小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
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寒さが厳しくなってきましたね。寒いと家で過ごしがちになりますが、意識して外へ子どもを連れ出して体を動かしましょう。私は小2の子どもと冬休みの課題である凧を作り、外で凧揚げして楽しみました。簡易な凧だったのですが想像以上に空高く上がりました。
さて、この本格的な寒さと乾燥によりインフルエンザをはじめ、赤ちゃんがかかると重くなる細気管支炎(RSウイルス感染症)などが流行しています。手洗い・うがいで病気を予防しましょう。もう一つ、スギ花粉情報です。そろそろ花粉が飛び始めます。昨年は飛散量が例年より少なかったのですが、今年は昨夏の猛暑の影響で、昨年に比べて7~8倍以上の飛散量を予想しています。昨年より症状が悪化する可能性が高いため、例年花粉に悩まされている人はかかりつけ医に相談し、抗ヒスタミン剤を早めのうちに内服し始めることも予防につながります。今月は流行している「おたふくかぜ」についてお話します。
おたふくかぜは流行性耳下腺炎(ムンプス)とも言い、ムンプスウイルスに感染して、耳の下にある唾液腺が腫れる病気です。症状は唾液腺の腫れと痛み・発熱がみられます。唾液腺の腫れは両側のときもあれば、片側だけのこともあり、さらにあごの下の顎下腺や舌下腺が腫れるときもあります。感染経路は接触感染と飛沫感染です。潜伏期間が2~3週間と他の病気に比べて長く、通常1~2 週間でよくなります。
ムンプスウイルスに対しては特効薬がなく、抗生剤も効きません。治療法は、痛み止めなどの症状を緩和するお薬を使用します。起床時や食事後に痛みがでることが多くあります。すっぱいものやよくかまなくてはいけない食物を避けると痛みが減ります。園や学校へは腫れが治まり、かかりつけ医に治癒証明書を発行してもらってから行くようにしてください。
おたふくかぜにかかっている人と接触した直後にワクチンを接種しても病気を予防することができません。初めての集団生活となる入園前にはワクチン接種をして予防しましょう。
合併症で多いのが頭痛と嘔吐を繰り返す髄膜炎です。10人に1人の頻度で発生します。また、最近の調査で難聴が400~700人に1人あると言われています。ほとんどの例が片側の難聴で、治療法がないため生涯難聴が残ります。さらに頻度は低いですが、脳炎がおこることもあります。思春期以降では、男性で約20~30%に睾丸炎、女性では約7%に卵巣炎がおこります。中には子どもがおたふくかぜにかかっていないのでうつされたいと言う親がいますが、合併症のことを考えたらかからないことが得策です。
予防はワクチンを接種するしかありません。大人がかかると子どもと比べて症状が重くなるので、大人の方でかかってなければワクチンを接種してください。かかっているかはっきりわからないときは血液検査をして抗体を調べるとわかります。おたふくかぜワクチンは、任意接種となっており自費扱いです。しかし、日本以外のすべての先進国は定期接種になっていて自己負担はありません。日本も早く定期接種化され、おたふくかぜのない世の中になってもらいたいです。
おたふくかぜはムンプスウイルスに感染してかかる病気で1回だけしかかかりません。何度も耳の下が腫れる場合は、反復性耳下腺炎という病気が考えられます。反復性耳下腺炎はおたふくと同じような症状ですが、熱はあまりでないことが特徴です。ただし診察だけでは診断できないため、血液検査をしたりします。
国立感染症研究所 感染症情報センターホームページ:流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)2003年第35週号
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_35.html
インフルエンザが流行し始めました。今シーズンはまだ昨シーズンのような勢いはないようですが、油断は禁物です。咳がでてきて、高熱を伴い、ぐったりしてきたらインフルエンザを疑ってください。インフルエンザの特効薬は熱がでて48時間以内に服用がする必要があります。検査は熱がでて6時間以内では感度が悪いので6~12時間以上経ってから行います。ただ、検査のみに頼っていると診断を誤ることがあります。診察を受けていただき適切に対処していただくことが大事です。