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院長コラム

スギ花粉がようやく落ち着き、つらい症状が治まり楽になった頃だと思います。まだ症状が残る方はヒノキの花粉が関係している可能性があります。私もスギ花粉症で数年前までは鼻づまりで就寝中に起きてしまうほどでした。その頃は毎日内服薬がかかせなかったのが、老化によって免疫能が低下したおかげで症状が楽になっています。その面を考えると年をとるのも悪くないなと思います。

ところで皆さん新生活には慣れましたか?うちは大学生が新たに1人加わり2人、経済的な負担がのしかかってきました。子どもたちから大学生活の楽しい話を聞きながら夫婦でこれまでと違った視点で子どもの成長を感じています。

 昨年、ブラジルを中心にジカウイルス感染症患者が多く報告されました。この病気は蚊に刺されることにより発症する病気で、妊婦さんが感染した場合、胎児が小頭症になる恐れがあり、世界保健機関(WHO)でから妊婦さんの流行地域への渡航を控えるように勧告が出されました。今年はブラジルでオリンピックが開催されるため出かける予定がある方は気をつけていただきたいです。今月は蚊に刺されることで感染する病気(蚊媒介感染症)についてお話します。

 

蚊媒介感染症って?

 蚊媒介感染症とは蚊に刺されることによって感染する病気のことで、日本脳炎・デング熱・ジカウイルス感染症・マラリア・ウエストナイル熱・チクングニア熱などが挙げられます。日本では日本脳炎のみ流行地域で、他の病気は亜熱帯・熱帯が流行地域です。ただ、2年前の夏に国内でデング熱の発生が160例ありました。予防は蚊に刺されないように、長袖・長ズボンの着用や蚊の忌避剤(虫よけスプレー)などを使用します。症状は主に熱・関節痛・発疹がみられます。特効薬はなく、マラリアのみ予防内服薬があります。流行地域から帰った後に熱や発疹などがみられた場合は、「帰国後であること」をしっかりと伝えることも大切です。

 

日本脳炎は予防接種で予防!

 蚊媒介感染症の中で日本脳炎だけは予防接種があり、接種することで病気を予防できます。日本脳炎はウイルスに感染したブタの血を吸った蚊を通じて人間に感染します。100~1000人に1人が脳炎を発症し発症者のうち20~40%が死亡、生存者の半数は神経系の後遺症を残します。東アジア・南アジアにかけて広く分布し、現在でも世界的には年間3~4万人の日本脳炎患者の報告があります。1960年代は、国内で年間1000人以上が発症していましたが、予防接種の普及により92年以降は年間10人未満に激減しました。

 

日本小児科学会より「日本脳炎ワクチンは生後6か月から推奨!」

昨年、千葉県で生後11か月のお子さんが1人、日本脳炎にかかりました。このため、通常3歳になったら接種を勧めてきましたが、今年2月、日本小児科学会から「日本脳炎罹患リスクの高い者は生後6か月から接種を推奨」という報告がありました。国内のブタの日本脳炎抗体保有状況をみますと、千葉県と同じく山梨県は80%以上と高い地域に属していて、日本脳炎罹患リスクが高い地域と考えられます。そのため私のクリニックでも今月から生後6か月からの接種をお勧めする予定です。今秋からはB型肝炎ワクチンの定期接種も始まり、0歳代でのワクチン回数が増えますが、同時接種を上手に利用し、ワクチンで予防できる病気は予防していただくことが大事です。また、生後6か月から接種しても抗体価の獲得に3歳と比べて問題がないことがわかっていますので安心して接種してください。

 

お子さんと同じ部屋で寝ていますか?

私のクリニックでは生後2か月時に初めて予防接種に来院した時に、おうちでの様子を聞かせてもらい、子育てのアドバイスをさせていただいています。その項目の中でお子さんがどなたと一緒に寝ているかを聞いています。多くはパパとママとお子さんが一緒に寝ています。一部、パパは別の部屋で寝ていることがあり、理由を聞くと「次の日の仕事に差し支えがあり、別で寝てもらっている」「部屋が狭いので別です」などと様々な答えが返ってきます。子育ては6歳までが一番大変です。その大変さは夜も同じでママと一緒にパパも悪戦苦闘することで夫婦の気持ちが離れません。いつも同じ気持ちでいてもらいたいです。

 

参考文献

日本小児科学会ホームページ https://www.jpeds.or.jp/

暖かくなってきて、ようやく春がやってきました。皆さんの新生活は順調ですか?ペースがつかめないかもしれませんが、ゆっくり調整していきましょう。先月は「保育園落ちた日本死ね!」が大きな話題になり、反響は大きく安倍総理大臣の耳まで届きました。県内では都会までの深刻さはありませんが、希望する園に入れなかったり、年齢によっては断られるケースも耳にします。保育園待機児童の解決策は保育園(もしくは園児の受け入れ人数)を増やすしかありません。共働きが当たり前の時代、子どもの数だけ保育園を用意してもらえれば問題がなくなります。小学校に入るときは枠があり全員入学できます。学校と同じように保育園入園を希望する人には全員入れるようにしてもらいたいです。そうすれば、働きたいと希望する母が働くことができ税金を払うこともできます。園児の受け入れ人数をもっともっと増やすことが今、緊急に求められています。合わせて深刻な保育士不足の解消のためにも、保育士の待遇改善が急務となっています。保育士がいなければ園児の受け入れは増やすことができません。保育士という仕事の重要性を国全体で改めて認識すべき時期にきていると感じています。

 今月は昨秋、母乳研究の第一人者である昭和大学小児科水野克己先生の講演を聞いてきましたのでみなさんにお伝えします。

 

母乳バンクって?

 日本の新生児死亡率は世界で一番低く、トップレベルの医療体制が整備されています。早産のお子さんが生まれてすぐに母乳を飲んでもらうことで病気の予防ができます。母乳には粉ミルクに入っていない免疫(病気を守る)が入っていて、特に初めての母乳(初乳)には栄養や免疫がたっぷり入っています。その母乳をどんなお子さんにも恩恵が受けられるように届けるためにどうしたらよいのか欧米などの取り組みを参考に考えられてきました。

特に早産児は体重が少ないため、正常児と比べて予備能力がありません。出生後間もない時期に早産児がかかると恐い病気に「壊死性腸炎」という病気があります。これは腸への血液の流れが障害され、細菌感染をおこし腸が壊死する病気です。この病気を予防するために出生後早期に母乳を与えるとよいことがわかっています。壊死性腸炎の予防だけでなく、点滴期間の減少・長期的には生活習慣病の減少・認定能力の上昇にも寄与します。対象者は早産児以外に腹部手術後、ミルクアレルギーなどにも有用です。母親が病気で母乳を与えられなかったり、充分に母乳がでなかったりする時、善意で提供された母乳を殺菌処理して保存した後、必要とする赤ちゃんに提供するシステムが「母乳バンク」です。

 

母乳バンクのしくみ

 日本の母乳バンクは昭和大学江東豊洲病院で行われています。提供者はまず担当医から母乳バンクの説明を受けます。輸血歴がない・ピアスをしていない・たばこを使用していない等を確認し、血液検査を受け感染症がないことを確かめます。母乳提供で金銭をもらうと、人工乳を入れたり水で薄めたりすることが考慮されるため、提供者はボランティアで行なわれています。提供された母乳は院内で低温殺菌処理後、冷凍保存し細菌検査が行われます。このようなしくみで提供された母乳は感染や細菌から守られています。

 

インターネットでの母乳売買に注意!

 昨夏、インターネットで母乳を売買しているという報道がありました。第三者の母乳は持病や保管方法などがわからず、母乳だけではない粉ミルクや化学物質などが混入がみられたりしました。また細菌の混入から繁殖の可能性、さらにHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)のウイルスが入り込むと病気が発症する可能性もあります。絶対に購入しないでください。

 

全国に広げよう!

アメリカでは100年前に母乳バンクは誕生しており、欧米を中心に世界各地で運用されています。世界の周産期医療において母乳の大切さが強調され母乳バンクの必要性が高まっています。日本ではようやく3年前から始まりましたが、現在、1か所のみの実施にすぎません。厚生労働省研究班が2年前、全国の新生児集中治療室の医師に行った調査によると、7割以上で母乳バンクが必要であると回答しています。オーストラリアでは最近母乳バンクが誕生し壊死性腸炎の発症が減っているデーターが出ています。皆さんに知っていただくことで、全国に普及することを願っています。

 

先月「育休」についてお話しした矢先、育休宣言をした衆議院議員がまさかの不倫疑惑報道での辞職。多くの方が呆れ果てたのではないでしょうか。妻である金子議員の精神面が心配されます。出産後の女性はホルモンバランスの変化などにより「産後うつ」など精神的に不安定になる傾向にあります。生まれてきた子どもには罪がないので、健やかに育っていって欲しいと願っています。

さて今月はうちのクリニックで始まる重症心身障がい児日中一時預かり施設についてお話します。

 

始めるきっかけ

 ちびっこぷれすの広告をきっかけに依頼があり、1年前から子どもの訪問診療を始めました。月に2回車で訪問しています。そのお子さんは自分で呼吸ができず、口から食べることができないため、人工呼吸器で呼吸を助け、流動食をチューブで胃瘻から胃に入れています。さらに数時間ごとの体位変換も行なっています。特に入浴介助などは家族のみでは難しいため、訪問看護・訪問介護・訪問リハビリを利用しながら生活しています。私は自宅に訪問しお子さんの診察・機器を確認、そして母親から様子を聞き1時間程でクリニックへ戻ります。両親・家族がやらなければならないことは多く、お子さんから離れられず24時間見守っています。近くで見ていて、私だったら長く続けることはできないし倒れてしまうと感じるほどです。幸い、病院で月に数日間、預かってもらってレスパイト(家族の休息)できるのですが、それだけでは家族の負担はまだまだ多いのが現状です。

 昨秋、レスパイト事業で全国的に注目されている能見台クリニック(横浜市)に見学に行ってきました。そこでは訪問診療は行なっておらず、ケアが必要な重度のお子さんを看護師や介護士・保育士などの多職種で昼間預かる施設でした。訪問に行くよりも昼間クリニックでお預かりした方がより家族のレスパイトに繋がるのではないかと考えるようになりました。一方で、家族は24時間介護する生活が普通になっていることから、自分たちの休息のためにレスパイトを利用するということよりも、日々在宅で生活している子どもに、家の外で子どもらしい経験を少しでもさせてあげたいという親としての思いが強いようです。しかし、一方で家族が一人でも体調を崩すことで、今の生活が成り立たなくなるという不安も常に抱えています。

子どもにとってもひな祭りやクリスマスなど様々なイベントや、部屋の外で家族以外と連れ会う時間を確保し、家族にとっても子どもの介護のみに縛られない自分の時間を持ち、大切なお子さんとの時間で疲れ切ってしまうことがないような重度心身障がい児を支える施設の必要性を痛感しました。

 

3月9日からスタート!

 レスパイト施設を開所するために、見学から帰ってきてから県の障害福祉課で協議を重ね、手続きが完了し実施できる見通しがたちました。こちらの1日でも早くスタートしたい思いが伝わり、県の担当者の方が献身的に進めていただけたことから協議開始から3か月半という早いスタートでした。県庁障害福祉課職員の皆さんからの期待や励ましは大きな力となりました。受け入れ場所はクリニックを改修し、看護師や隣接する保育所保育士が担当させていただきます。食事の面では、保育所の給食室で毎日手作り給食とおやつを、その子どもに合わせて(ミキサー食・きざみ食など)提供することができます。もちろん、子どもたちに人気のお楽しみ給食もあります。子どもが楽しみにするイベントが食の面でもサポートできたらと考えています。対象者は重症心身障がい児で人工呼吸器・痰の吸引・経管栄養などの「医療的ケア」が必要なお子さんとなります。詳細はげんき夢保育園(055-268-5577)までご連絡ください。重症心身障がい児がいるご家庭の苦労は計り知れません。少しでもお手伝いができれば幸いです。どんなお子さんでも安心して過ごせる社会になれるように願っています。また合わせて、看護職・保育職のスタッフも募集しています。興味関心がある方、ぜひ問い合わせください。

 

寄付のお願い

クリニックには受け入れスペースがないため、増築工事をしなければならず、それにかかる費用が約七百万円かかり悩みとなりました。能見台クリニックと同じような施設をひばりクリニック(宇都宮市)が行なっていて、そこで施設補助をクラウドファンディングという資金調達法で行なったことを知りました。今回、この場をお借りして施設補助の寄付をお願いできたらうれしく思います。ちびっこぷれすのフェイスブックでも周知していただき、既に多くのご協力をいただいております。アドレスは(http://readyfor.jp/projects/genkiyume21)となります。クラウドファンディングを通じての寄付は3月17日までとなります。どうぞよろしくお願いいたします。

暖冬が原因なのか、それとも3種から4種に変更されワクチンの効果が高いかはわかりませんが、例年と比較してインフルエンザの流行シーズンが遅れています。今シーズンは9年ぶりに年明けからの「流行入り」となりました。家族全員で手洗い・うがいを励行し予防しましょう。

先月、みなさんによいお知らせが2つあります。まず、重度心身障害児の窓口無料化が復活します。みなさんの署名を集め訴え続けていただいた「子どもの医療費窓口無料化を求める会」に感謝いたします。もう一つが県内の第2子以降の保育料が3歳まで無料となります。まだ市町村レベルでの調整が必要なようですが、山梨県における子育てしやすい環境が一つ一つ整っていると実感します。

昨年12月に自民党の宮崎謙介衆議院議員が同党で妻の金子恵美衆議院議員の出産で育児休暇の取得を表明し大騒動になっています。昨秋、発表された政府の基本方針の中に「あらゆる面で子育てに優しい社会へと改革を進める」と述べています。男性も育児休暇を気軽に取れないと女性が安心して出産もできず少子化が止まらないのではないかと思います。これをきっかけに男性の育児休暇取得率が上がることを切に願っています。今月は男性の育児休暇について私見も含めて述べます。

 

私も育休を取りました

 4年前、第5子出産時に3日間の育休を取りました。予定日10日を過ぎても生まれず、促進剤の使用に伴う妻の入院に合わせて出産前の3日間、クリニックを急遽休診にしました。予約の患者さんには断りの電話を入れ、快く了解していただき出産に集中することができました。その時に了解してくださった方、本当にありがとうございました。難産で第5子ながら初めての女児が誕生しました。女児が生まれた喜びとしっかりと育てる責任を感じました。出産に立ち会った経験は子育てのベースとなり、父親としての自覚が生まれ、子育てのスイッチが入るきっかけになります。そして、その後の子育てに効果的で、仕事を効率的に考え早く帰宅する思いを持つようになります。仕事は40年の長期間続きますが、立ち合い・育休は本当にわずかな期間にすぎません。

 

日本の男性育休取得率はほんのわずか

 男性育休取得率はアメリカが3割、スウェーデンが8割、日本は2.3%(2014年度)と非常に低い状況で、一方で日本女性の取得率は9割近くあります。欧米では家庭での役割を担っている男性社員ほど、労働者としての生産性も高いという調査結果がでており、育休の取得が進んでいます。日本では今までに文京区長、広島県知事、三重県知事が男性の育休取得をしています。日本生命保険相互会社は男性の育児取得率が100%を達成しました。期間は1週間程度で、休んで家事をしてみると、妻の苦労が具体的にわかり、早く家に帰ろうと思うようになったり、女性社員に対し共感性が高まったりと変化が生まれたそうです。この会社の育休取得はトップダウンでできました。育休が広がれば、パートナーシップや親子の絆が強化されると言われています。日本も首長や社長さんが男性に育休を強制していかないと広がらないと思います。育休を取らないと損をする政策を立案してほしいです。今回の男性衆議院議員の育休宣言はたいへん勇気のある行動で賞賛したいです。まず政治家や公務員がお手本になって取得率を自ら上げる努力をするべきです。女性の社会進出を促しておきながら、出産前後は女性にすべて押し付けるのはたいへんです。出産だけでなく仕事も子育ても夫婦が協働して行うとうまくいきます。

 

イクボスが普及のカギ

 イクボスとは、職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランスを考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司のことを言います。イクボスは部下から育休を相談されたら、「育休?男は仕事だろう?おまえは何を考えている?」ではなく「育休?心配しないでいいぞ。俺の仕事は君たちが働きやすい環境をつくることだから」、部下に子どもができたら「おめでとう!俺も経験したけど、奥さんが大変だから家庭を優先しろよ。」と言える方です。これからの会社は、子育てだけでなく介護の問題も出て、社員の多様な働き方に対応できないと優秀な人材が確保できなくなります。

育休取得を悩んでいる人は勇気を持って上司に相談をし、短期間でも経験してください。経験したあなたはいいパパになっています。私もそうでした。そしていつの日か部下が育休取得したいと申し出てきた時、「自分がフォローするから安心しろ!」と声をかけて欲しいと願っています。

 

参考文献

NPO法人ファザーリング・ジャパン ホームページhttp://fathering.jp/

できるリーダーはなぜメールが短いのか 青春出版社 安藤哲也

あけましておめでとうございます。ちびっこぷれすの連載も早10年が経ちました。今年も最新の子どもの医療情報についてお伝えできるよう努めていきたいと思っております。皆さんは今年どんな年にしたいですか?私は「健康」な一年にしたいと考えています。若い時はそんなに意識していなかったのですが、年々自分の健康について考えるようになったのがきっかけです。体とこころの両面が健康でなければ、仕事で患者さんにもよい対応ができません。健康を維持するための体力づくりとして数年前からランニングをしています。月に100kmを目標に健康を維持したいです。合わせてわがままな私を受け入れてくれる妻にも感謝しながら家族を大事にする良き1年にしたいと思います。

今月は診察時によく質問されるようになり、関心が高くなってきた「化血研の不正問題」について詳しくお話しします。先月、100ページ以上にも及ぶ第三者委員会の報告書が発表され、血液製剤の不正からワクチン、さらに人だけでなく動物用ワクチンまで化血研の製品に製造手順の不正が見つかりました。ここ数年で新しいワクチンが誕生し明るい話題が多かったのですが、今回のワクチン不正問題については残念だというよりも憤りを感じます。

 

不正の詳細

化学及血清療法研究所(化血研)は血液製剤やワクチンを製造している会社です。昨年6月に血液製剤で承認された製造方法と異なる製造をしていることがわかり、ワクチンにも不正が見つかりました。化血研のワクチンはインフルエンザ・4種混合・日本脳炎・B型肝炎・A型肝炎ワクチンを製造、国内でも大きなシェアがあり、今回の騒動でワクチン不足が全国的に起きています。

 第三者委員会の報告書によると、40年前から不正があり、国側の検査に備え、1995年からは虚偽の製造記録を作成するなどの隠蔽工作を重ねて、当時の製造部門の部長の指示のもと、組織的に進められていました。まず、2種類の製造記録を作成し実際の製造記録は明朝体で記録しました。一方、国の査察用はゴシック体にして区別していました。また、過去の製造記録を書き直す際には、筆跡の似た職員にサインをさせて古い書類に見せかけるため、紙を紫外線で焼くなど手の込んだ改ざんが行われていたそうです。記者が化血研の理事長になぜ不正を改善しなかったのかと問いただしたところ「改革をすると血液製剤の供給がストップするから」と述べていました。倫理観の欠如が甚だしく、おごりとしか言いようがありません。

 

4種混合ワクチンの安全性?

一番皆さんが不安なのは、化血研のワクチンの安全性だと思います。厚生労働省が精査したところ、4種混合ワクチンの製造方法に細かい所も含めて348か所の違いが見られました。製造過程に書かれていない抗凝固剤であるヘパリンナトリウムが添加されていたり、ワクチンの能力である力価を調べる方法が変更されていたなどの不備が見つかっています。4種混合ワクチンは他のメーカーと比較して化血研のワクチンだけに副反応が多いという結果はでていないこともあり、「品質および安全性などに重大な影響を及ぼす可能性は低い」という報告が出されています。1日でも早く「安全であること」を発表していただきたいと思います。今回の化血研の不正を知り、自分が医師としてできることは化血研のワクチンを使用しないことだと考えています。

東芝の不正会計処理、横浜市のマンションの傾きで明らかになった杭打ちデータ改ざん問題と偽装だらけでいやになりますが、偽装してもいつかは発覚し会社の存続に関わる大きな問題となります。膿を出し切り健全な会社に改めていただくことを期待します。40年前、3種混合ワクチンが一時中止したことで接種率が下がり、百日咳が流行してしまった苦い経験があります。予防接種をしないことで防げる病気にかかってしまうリスクがあることも考えていただき、今回の不正をきっかけに安易にワクチンをしないという考えにならないでほしいと願っています。

 

たばこ増税案

 2017年4月の消費税率10%への引き上げ時に軽減税率を導入するための代替財源をたばこ増税に一部充てる話がでています。禁煙の理由でたばこ代が高くなったからということをよく聞きます。先進国に比べてまだまだ安いと言われていますので、ぜひともこの機会に料金を引き上げて禁煙する人が多くなることを期待しています。

 

参考文献

第三者委員会報告書(化血研)

http://www.kaketsuken.or.jp/credibility00.html

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