平成24年8月号(Vol.88)
発達障害を知ろう!(2)
夏本番、海へ山へといろんな経験をお子さんと一緒に楽しんでください。うちは富士山に登ってきました。2年前は一番下(当時小2)が9合目で高山病にかかりギブアップしたため下山、今回はリベンジでした。一番下は自信がないため参加せず、上の子ども3人と私で登り始めました。悪天候の中、念願の登頂を果たしました。子どもが大きくなると一緒に何かを経験する時間がなかなかとれなくなります。今回はよい思い出となりました。
先月の続きで、発達障害の具体的な対処法や最終目標についてお話します。
診断はあくまで入口
子育ての中で育てづらさを感じている場合、発達障害であるかもしれません。気になる場合は親だけで悩むのは得策ではありません。落ち着きがない・自分の世界に入ってしまう・友達と遊べないなどがある場合は勇気を出して専門機関へ相談することが大切です。発達障害を見過ごしていると、小学校に入ってきて、本来の症状に加えて、学業不振や不登校、ひきこもりなどの二次障害が起きやすくなると言われています。早めに対応することはお子さんの自己肯定感を低くしないためにも大切なことです。
診断がついたら終わりではなく、障害の特性を理解することで、子育てがしやすくなりますし、無用な叱り方も避けることができます。診断は医師が行いますが、医師だけに頼るだけでは十分とは言えず、園・学校、家族、周囲の方々に理解してもらいながら子どもとかかわっていくことが大切だと思います。
具体的な対処法
発達障害のお子さんの特性を知っていると対応がスムーズにできます。代表的な事柄について2つ紹介します。
一つ目は耳から入る情報が、聞こえるが頭に入っていきにくいという特性があります。遠くから大声で話しても伝わりづらいです。目からの情報も合わせると理解しやすいので、写真・文字・絵を併用すると伝わりやすくなります。
二つ目は子どもへの声かけです。例えばお子さんに座っていてほしいとき、命令形の「座っていなさい!」や禁止形の「すわっていないと駄目!」ではなく、希望形の「座っているとうれしいな~♡」という表現がお勧めです。命令形や禁止形で言うとその後ほめづらいのですが、希望形なら、うまくいった時にセットでほめることができます。「~してくれるとうれしいな~♡」の希望形をどんどん使って対応しましょう。
最終目標
平岩先生は最終目標を「自分に自身がもて上を向いて生きていくこと」、「社会で生きていけるようになること」の2点だと言っています。
「自分に自身がもて上を向いて生きていく」には自己肯定感・自尊心を高めることが大事で、自分はよいやつだと思えるように、うまくいった経験つまり成功体験を積み重ねる必要があります。どんな小さなことでも、ほめてあげることが大事です。何かができたらほめてあげること、大人からすればたいしたことではなくても、子どもにとってはほめられることで自信がつきますし、親から愛されていることを実感します。その結果として自分自身が好きになります。座っていられたことをほめたり、おとなしく話を聞いていられたことをほめてください。ほめて育てることがコツです。もちろんですが、体罰は厳禁です。
「社会で生きていけるようになる」にはあいさつをする・ルールを守るなどの基本的な社会生活習慣を身につけて、さらに自分で稼げるようにしなければなりません。職業も本人の特性を理解しながら、その特性を武器に活かせるような職業を選択することをお勧めします。例えば、注意欠陥多動性障害(ADHD)の場合は、特性として疲れを知らず、動き回るパワーがあります。授業中に動き回るとクラスメートに迷惑をかけますが、職業としてはセールスマンや営業などが向いています。
発達障害を取り巻く環境はまだまだ十分に整備されているとは言えず、無理解による誤解も起こります。ママだけでなくパパも一緒に対応しましょう。そして、あせらず、がんばりすぎず、あきらめずに対応することが大事です。
以上の話は決して発達障害のお子さんだけでなく、すべてのお子さんに当てはまります。私も自戒しながら子育てに役立てています。
参考文献
小児科臨床「最近注目されている発達障害」vol61,2008
発達障害 子どもを診る医師に知っておいてほしいこと 平岩幹男 金原出版
幼稚園・保育園での発達障害の考え方と対応 平岩幹男 少年写真新聞社