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院長コラム

令和5年12月号(Vol.223)
ワクチンパレードに参加して~後編~

2023/12/01(更新日)

 先月上旬までは夏のような気温の日が続き、秋を感じることがないままに冬に移行したと感じます。クリニックでは例年11月はインフルエンザワクチン接種を集中して行うのが主なのですが、今年11月はワクチン接種とインフルエンザの流行が重なり、受診の要請があっても全て対応することができず忙しい状況が続いています。

子どもが小さいときは子育てで疲れることもあると思いますが、子育てが終わった後の私の体験談をお伝えします。私には今成人になった子どもが4人いますが、今は会う機会が徐々に減っています。先月、私は息子(24歳)に誘われ、フルマラソン出場のための練習で20キロを初めて親子一緒に走りました。日頃は会ってもあまり会話は弾まないのですが、一緒に走ると不思議と会話が弾み、楽しく思い出深い一時を過ごすことができました。子育て中は私たち親が子どもたちに時間や気持ちを与えるばかりだと思っていましたが、成長していく中で子どもたちは私たち親に少しずつ時間や気持ちの恩返しをしてくれるようになるのだと感じた出来事でした。これも子育てに向き合った人が感じることができるご褒美だと思います。今子育てに奮闘している保護者の皆さん、そんな日を夢見ながら子どもと一緒にいられる貴重な毎日を大切に過ごしてほしいです。

 先月に続き、今月もワクチンパレードに参加した体験談をお伝えします。今月は、日本産婦人科医会会長が一番訴えていたワクチン、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについてお伝えします。先月は、HPVワクチンはアメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダでは男性への定期接種が始まって、HPVは肛門がん・陰茎がん・中咽頭がんの発症原因になっていることをお伝えしました。私の息子たちが20歳代だったので、HPVワクチンの話をしたところ、4人とも進んで接種しました。

 

子宮頸がんについて

 子宮頸がんの95%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。感染経路は性的接触と考えられています。そして、そのうち一部の女性が子宮頸がんに発症し、数年から数十年かけて子宮頸がんに進行します。

 子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2800人が死亡しており、患者数・死亡者数とも微増しています。特に50歳未満の若い世代での罹患の増加が問題となっています。この年齢の女性は多忙を理由に検診率がなかなか上昇しない現状もあります。

 

HPVワクチンについて

 2013年から積極的な勧奨を一時的に差し控えていましたが、令和4年4月から他の定期接種と同様に、個別の勧奨を行なっています。さらに2・4価HPVワクチンに加えて9価HPVワクチンが今年4月から公費で使用できるようになりました。特に9価HPVワクチンは9割以上の子宮頸がんを予防できると推定されており、効果が今までよりも高くなっています。

 HPVワクチンと聞くと、マスコミにより大きく報道され積極的な勧奨を一時的に差し控えたとされるきっかけとなった手足の動かしにくさ、不随運動などを中心とする「多様な症状」のことを思い浮かべると思います。厚生労働省専門部会により「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係はなかったという報告や2015年に名古屋市で行われた約3万人のアンケート調査では、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がなかったことが明らかにされています。

 定期接種の時期は小6から高1までの女子が対象で、さらに接種ができなかった平成9年から平成17年度生まれの女性に2025年3月まで公費での接種ができます。前向きに検討されることをお勧めします。

 

HPV検査を導入検討

 HPVワクチンで予防し、さらに検診で早く病気を見つけることで子宮頸がんを大幅に減らすことが期待できます。国では子宮頸がんの検診は現行では20歳過ぎたら2年に1度の細胞診(変化した・がん化した細胞がないか)を勧めています。2024年度から導入を検討しているHPV検査(30~60歳)はHPVが感染していないかを調べるもので、より早い段階でがんとなる可能性がわかるようになります。HPV検査で陰性であれば、細胞診は2年ごとであるのに対して、HPV検査が陰性であれば5年ごとになり、検診の負担も軽減できると言われています。但し、HPV検査陽性者はその後、細胞診を行ない、長期的なフォローが必要になるため、自治体での体制づくりが課題とされています。

 子宮頸がん予防のために、まずHPVワクチン接種、20歳代で2年に1度の細胞診、30歳以降で来年度以降検討されている5年ごとのHPV検査で患者数を大幅に減らすことが期待できます。ご自身の健康のためそして家族のためにも、ワクチンと検診をお考えください。

 

参考文献

子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために 日本産婦人科学会

子宮頸がん検診におけるHPV検査単独法の導入について 厚生労働省

 

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