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院長コラム

「引き出しの中のラブレター」という映画をご存知ですか?昨年10月に映画館で上映されました。先日観る機会があり、感動しました。いつもいる夫婦でもなかなか言い出せないでいる気持ちを手紙で伝えると、お互いに今まで以上にいい関係になるという心に残る話でした。記念日に手紙で気持ちを伝えてみるというのもいいなと思いました。ぜひ一度ご覧ください。

さて、1年前にインフルエンザ菌ワクチン(ヒブワクチン)、2か月前から子宮頸がんワクチン(サーバリックス)が使用できるようになりました。今月末には、新しいワクチンである「肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー)」が使用できる予定です。とてもいいニュースで、ぜひお勧めしたいワクチンです。今月はこのワクチンについてお話します。

 

肺炎球菌感染症とは

肺炎球菌にかかると、菌血症、髄膜炎、細菌性肺炎、中耳炎になります。これらの病気にかかり、まれには亡くなったり、脳障害、聴覚障害、てんかんなどの障害が残ることもあります。肺炎・気管支炎・中耳炎の原因菌は肺炎球菌とインフルエンザ菌が多くを占めています。しかし最近、抗生剤が効かない「耐性菌」が高頻度にでてきて、治療に難航するケースがでてきています。時代が治療から予防に大きくシフトし始めました。

 

ワクチンの効果      

2000年から肺炎球菌結合型ワクチンを始めたアメリカでは、始まる前と後で髄膜炎、菌血症の発症が94%減少1、急性中耳炎も34 %減少し、強い予防効果が認められています。ヒブワクチンと一緒に行うことで感染症を大幅に減らす効果が期待されています。

 
 

標準的なスケジュール


接種時期は、生後3か月から行う3種混合(DPT)ワクチンと同時に行うことができ、回数は3種混合と同じで最初3回続けて1年後に1回の追加接種をします。安全性は接種部位の発赤・腫脹が認められますが、頻度は他のワクチンと差がなく安全であります。ただし、自己負担がかかり、1回1万円前後になります。また、プレベナーはヒブワクチンと違って供給は安定しているので、希望すればすぐに接種できそうです。2月末には発売される予定ですので、その時期にかかりつけ医に相談して下さい。

 

定期接種化を!

ヒブワクチン、サーバリックス、プレベナーのワクチンは世界の多くの国で定期接種になっていますが、これらのワクチンは日本ではまだ任意接種で自己負担です。政府は「子ども手当」を新設し子どもに予算をかけるようになりましたが、これらのワクチンの定期接種化(自己負担ゼロ)を望みます。みなさんも声を上げましょう。
 
 

今後でてくるワクチンを紹介


 世界では使用されているのに日本ではまだ使用できないワクチンに「不活化ポリオワクチン」と「ロタウイルスワクチン」があります。ポリオワクチンは、日本で生ワクチンを使用していますが、これは数百万回に1回起こる麻痺があると言われ、ポリオを飲んだお子さんのお父さんが麻痺になってしまったというケースがありました。不活化にすると麻痺の副反応はないので、世界的な流れは「不活化ポリオワクチン」へとなっています。もう一つ、ロタウイルスは毎年冬に流行し嘔吐や下痢がおこり、重症胃腸炎の主な原因ウイルスと言われています。このウイルスに対するワクチン「ロタウイルスワクチン」が2006年発売され、世界100カ国以上で使用されていますが、日本はまだ使用が認められていません。早く使用できることを願っています。

 
 

参考文献

チャイルドヘルス vol.13 No.4

 

シリーズ~新型インフルエンザ4~


少し減りかけているインフルエンザですが、まだまだ猛威をふるっています。安心は禁物です。今シーズンはまだ季節型インフルエンザがでていません。世界的にみても、季節型の発生がほとんどなく、新型のみです。原因はわかってなく、謎のままです。また、新型インフルエンザワクチンを接種した方は新型インフルエンザにかからないわけではないのですが、症状が軽くでる場合もあります。高熱も出ないで治まる方もいます。ワクチン接種した場合は症状が軽くなることもありますので、熱がでたときは医療機関に受診し相談してください。

新年あけましておめでとうございます。昨年、40歳になった私は節目の年になりました。4月にクリニックを移転し、同月、保育園が開園、9月からは病児保育も始まりました。新型インフルエンザへの対応も重なって非常に慌しい年でした。今年はクリニック・保育園・病児保育を軌道に乗せ、より一層地域に根ざした活動をしていきたいと思っています。  今年もどうぞよろしくお願いします。

 

自尊心って何?

 最近、「自尊心(self-esteem)」という言葉を意識するようになりました。きっかけは2年前の平岩幹男先生の講演会です。平岩先生は小児科医であり、自閉症や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの発達障害の治療・研究についての第一人者と言われています。その講演会の中で、発達障害のお子さんにはself-esteemつまり自尊心を高めることがとても大切であることを知りました。このことは発達障害のお子さんに限ったことではなく、すべての子どもにあてはまることだと感じました。

自尊心を辞書で調べると自尊感情とも言い、自己の存在や在り様を尊重する(大切に思う)感情のことと書いてあります。自尊心は人格形成や情緒の安定のために重要です。自尊心が低くなると自分自身を信用できず、自身の能力すら懐疑的になり、何もすることができなくなります。時に依存症や摂食障害などになることもあります。

 

自尊心を高めるには?

 子どもの自尊心を高めるにはどうしたらよいでしょうか?具体的には、どんな小さなことでも「ほめてあげる」ことです。何かができたらほめてあげること、大人からすればたいしたことではなくても、子どもにとってはほめられることで自信がつきますし、親から愛されていることを実感します。その結果として自分自身が好きになることが大切です。反対にできたことをほめず、もっともっとと要求ばかりしていると、子どもは「私はだめだ。だめな人間なんだ。」などと思ってしまい、自分が好きになれず自尊心が高くなりません。できたことを確認し、ほめてください。但し、ほめてばかりいて過ごせればいいのですが、子どもは何かと悪いことをしたりします。悪いことをしたときは、手をあげずに、言葉でしっかりとしかってください。しかるのはパパが得意としている分野です。パパが主にしかる役でいると家庭もうまく機能します。ママがフォロー役になるのです。我が家も母親が何度言っても聞かない時には、私がしかると子どもは聞きビシッと引き締まります。

 

自尊心を高めることが先、勉強は後

子育てで一番大切なことは「自尊心を高めること」と言っても過言ではありません。親は自分の過去の反省から、早めに子どもに教育をしたくなります。幼児期に英語などのおけいこ、学童期には塾へ通う方も多いと思います。おけいこや塾を批判しているわけではありませんが、成人になるまでの20年という長い目で、ゆっくりと自尊心を高めながら、勉強に取り組める環境を整えていくことが大切だと考えます。自尊心が低いままですと、自分自身が不安定になり落ち着いて勉強を続けていくことができません。新しい環境・新しい勉強への意欲は、自尊心が高いからこそ湧き出てくるものだと思います。そんな子どもになってもらいたいとどの親も考えていることでしょう。私自身も時に反省しながら、子どもたちの自尊心を高めるためにと心がけています。

 

シリーズ~新型インフルエンザ3~

うちの子も4人中3人、新型インフルエンザにかかってしまいました。一番下の子は兄がかかり1週間、本人がかかり1週間、学級閉鎖で1週間、計3週間学校を休みました。新型インフルエンザにかかって軽い症状で終わってしまう方も多いですが、症状が重くなる場合もありますので、くれぐれもかかりたいなどとは思わないでください。新型インフルエンザは従来の季節型と比べて、肺炎や気管支炎になる場合が多いと報告がありました。咳がひどくなる場合は注意が必要です。もう一つ、新型インフルエンザにかかってしまった人は、新型インフルエンザワクチンは必要ありませんので確認ください。

山梨県の小児科 げんきキッズクリニック 夜間診療・小児救急: 平成21年12月号(Vol.56)最新の食物アレルギーの治療

今年も残すところわずかになりました。新型インフルエンザによる学級閉鎖は今までになく多く、これから本格的なインフルエンザのシーズンに入り、今まで以上に混乱が予想されます。ご心配だと思いますが、冷静に対応してください。

10月に昭和町で開かれた「パパママ学級」で私の子育て経験についてや小児科医としてのアドバイスをしてきました。出産前のパパとママに話をすることは初めてで緊張しました。参加者に話を聞くと出産時の立会いを予定しているパパが半分程度しかいないことが少し残念でした。一生に1回しかないわが子の誕生の瞬間を夫婦で共有しない手はありません。立ち会いにはぜひ関わって、たいへんなママを支えてあげてください。ママの方で恥ずかしいなどの理由で立ち会いを拒む人もいるようですが、出産はパパの存在がたいへんありがたいものです。積極的に立ち会いをしてもらいましょう。うちの子は4人とも立ち合いましたよ。感動ものです。さて今月のテーマですが、10月末に秋田市で行われた日本アレルギー学会に参加しアレルギーの最新情報を学びましたので一部をご紹介します。

 

はじめに


アレルギーは2人に1人は診断を受けたことがある程、非常にポピュラーな病気になりました。ぜんそくは吸入ステロイドを中心とした治療法が広がり、アトピー性皮膚炎はステロイド軟膏の理解が浸透してきました。2つの病気は昔と比べコントロールが可能になってきました。一方で、食物アレルギーはぜんそくやアトピー性皮膚炎と比べると診断や治療法の難しさがあると言われています。そこで、食物アレルギーの基本と今トピックスとなっている「食べて治す経口減感作療法」についてお話します。
 
 

食物アレルギーの診断と治療

頻度が一番多いのは卵です。卵を食べて1時間以内に顔や体にブツブツがでてきた例はよくあります。食物アレルギーの頻度は乳児で10%あり、患者数は増加してきています。症状は発疹や下痢などがあり、血圧低下や意識がなくなったりするアナフィラキシーショックといった重い症状になることもあります。素人判断で必要以上に多くの食品を除去する場合もあり、医師の診断を受けることは大切です。
治療は除去が中心となります。ただ、漫然と除去をし続けることは成長期のお子さんにはつらいものがあります。食物アレルギーは多くの場合、年齢が進むにつれて食べられるようになってきますので、3~6ヶ月ごとに確認をする必要があります。確認には「特異IgE抗体」と「食物負荷試験」を組み合わせながら解除の時期を検討します。よく「特異IgE抗体」を調べますが、この結果の解釈は注意が必要です。陽性の場合、必ず除去しなければならないのではなく、参考程度となることを理解してください。最終的には医師の管理のもとで、実際食べて症状がでないかをみる「食物負荷試験」をしなければ解除の時期はわかりません。また、治療薬と考えられている「インタール」という内服薬があります。全国有数のアレルギー専門病院ではほとんど出す薬ではないので効果はないと考えてください。以上が「食物アレルギーの診療の手引き2008」(http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/05/02.html)にまとめてありますので参考にしていただけたら幸いです。
 
 

食べて治す~経口減感作療法~

食べて治すって本当なの?と驚いている人も多いと思います。私もこんな治療法があるんだと驚きました。食物アレルギーの患者さんの多くは、小学校入学までには原因食物を食べられるようになりますが、一部のお子さんはその時期を過ぎても避けなければなりません。小学校入学後も、少量食べてアナフィラキシーショックを起こす人もいます。そこで3年前から、一部のアレルギー専門病院で小学校入学後も食事制限されているお子さんに対して、「食べて治す、経口減感作療法」が始まりました。原因食物をある程度以上食べているとアレルギーが抑えられることがあり、この現象を経口減感作と言います。少量では症状がでるが、1年ほど毎日決められた量を食べ続けると、病気を克服することができる治療法です。この治療はまだまだ新しいものなので慎重に行っているのが現状です。また医師管理ももとに実施されている治療法です。個人では絶対に行わないでください。なお、10月17日に日本テレビ系列で放映されました。ご興味のある方は以下の動画(http://www.dai2ntv.jp/news/mesen/index.html)を参照ください。

楽しかった運動会が終わり、秋が深まってきました。最近、我が家ではUNOというカードゲームが流行っています。家族全員で勝ったり負けたり大騒ぎしながら楽しんでいます。  今月はお母さんと小学校高学年以上の女の子対象に、新聞などでも掲載され、まもなく接種が始まる「子宮頸がんのワクチン」についてお話します。「子宮頸がん」と聞いて、「高齢の病気?」と思っている方はいませんか。数年前、代理母で話題になったタレントの向井亜紀さんは妊娠途中で子宮頸がんとわかり、妊娠継続を断念し、子宮全摘出後に代理出産でお子さんを授った出来事は記憶に新しいことだと思います。

 

Q1.子宮頸がんはどんな病気ですか?

A.1子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、ヒトパピローマウイルスが原因です。

 子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんに分けられ、子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんです。20~30歳代の増加が問題になっており、日本では毎年1万5000人が罹患し、約2500人が亡くなっています。原因は他のがんとはまったく違って、ヒトパピローマというウイルスの感染によって起こります。ヒトパピローマウイルスは性交渉により感染し、多くの女性が一生に一度はかかるありふれたウイルスです。多くは一過性で自然に排除されますが、一部が持続感染をして、数年から十数年かけてがん化すると言われています。なお、性感染症や性病ととらえる方がいますが誤りです。

 

Q2. 子宮頸がんを予防できるワクチンって何ですか?

A2. 年内中にワクチンが接種できるようになります。

子宮頸がんはがんの中で唯一ワクチン接種により予防できる病気です。原因がヒトパピローマウイルスですので、このウイルスにかからないようにするワクチンを接種することで病気を予防できることになります。ワクチンは年内にも接種ができるようになり、予防効果が7~8割、性交渉前の10歳過ぎの女子に3回接種を予定しています。接種できる診療科としては、産婦人科はもちろん内科・小児科などが挙げられています。かかりつけの医療機関にぜひ相談してみてください。ただし、費用は3回接種で約4万円と高額になっています。高額ではすべての方に接種は難しく、ヒブワクチンと同様に早く公費負担で接種していただきたいと強く願っています。治療にはお金をかけるが予防にお金をかけない日本は先進国に比べて非常にお粗末です。もっともっとみんなで大きな声を上げていきましょう。

 

Q3. どうすればかからないで済みますか?

A3. ワクチン接種と定期的な検診が大事です。

がんが進行していると、出産が困難になる子宮全摘出になりますが、早めに発見できれば子宮頸部のみの切除だけの治療で妊娠も可能になります。病気の初めでは症状がまったくなく、病気が進行してきてはじめて自覚症状がでてくるので、7~8割の予防効果のあるワクチン接種とともに継続的な検診が重要になってきます。2006年の子宮がん検診は米国で82.6%・フランス74.9%に対し、日本は23.7%と非常に低い受診率です。初期ではほとんど自覚症状がないので、検診が大事であることがわかります。これからはじまるワクチンは100%発症を阻止できるのではないので、ワクチンをしてさらに定期的な検診がかかせません。検診は面倒だから恥ずかしいからと敬遠せず、ご自身の体のためにそして家族のためにも検診を受けましょう。

 

シリーズ~新型インフルエンザ2~

インフルエンザは冬に流行しますのでこれからが本番になってきます。冷静な対応が一番ですので落ち着いて行動してください。母乳で育てているお母さんがインフルエンザにかかり特効薬であるリレンザやタミフルを服用しても、母乳をやめる必要はありません。母乳は赤ちゃんを病気から守る免疫がたくさん入っているのでしっかりと飲ませてください。また、リレンザやタミフルの血中濃度はとても低く、赤ちゃんの腸管からの吸収もわずかのため、母乳を通しての赤ちゃんの影響はほどんとないと言われています。新型インフルエンザワクチンは11月から妊婦さん、ぜんそくなどの基礎疾患のある方から順次始まります。例年になく、希望者も多いと思われます。予防接種の予約はお早めに。

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