令和5年11月号(Vol.222)
ワクチンパレードに参加して~前編~
寒さを感じるようになり、秋らしくなってきました。私は今月末にある富士山マラソンに備えて、少し長めにランニングをしています。
先月、自宅のトイレの便座部分のみが壊れたため、ネットで購入した便座をYouTubeで見ながら自分で取り換えることにしました。YouTubeを見ると30分で簡単にできるようだったので気軽な気持ちで始めました。途中、便座の型が違うことに気づき、やり方がわからない状態で四苦八苦していました。ウォシュレットトレイのため電気配線ボックスを開け、懐中電灯で照らしながら配線を抜き差ししました。狭い所があったので、私より手が小さい娘にも手伝ってもらい、2人で汗をかきながら1時間以上かかりなんとか取り換えることができました。
10月12日、患者支援団体・医師などの専門家が企画した「第14回ワクチンパレード2023」に初めて参加してきました。数十人が参加して東京の六本木から日比谷までを「希望するすべての人たちに無料でワクチンを」とアピールするパレードを行いました。この日は秋晴れで大変気持ちよく行進できました。さらに武見大臣と面談し、各患者会からの要望書を提出し、記者会見も行いました。医療従事者と患者会の協働という貴重な経験をすることができましたので、各患者会から提出された要望書に関してお伝えします。
おたふくかぜワクチンの定期接種化を!
両側難聴で人工内耳をつけている人工聴覚情報学会の理事の方が「おたふくかぜワクチンを定期接種化してもらいたい!」と訴えていました。おたふくかぜにかかると合併症として、無菌性髄膜炎が約50人に1人、一生治らない重度の難聴が約1000人に1人の割合でかかると言われます。
その理事の方から片側性難聴でも不自由さがあることを聞きました。音の立体感がわからず、どこで音がしているかがわからないそうで、自分のポケットからスマホを落としても音は聞こえるがどこで音がしているかがわからず、落としたことに気づくことができず、電車の発車ベルが鳴ってもどの電車から発した音がわからないといった不自由さがあることを知りました。
不活化ポリオ5回目の定期接種化を!
「ポリオの会」からは3人が参加していました。定期接種である生ポリオを飲んだ後、まれに起こる副反応でポリオを発症、足に麻痺がみられ、車椅子生活になってしまったワクチン被害者の方々でした。生ポリオワクチンによる小児まひを防ぐために、2012年から不活化ワクチンに切り替えられました。
現在、不活化ポリオワクチンの4回接種を実施していますが、接種から時間が経つと感染を予防する力が低下してきます。ポリオの会では、就学前の5回目接種の必要性を要望していました。
外務省の海外安全ホームページによると、ポリオの発生はアフガニスタン・マラウイなどだけでなく、アメリカ・イギリス・カナダの国も含まれていて、渡航時は追加接種を検討するように呼び掛けています。ただ、国内でもコロナ5類以降渡航者が増えている状況を考えるとリスクはあると思います。
HPVワクチンをどこでも、男子にも!
今回のパレードでは日本産婦人科医会会長からHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種率が低いため、もっと接種率が上がるようにと切に訴えていました。さらに、今回のパレードの中心的な立役者である小児科医の細部先生からはHPVワクチン接種率が上がらない原因の一つである、大学生の接種が居住地と住民票が異なることで、書類のやり取りが複雑になり、接種のしづらさがある状況を解消して欲しいと要望していました。
現役の男子大学生は、HPVワクチンを男子にも定期接種化することを訴えていました。アメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダでは男性への定期接種が始まっています。HPVは肛門がん・陰茎がん・中咽頭がんの発症原因になり、HPVワクチンを接種することでそれらの病気を予防できます。HPV感染は性交渉でうつるため、男性が接種することで、これらのがん予防だけでなく、大切なパートナーへの感染の広がりを抑え、子宮頸がんなどの病気から守ることにもなります。いくつかの自治体で男性へのHPVワクチンの助成が始まっています。今後も最新のワクチン情報を収集しながら、小児科医として啓蒙活動に努めていきたいと感じた一日になりました。