみられるとディスレクシア(読み書き障害)の可能性があります。診断は特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドラインによると、知的発達が問題ないか知能検査(WISC-Ⅳなど)をし、読みや算数のテストを行い、平均からどの程度の遅れがあるかで判定していきます。
ディスレクシア(読み書き障害)について
ディスレクシアのお子さんは文字が読めないと表現されることが多いのですが、正しくは読むのが極端に遅く、よく間違えます。1文字を読むのに時間がかかり、間違えるため、読むだけで疲れてしまい、意味を把握する段階まで至りません。そのため読書に対する拒否感が生じてしまうことになります。その結果、語彙や知識が不足して、学業不振が著しくなっていきます。さらには心身症や不登校といった二次障害が起こることもあります。
学習障害のお子さんの対応方法
読み書き・計算が苦手なのか、障害なのかを判定するのは簡単ではないと思いますが、努力しても習得に困難がある場合は学習障害を疑うことも大切です。診断は専門の医療機関で対応できますので、相談することをお勧めします。
学習障害がある場合は、通常学級にするか、通級や支援級にするか迷っている方もあるかと思います。発達障害の第一人者である本田秀夫先生著「学校の中の発達障害」では、小1で通常学級に入り「自分は失敗した、がんばれなかった」という挫折感を持つと子どものメンタルヘルスが損なわれるので、特性がみられるのであれば、入学時は通級や支援級を勧めています。通級や支援級で趣味の合う子が見つかる場合もあるようです。親としては通常学級を希望しがちですが、見学等を通してお子さんと一緒に考えると良いでしょう。親が子どもに勉強を教えると、力が入りすぎて、親子関係が悪くなります。学習のお手伝いをしてくれる放課後等デイサービスの利用も検討してはいかがでしょうか?
私が関わったケースでは、通学している学校に通級体制がなく、通級を利用したい場合は別の学校に移動するため、保護者が子どもを送迎しなければならない状況があることを知りました。通級をすべての学校に設置して、子どもに適切な教育を受けられる配慮をしていただけたらありがたいです。
参考文献
通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について2012
稲垣真澄:特異的発達障害 診断・治療のための実践ガイドライン.診断と治療者. 2018
本田秀夫:学校の中の発達障害.SB新書.2023