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院長コラム

令和6年4月号(Vol.227)<br>ヤングケアラーを知ろう!

2024/04/01(更新日)

 ようやく暖かくなり、草花が芽吹く春がやってきました。

入園・入学・就職と新生活になるご家庭ではお子さんの生活、そしてご自身の仕事に慣れていただくことが第一です。新年度の4月は家族1人1人が新生活で疲れがでます。無理をしない・頑張りすぎずに生活が送れるといいですね。  うちは息子が大学を無事卒業し、新社会人になります。彼が社会人としてどんな風に成長していくのかを楽しみにしている今日この頃です。

 2月末、福岡県内の小学校で1年生の児童が給食で提供されたうずらの卵をのどに詰まらせて亡くなった事故がありました。2015年にも大阪で小学1年生がうずらの卵による窒息事故で亡くなっています。小学1年生の頃は歯が生えかわる時期で前歯がない時期です。前歯がない状態では、表面がツルツルした食べ物の場合、噛もうとしてもうまく嚙み切れず、そのまま吸い込んでしまうことがあります。うずらの卵だけでなく、あめ類・ラムネ・ブドウ・ミニトマト・白玉・球形のチーズなどは給食・ご家庭でも出さないようにお願いします1)。事故発生時での対応を学ぶことも大切ですが、このような食べ物を出さないことを徹底すると予防につながります。

 さて先月、山梨県での上映予定がないため、東京の田端にあるわずか20席しかない小さな映画館で「弟は僕のヒーロー」という映画を観てきました。この映画は実話を基に作成されています。イタリアの作品で、ダウン症の弟との関わりを兄の視点から描いています。兄は思春期を迎え、障がいがある弟を隠すようになっていく心理、ピュアな心を持ち続ける愛に溢れた弟、そして家族への愛情が表現されていました。障がい児を持つ家族にとっては同じような経験があって、大変な苦労と葛藤があるのだと思いました。そういった家族の思いを社会全体で共有することができれば、もっと温かい社会になるのではないでしょうか。上映中、すすり泣く声が聞かれたのが印象に残りました。

 今回の映画では障がい児を持つ家族の中の健常児の兄が主人公でした。このような家族の場合、親はつい障がい児に目を向けてしまいがちになります。健常児の兄弟にとっては、愛情が届きにくい状況になることがしばしばあります。

円滑な生活を送るために、健常児が家族の一員として、家事や障がい児の世話などの時間に追われるということが社会問題化されています。そのような状況にある子どものことを「ヤングケアラー」と言い、社会的に認知が広がってきています。今月はヤングケアラーについてお話します。

 

ヤングケアラーって?

 ヤングケアラーとは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこどものことを言います。障がいや病気の家族に代わり、買い物・料理・洗濯・掃除などの家事、幼い兄弟の世話をしたりしています。責任や負担の重さにより、学業や友人関係などに影響が出てしまうことがあります。2)2022年度に実施した調査結果において、山梨県内では、ヤングケアラーとして支援すべき子どもの存在が約28人に1人程度(3.6%)いることが明らかになっています。2022年12月、県でヤングケアラーやその家族に寄り添った支援を展開していくために、支援の方向性を具現化した「山梨県ヤングケアラー支援計画」が策定されました。その計画の中に、県民が正しい理解を深め、ヤングケアラーとその家族を支えられるように、ヤングケアラー本人への支援の充実と福祉サービスの充実を強化していくことが書かれています。3)

 

ヤングケアラー本人への関わり

 うちのクリニックでは、人工呼吸器や胃ろうなどを使用している医療的ケア児を対象としたデイサービスを運営している関係で、医療的ケア児の兄弟と診療などで出会うことがしばしばあります。そんな時はなるべく、積極的に声をかけるなどの配慮をしています。

 ヤングケアラー本人は特別扱いもしてほしくないと思いますが、ぜひ周囲の大人は気にしていきましょう。本人が困ったときは学校の先生・スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー・親戚の人など信頼できる周りの大人に頼ることが大事です。県のヤングケアラー相談窓口として電話・SNS・対面での方法があります。子どもに関する全般的な相談窓口でも構いません。話を聞くだけでも対応してくれます。1人だけで悩まないで。あなただけが、がんばり過ぎることはありません。あなたの家族を社会が関わることで支えていきます。

 

参考文献

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