令和6年12月号(Vol.235)<br>マイコプラズマ感染症について
先月まで暖かい日が続いたことも影響し、あっという間に冬に移行したため月日の経つのが早く感じられます。今月はクリスマス・仕事納めと慌ただしい月になりますね。お子さんはサンタさんからのプレゼントを楽しみにしているでしょうね。当日開けた時の喜びは親子とも一生忘れられない思い出となります。
先月初め、家族で長崎へ旅行に行ってきました。夜、ロープウェイに乗って世界新三大夜景を見てきましたが、山梨県人だからなのか甲府盆地の夜景の方がずっときれいに感じました。もう一つ、訪れたのが「長崎原爆資料館」です。
被爆の惨状などを平和案内人の方から説明していただきました。説明の後、なぜ平和案内人をしているのかと聞いたところ、「1人でも多くの方に、原爆の惨状を知ってもらい、世界が平和になることを願って、ボランティア活動をしています。」と教えてもらいました。改めて平和について考える機会を得ました。
先月は抗生剤の適正使用について話をさせていただきました。思っていた以上の反響があり、好意的な反応がみられました。風邪(感冒)の原因の多くはウイルスで、抗生剤が効かないことを理解していただけたと思います。
今月は子どもたちを中心に流行している「マイコプラズマ感染症」についてお伝えします。ちなみに、マイコプラズマはウイルスでなく細菌であるため、抗生剤が効きますので、マイコプラズマのことを知って上手に対処できることを期待します。
マイコプラズマ感染症って?
マイコプラズマ感染症はマイコプラズマという細菌による感染症で、様々な症状を起こします。マイコプラズマにかかると、肺炎になりやすく、発熱・倦怠感・頭痛・咽頭痛などの症状が出始めて数日後に咳がでてきます。咳は痰を伴うことが少ない乾いた咳が特徴で、解熱後も長く持続する「長引く頑固な咳」です。
今年5月からマイコプラズマにかかる患者数が増加、2016年以来8年ぶりの流行となって、現在も流行しています。新型コロナウイルス感染症の流行で、多くの感染症にかからなくなり、マイコプラズマも同様に、免疫を持たない成人や小児が多くなっていたのが今回のマイコプラズマの流行につながっています。
診断方法は?
診断はコロナとインフルエンザのような迅速検査がありますが、感度が低いため、積極的に検査するのはお勧めしません。つまり、検査して陰性でもマイコプラズマにかかっていないと否定できないのです。他の検査方法として、血液検査で抗体価をチェックする方法がありますが、採血をすることと結果に時間がかかることで普及していません。実際の診療では流行状況と症状から総合的に判断していくことが多いと思います。
治療法は?
マイコプラズマは細菌であるため、抗生剤が効きます。抗生剤の第一選択薬はマクロライド系の抗生剤が推奨されます。マクロライド系の抗生剤が無効な場合、ニューキノロン系(小児はトスフロキサシンのみ)もしくはテトラサイクリン系(8歳未満は医師が必要と判断した場合のみ可)の抗生剤に変更します。 今ある抗生剤を上手に使用することで耐性菌の出現が減らすことができ、どちら抗生剤も効かない耐性菌が現れないようにするべきです。大事なお子さんにどんな抗生剤が処方されているかを確認することも大切です。
予防法は?
感染予防は新型コロナウイルス感染症やインフルエンザと同様に、せきやくしゃみの飛散から感染が広がる『飛沫感染』のため、手洗い・うがいなど今まで通りの感染対策をしてください。せきがでている場合はマスク着用を心がけてください。潜伏期間が2~3週間と長く、家族間では忘れたころに症状がでてくることが多いです。今現在、マイコプラズマの流行期であることを知って、園や学校の先生方は、咳嗽が続いている場合は保護者に医療機関受診を積極的に勧めてください。
今冬はマイコプラズマ・インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の3つが流行するのではないかと危惧されています。各々の病気を知ることで、上手に医療機関受診し、お子さんの体を守っていただけるとありがたいです。
2025年もこのコラムを通じて、少しでも皆さんの健康に役立ててもらえたらと願っています。どうぞよろしくお願い致します。
参考文献
マイコプラズマ肺炎流行に対する日本小児科学会からの注意喚起
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20241028_maiko.pdf
マイコプラズマ肺炎増加に関する学会からの提言について(周知)