小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
徐々に秋が深まり、もう冬が目の前です。先月、娘が通っているこども園の運動会がありました。リレーの競技や和太鼓を生き生きと楽しんでいました。いつも練習では負けていた競技が、本番では勝つことができ全身で喜びを表現していました。入念な準備をしていただいた園の先生方に感謝いたします。
さて、先日山梨県は後発薬(ジェネリック医薬品)の使用状況が全国で2番目に低いという結果(今年1月、67.5%)が報道されました。5~9歳では後発薬の使用率が54.4%と全国最低でした。後発薬の普及が進めば、医療費削減が見込めるため、国の財政状況を考えると、後発薬を推進していくことは大切なことだと思います。1人1人が気にすることで国民皆保険制度や子どもの医療費無料化を維持できるのではないかと思います。皆様のご協力をお願いいたします。
先月はスマホと上手に付き合っていくための話をしましたが、今月はゲームのやり過ぎにより日常生活に支障をきたす「ゲーム依存症(ゲーム障害)」についてお話します。
ゲーム依存症はスマホゲームのやり過ぎで日常生活に支障をきたす状態です。「ゲームのコントロールができない」「他の生活上の関心事や日常の活動よりもゲームを選ぶほど、ゲームを優先する」「問題が起きているが、ゲームを続ける、またはより多くゲームをする」「ゲーム行動パターンは重症で、個人、家族、社会、教育、職業やほかの重症な機能分野において著しい障害を引き越している」、この四項目が12か月以上続く場合に「ゲーム障害」と診断されます。来年5月には「ゲーム障害」は世界保健機関(WHO)による病気の世界的統一基準である国際疾病分類(ICD)の最新版に追加されることが正式決定されます。ゲーム愛好家がゲームに没頭している次元ではなく、病気として認識されるようになりました。最近の研究でゲーム依存者の脳の神経細胞が壊れているという報告がいくつも出ており、今後さらに研究が進むことで、より詳しくわかってくると思われます。
スマホの世帯保有率は2010年に10%ほどだったのが、2016年には70%を超えるに至り、私たちの生活に欠かせないものになっています。中でもスマホゲーム市場は2011年度480億円が、2017年度9600億円(予測値)と20倍に膨らんでいます。スマホはいつでもどこでも使用でき、ゲームは基本無料で手軽に始められます。昔の家庭用ゲーム機はひとつのソフトが終わればプレーも終了しましたが、スマホゲームは絶えずアップデートをすることで飽きさせず終わりがありません。厚生労働省の調査では、成人約421万人、中高生約52万人が依存の恐れがあると推計されています。
うちの息子(高1)はスマホを持たせていませんが、家のパソコンでTwitterをやっています。長時間にならないようにパソコンを居間にだけ置き、親が気にしています。食事中はテレビを消して家族の会話を楽しんでいます。
依存症の多くはインターネットにつながっている「オンラインゲーム」の使用が原因と言われています。スマホで何をしているかを気にして使用時間を制限することが大切です。「夜9時以降は家族全員スマホを使用しない」「食事の時間は使用せず、テレビも消して会話を楽しむ」「ジョギングやスイミングなどの運動を取り入れる」など家族全員でスマホの使用について共通して取り組むことが大切です。
現実生活が充実している人は依存症になりづらく、仕事や生活に関する悩みやトラブルがある場合には、現実逃避のためにゲームをすることも多くあります。ゲームをやめなさいと言うだけでは依存は防げず、現実生活に関する環境調整を行うことが大切です。現実生活に困っていることがないか本人から聞き、家族で一緒にスマホ時間を減らし、減らすことができたらほめるといいでしょう。
ただ、ゲーム依存症を家族だけで対応すると、甘えや反発により子どもから親が暴力ふるわれ、家族崩壊にもなるケースもあります。ゲーム依存症は本人の意思が弱いからではなく「病気」です。疑った場合、家族だけで対応せず医療機関(久里浜医療センターホームページ参照)で相談をすることをお勧めします。
スマホゲーム依存症 内外出版社 樋口進
文藝春秋 9月特別号 2018年9月10日