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院長コラム

 

 あっという間に2019年の最終月になりました。クリスマスプレゼントの準備はいかがですか?今年の暦はクリスマス前後が平日なので、サンタさんも事前の準備が必要ですね。インフルエンザの流行期に入りましたので、手洗い・うがいで予防し、家族みんな健康で新年を迎えたいですね。

先月、山梨大学付属病院で脳死判定を受けた6歳未満の女児の家族が臓器提供を承諾したというニュースを知りました。両親が自分の子どもの死を受け入れることだけでも大変なことです。そのような状況の中で臓器提供について考え、承諾までを決断する過程を考えると両親の苦悩は想像を絶する状況であったでしょう。ご両親の決断により、心臓・肝臓・腎臓・小腸が5名の方に提供されました。その選択を心より応援したいと思います。そしてその決断が今回のテーマを取り上げるきっかけとなりました。決断までの道のりは大変であったに違いなく、それをサポートしてくださったコーディネーターや医療従事者の方々にも敬意を表したいと思います。私自身は臓器移植に関しての経験はありませんが、医療従事者の一人として臓器移植について皆様に情報提供し、一緒に考えていきたいと思い、今月のテーマにさせていただきます。

 

臓器移植とは

 臓器移植とは病気や事故によって臓器(心臓や肝臓など)が機能しなくなった場合に、人の健康な臓器を移植して機能を回復させる医療です。健康な家族から肺・肝臓・腎臓などの部分提供による生体移植と亡くなられた人(脳死後または心臓が停止した死後)からの臓器提供による移植があります。移植できる臓器は心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球(角膜)です。現在約1万4千人の移植希望者がいますが、年間で移植を受けられるのはわずか約2%で、多くの方が移植を待ち望んでいる現状です。脳死後の提供の場合、最大で「心臓」「肺×2」「肝臓×2」「腎臓×2」「膵臓」「小腸」「眼球×2」で11人を救うことができます。

 臓器提供までの流れは、移植コーディネーターによる説明を受け、家族が十分に話し合いをしてどうするか決めます。決まれば脳死判定が行われ、移植を受ける患者さんが公平に選ばれます。選ばれた後、提供する臓器の摘出手術が行われます。手術は数時間要し、傷はできますが、摘出後はきれいに縫い合わせて、清潔なガーゼで覆い、外から見ても傷がわからないようにしてもらいます。眼球提供の際は義眼を入れるので顔はほとんど変わりません。

 2010年に改正臓器移植法が全面施行され、生前に書面で臓器を提供する意思を表示している場合だけではなく、ご本人の臓器提供の意思が不明な場合も、ご家族の承諾があれば臓器提供できるようになりました。これにより、15歳未満の方からの脳死後の臓器提供も可能になりました。

 

まず考え行動しよう

 2年前の世論調査では家族などと臓器提供や移植について「話をしたことがある」が35.4%と約3人に1人が家族と話をしています。死についての話はタブーととらえて、意見交換する機会はあまりないかもしれません。まずは家族と話をすることから始めてはどうでしょうか?日本臓器移植ネットワークのホームページを覗いてみてください。基礎知識から移植経験者や臓器提供者の家族の思いが載せられた手記まで多くの情報があります。

 まず、臓器移植のことを知った後は自分が意思表示をするかどうかです。意思表は健康保険証・運転免許証以外にマイナンバーカード・意思表示カード・インターネットでも示すことができます。同じ世論調査で保険証や運転免許証の裏面に意思表示欄があるのを知っている人は半分以上いるようですが、臓器提供に関する意思表示をしている方は12.7%しかいません。平成22年の法改正後から徐々に意思表示が身近になっていますが、家族と臓器提供や移植について話をする機会が少なく、もしもの時に家族が本人の意思を尊重できない可能性もあります。日頃から家族と話をしておくことが大切です。

 意思表示欄をみると、臓器をあげたいか、あげたくないかと迷われるかもしれません。意思を変更できることは何度でも可能ですので、まず読んで考えてみてはいかがでしょうか?「臓器を提供する」という意志だけではなく、「臓器を提供しない」という意思も表示でき、どちらの意思も尊重されます。

 高校生の息子に保険証の裏面を見ながら話をしたところ、興味を示し、自分の考えを話してくれました。身内の死などの経験があれば考えるきっかけになりますが、そのような経験がないとイメージしにくく、話題にならないと思います。大学生の子ども達にも年末年始にこの話をしたいと考えています。

 

参考文献

日本臓器移植ネットワークホームページ www.jotnw.or.jp/

 

 先月は台風19号で県内でも大きな被害が出ました。うちのクリニックは台風接近した日は臨時休診とし、前日には予約した方に連絡をするなど対応に追われました。全国各地での川の氾濫等の被害をニュースで知ると、他人ごとではない気持ちになりました。再びやってくる台風に備えて自分の住んでいるハザードマップ(被害予測地図)を再確認し、停電などになった場合の備えを考える機会となりました。

 9月末、全国病児保育協議会山梨県支部主催の研修会が富士吉田市で開催されました。当院の病児保育室も含め県内の協議会加入病児・病後児施設5か所(甲府市・昭和町・甲州市・富士吉田市・北杜市)の関係者約60名超が集まり勉強しました。県内でも未だ全国病児保育協議会に加入していない施設があるため、ぜひ加入して共に研鑽していってほしいと願っています。

今研修会の講演会では山口県の金原小児科院長・病児保育室ここいえの施設長である金原洋治医師による「そうだったのか!発達や行動が気になる子の理解と関わり方」について最近の脳科学研究と実践を絡めた貴重な話を聞くことができました。その講義の中で保育者・看護師の参加者が関心の高かった「マルトリートメント」について「子どもの脳を傷つける親たち」という本を参考にしながらお伝えいたします。

 

マルトリートメントとは

 マルトリートメント(maltreatment)はmal(悪い)とtreatment(扱い)が組み合わさった単語で、「不適切な養育」と訳されます。「虐待」とほぼ同義と考えてよく、子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育をすべて含んだ呼称で、子どもに対する大人の不適切なかかわり全般を意味する、より広範な概念です。

マルトリートメントは昨今、虐待として報道されるような極端なケースだけではなく、たたく・しつけと称して怒鳴りつける・脅かす・暴言をあびせる・本人に直接的ではなくても子どもの前で繰り広げられる激しい夫婦げんかも含まれます。自戒を込めて言いますが、夫婦げんかは子どもの前ではしないように努めるべきですね。マルトリートメントはどの家庭でも起こりうることでトライ&エラーを繰り返しながら親も育ち、過ちを繰り返さないように親は成長していく必要があります。

 子育て24年の私も最初の頃は未熟で、手を出すことはしませんでしたが、子どものためと思い、強い口調で子どもに言ったことは何度もあります。最近は少し大人になったせいか、落ち着いて話ができるようになりました。

 

子どもの脳が傷つく

 親や養育者といった身近な存在から適切なケアと愛情を受けることが脳の健全な発達には必要不可欠ですが、極度のストレスを受けると子どものデリケートな脳はその苦しみになんとか適応しようとして、自ら変形してしまうのです。

これまでの研究からMRIで脳を撮影した結果、①小児期に厳格な体罰を経験したグループでは脳の前頭前野(学びや記憶に関わる)の容積が平均19.1%縮小、②暴言を浴びせられた場合、聴覚野が肥大、③両親の家庭内暴力の目撃により視覚野の萎縮がありました。その結果、学習意欲の低下や非行、うつや統合失調症などに結び付く危険性があると言われています。このように外からの刺激により脳が傷つくことがわかるようになりました。

ただ、一旦傷ついた脳も適切な治療やケアを行えば、ゆっくりと回復することもわかっていますので、悲観し過ぎることはありません。別の研究ではマウスの母親の毛づくろいやなめる行動で大事に育てられた仔マウスは正常な発達を遂げますが、そのようなケアを受けずに育った仔マウスは成長後、ストレスや不安が高まることがわかりました。人も同様だと思いますが、子どもたちは親や養育者から「愛されている、大切にされている」という安心・安全を確保できれば、それを足掛かりに外の世界を探索していきます。完璧な親はいませんので、明日からの子育てに活かし、お子さんをしっかりと抱っこして、話しかけて愛してください。それで大丈夫です。

 

ロタウイルスワクチン、定期接種化決定!

 先月、厚生労働省は来年10月からロタウイルスワクチンを定期接種化することを決定しました。来年8月生まれ以降のお子さんが対象となりますので、しばらくは自費扱いとなります。ロタウイスによる胃腸炎は重くなることが多く、ワクチンによりかかってもかかっても症状が軽くなりますので、今まで通り接種をしていただきたいと思います。おたふくかぜワクチンはまだ公費になっていません。1日でも早く定期接種化していただきたいです。

 

参考文献

子どもの脳を傷つける親たち NHK出版 友田明美

 先月クリニックで、季節外れのインフルエンザ感染者が出て大変驚きました。幸い重くなる人は少なく安心しました。近くの園や小学校でもインフルエンザによる学級閉鎖等の報告がありました。また同時期に沖縄ではインフルエンザ警報が発表されたそうで、今後の発生状況に注意する必要があります。

先月、ここ数年恒例になったSSPE(亜急性硬化性全脳炎)という難病の親の会が主催するサマーキャンプに妻と娘と一緒に参加してきました。患者さんの父親から今年1月、お子さんが成人式に出席した話を聞きました。「この病気にかかり車いす生活となったことで、自分も付き添いで成人式に参加することができよかった。この病気にならなければ自分が参加することもなかった。」と何事にも前向きな父親からの話でした。このような両親に見守られているお子さんを本当に幸せだと感じ、今後もこの親の会を応援したいと思いました。

日頃このコラムでは子どものことを中心に書いていますが、今月は育児をする親に目を向けたいと思います。予防接種は以前に比べて、多くの種類が存在していて、そのほとんどは0歳~1歳のお子さんに接種しています。一方で昨年、大人の予防接種について推奨するホームページ(オトナのVPD)が開設されました。予防接種は子どもだけではなく、大人も大切なものです。

 

オトナのVPDって

 VPD(Vaccine Preventable Disease)とは「ワクチンで防げる病気」のことです。現在、多くのワクチンがありますが、接種すれば免疫が獲得され病気にかかりづらい体になります。VPDにかかっていない場合、子どもだけでなく、大人もワクチンを接種することが重要です。

オトナのVPDのホームぺージには「思春期・青年期(10~20代)」・「子育て世代」・「現役ミドル世代(40代~)」・「シニア世代(60代~)」と年齢別に4つ分かれています。自分の世代をクリックするとお勧めのワクチンが記載されています。読者の世代である「子育て世代」では麻しん・風しん・おたふくかぜ・水痘は大人でかかると重くなるので2回接種を勧めています。『妊婦さんにはインフルエンザワクチンをすることで、移行抗体で新生児の赤ちゃんを予防する効果があること』・『家族やパートナーがB型肝炎キャリアの場合は直ちにB型肝炎ワクチンを接種すること』・『子どもの時期に接種したワクチンの中で日本脳炎や破傷風は大人になると免疫が低下するため、日本脳炎流行地域に渡航する場合は追加接種をすること』・『破傷風は災害でのボランティア活動時は事前にワクチン接種をすること』が勧められています。

シニア世代には重症化しないようにインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチン・帯状疱疹後の神経痛はつらい症状が長く続くため水痘ワクチンを勧めています。

 

思春期・青年期のお勧めワクチン

 子育て世代と同様に麻しん・風しん・おたふくかぜ・水痘のワクチンを2回接種することだけでなく、性交渉などでB型肝炎が感染するのでB型肝炎ワクチン3回接種をお勧めしています。

 さらに、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症を予防するHPV(子宮頸がん)ワクチンもお勧めです。子宮頸がんは性交渉によってHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染し、持続感染することでがん化するVPDです。日本での患者数は年間約1万人、20代後半から増加し40代以降は概ね横ばいになります。早期に発見されれば比較的治療しやすいといわれていますが、年間約3,000人が死亡しています。

HPVワクチンは6年前から小学6年生から高校1年生までを対象に定期接種となりました。その2か月後、接種後の慢性疼痛などの有害事象報告があり、一時的に積極的な勧奨接種が差し控えられています。しかし、一方で現在でも定期接種のワクチンとして原則無料で受けることができます。副反応出現時には定期接種として救済します。HPVワクチン接種後の慢性疼痛などの症状とワクチン接種には科学的な因果関係がないことが国内の研究でも明らかになっています。3年前に名古屋市が7万人以上を対象に大規模な疫学的研究(名古屋スタディ)を実施した結果、HPVワクチン接種後にワクチンとの関連が疑われた症状の発生頻度はワクチンを接種した人とワクチンを接種していない人の間で違いが認められませんでした。関連学会などが勧奨接種の再開を国に求めています。日本で認可されているHPVワクチンは2価(HPVウイルス2種類)と4価(HPVウイルス4種類)で7割の効果がありますが、現在、アメリカでは9価(HPVウイルス9種類)ワクチンに変わり、9割の効果があると言われています。日本でも早く勧奨接種が再開され、9価ワクチンになることを切望します。

 

参考文献

「オトナのVPD」ホームページ http://otona.know-vpd.jp/

 

 まだまだ暑い日が続きますね。子どもたちは夏休みが終わり、園や学校に行き始め、やっと通常通りの生活がやってきたとホットしている親御さんは多いと思います。我が家の夏休みは県外にいた大学生3人がバラバラと帰省し、子どもたちの学校や友達の話を聞き、各々の成長を親として感じることができました。日頃あまり遊ぶことのない年の差の娘はプールや科学館へ兄に連れて行ってもらい、楽しい時間を過ごすことができました。

 今回、千代田区立麹町中学校長工藤雄一先生の著書「学校の当たり前をやめた」という本をもとに、みなさんの子どもが通う「学校」について考えたいと思います。教育に関しては専門家ではない私ですが、かかりつけ医として「不登校」等のお子さんと接することがあるので、教育と医療の連携を痛感させられることが多々あります。著者の工藤先生は「定期テスト廃止」「宿題廃止」「クラス担任制廃止」など、数々の大胆な改革を行い、生徒・教員・保護者までもが主体性を発揮し、生き生きとした教育活動を展開しています。

 

宿題廃止!

 全国ほとんどの学校で宿題を出すのが当たり前だと思っています。一般的に宿題の意義は「子どもの学力を高めること」「学習習慣をつけること」であると言われています。工藤先生は学力を高めていくには、自分が「分からない」問題を「分かる」ようにするプロセスが大切で、宿題を出すのであれば「分からないところをやっておいで」が大切であると言っています。

漢字の書き取りテストで間違えたところを1文字につき20回書くことが宿題となれば、「へん」だけを先に20回、その後に「つくり」を20回埋めていく「作業」をする人もいて、その時に「作業」を淡々とこなす際の脳はほぼ思考停止状態になっているそうです。この時「やらされている」気持ちだけになり、早く終わればいいとしか思っていないようです。これで学力を高めることができているかは疑問です。学習は「できない」問題を「できる」ようにするプロセスでないと意味がないようです。こういった考え方から日頃の宿題も夏休みの宿題も廃止したそうです。宿題を全廃したことで最も喜んだのは受験を控えた中3の生徒たちで、自分にとって重要ではない非効率な作業から解放されたからだそうです。

子どもの中には朝から夕方まで学校で活動し、帰宅後宿題に追われてしまい、疲れ果てている子も少なからず見受けられます。宿題に時間がかかる場合は担任の先生と相談し少なくしてもらう工夫も大切ではないかと思います。

 

学校は何のためにあるのか

 工藤先生は「学校は子どもたちが社会の中でよりよく生きていけるようになるために学ぶ場所である」と本の中で何度も書いてありました。「自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する」つまり「自律」する力を身に付けさせていくことだと言っています。大人が先回りをして、手を掛けすぎて育てられた子どもの多くは自律できず、自分で解決できない場合は他人のせいにしがちになるそうです。本来の学びとは、自分で分からなければ調べたり考えたり、それでも分からなければ聞くことが大切です。社会に出れば、物事を解決するときには対話→発信→受け取る→合意形成を行うことと同じだと述べています。

 日々の子育てではなるべく失敗しないようにと親は手を出しがちで、学校ではお子さんのテストの点数がよければいいと思いがちですが、「自律する」ということにもっと目を向けないといけないことに私自身も気づかされました。

 現場で働く教師の方々もこれらのことを理解しているものの、前例主義の前ではやれることも限られているのかもしれません。工藤先生は学校を良くするには校長や教員だけでなく、保護者も地域住民も「学校を良くするために、自分たちは何ができるか」という視点を持つ必要があると述べています。つまり、私たち保護者もお願いするだけではなく、共に連携することが大切であることを気づかされました。

 

2学期を前に

 楽しかった夏休み明けは特に園や学校へ行くことにすぐに慣れずに、頭痛や腹痛を訴えるお子さんがいます。私のクリニックにも相談に来ます。「なまけ癖がつくと困る」等と言ってお子さんを無理やり学校に行かせないでください。子どもは学校に行きたいという気持ちはあるものの、行けない状況になっているのだと理解して下さい。子どもの話をしっかりと聞き、遠慮せずに担任の先生や校長先生に相談をしてみて下さい。それでも難しければ、医療機関に相談をしてください。決して親子だけで悩まないでください。サポートしてくれる人は必ずいます。

 

参考文献

学校の「当たり前」をやめた。時事通信社 工藤勇一

 

 今年は例年になく、梅雨が長く続きました。本格的な夏が始まると熱中症の報道が多くなります。体調を崩さずに花火大会・海や山へ出かける夏を楽しんでくださいね。うちは例年通り花火大会の予定を立てて、合わせて大学生の息子たちが帰ってくるので家で出迎えたいと思っています。

ところで『ヘアードネーション』って言葉知っていますか?小児がんや先天性の脱毛、不慮の事故などで頭髪を失った子どもたちのために、寄付された髪の毛でウィッグ(かつら)を作り無償で提供する活動で、いくつか活動している団体があります。実はうちの妻が最近この活動をしていて、2回目の寄附をしました。31㎝以上の髪の寄附で、フルウイッグができるのですが、15㎝以上でも髪の毛付インナーキャップウイッグが作成できるということで受付している団体もあります。うちの長女も昨年度協力しています。子ども用のウィッグは高価(30~50万円)であるため家計の負担がかかります。こうした試みが広がってくることを期待します。

 先月、昭和大学小児科教授池田裕一先生の講演会でトイレトレーニングについて専門家からのお話を聞いてきましたので皆様にお届けします。

 

始める時期は?

 トイレトレーニングを開始する時期は一般的には2~3歳がお勧めです。2歳前に開始すると、体に無理な負担をかける可能性があり、おむつ外れが遅くなることがあります。腎臓で作られたおしっこが膀胱にたまると、その信号が脊髄を通って大脳に伝えられ、尿意を感じます。大脳がおしっこをためるか出すかの判断をして、出すとなれば大脳から膀胱に指令が伝わり膀胱を収縮させて出し、大脳がおしっこを我慢するという信号を送れば、尿道をキュッと締めておしっこを我慢します。おしっこを出したり我慢したりができるようになるためには、大脳機能が発達してくる2歳くらいまで待つ必要があります。年齢だけでなく「おしっこの間隔が2時間空くこと」も指標になります。周囲の人の意見に惑わされずに、お子さんの発達を確認しながら始める時期を決めることが大切です。

 

トイレトレーニングのポイント

まずは、絵本や親が実際している所をみせて、お子さんにトイレの使い方をみてもらいましょう。次にお子さんをトイレに誘って便座に座って体験してみます。トイレでいきなりは難しければ、おまるや補助便座で座れるといいです。すんなりとできればいいですが、いろいろと問題がおこります。1度できてもまたできなくなることもあります。気長に対応し決して怒らず、ほめてあげてください。少しでもできたらほめるということは今後の子育てにも役立てることができます。トイレの狭い空間や流れる水の音、水自体をいやがる場合もあるので、トイレでできないようなら、居間におまるを置いて使用してみるのもよいでしょう。ある程度、成功することができたら、昼間はパンツに履き替えていきましょう。

下の子の誕生等、環境が変わると、進んでいたトイレトレーニングがうまく行かないことがあります。そういった場合はしばらく休ませてあげることも大切です。周りのお子さんとの比較をしがちですが、個人差がありますのであせりは禁物です。ただし、4歳すぎてもトイレトレーニング完了しない場合は尿路感染症、過活動性膀胱(おしっこを我慢できずトイレに行く前にもらしてしまう)などが原因のこともあるので、かかりつけの小児科医に相談をしてください。

 

夏休み明けの注意点!

 内閣府の調査では過去42年間の統計で9月1日が自殺者の一番多い日であることがわかっています。夏休みが明けて子どもたちは学校へ行くことへの不安が強くなり、中には学校が始まる2~3日前から頭痛、腹痛などを訴えるお子さんもいます。切り替えが苦手なお子さんの場合は特に気をつけてください。お子さんの気持ちに寄り添いながら、集団登校で行くことが難しければ、子どもと一緒に校門まで行ってもいいし、少し遅れていくのもいいし、不安が強ければ休ませてもいいよと伝える懐の広さを持つことで、子どもたちは安心します。子どもたちは親の期待に添いたいし、学校へ行かなければいけない、勉強しなければいけないということは充分にわかっています。昨今の引きこもりのニュースを多々耳にすることで、このまま怠け癖がついてしまうのでは・・と親が不安になり、何とか学校に送り出そうとすると、問題が長引くことがあります。まずは子どもの不安を理解しようと対応することが大切で、その思いは必ず子どもに届きます。

 

参考文献

「おしっこトラブルどっとこむ」ホームページhttps://www.pee-trouble.com/

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