小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
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新型コロナウイルスの全国の感染状況をみると、8月上旬まで増加傾向だったのが減少傾向に転じている傾向があります(8月16日時点)。昨年は秋以降に減少してきたので、今年も同様の傾向になればありがたいと思っています。
我が家の夏恒例行事に一つに8月7日の「神明の花火大会」(市川三郷町)があります。仕事をいつもより早めに終えて現地へ赴き、約2万発の豪華な花火を堪能しました。花火大会終了後、帰宅中ゲリラ豪雨となりました。道路が川のような状態になり、生命の危険を感じ、近くのコンビニの駐車場に車を止め1時間ほど待機しました。いろんな意味で思い出深い花火大会となりました。
また先月はパリオリンピックの開催があり、多くの選手が活躍され、たくさんの感動を目にしました。その時期に重なっていた広島・長崎の原爆の日、終戦記念日の報道があまり報じられていないようで気になりました。終戦から79年が経ち、日本では平和憲法により他国と戦争をしておりません。平和の尊さ・決して戦争をしないために、私たちは歴史を学ぶことが大切ではないかと思います。
今月は痛みが軽減できるエムラパッチについてお伝えします。
先日、小3男子の採血時に痛みを軽減できる「エムラパッチ」を貼付したケースがありました。エムラパッチとは、針を刺す場所に外用局所麻酔剤のパッチを貼付後、採血・予防接種を行うと、針を刺すときの痛みが軽減する(私の印象としては痛みがない)効果があるものです。そのお子さんは日頃から診察時に「鼻の検査する?(コロナ抗原検査のこと)」とよく質問し、不安が強いタイプでしたので、採血する必要があり、痛みがあまりないパッチをお勧めしました。このパッチは、採血する1時間前に貼付するので、待機時間があることが難点ですが、1時間待つだけの効果が期待できます。私が「刺した時の痛みがなくなるから本当だから安心して」と言っても、注射前の本人の不安は強いものでした。注射した直後、本人から「本当に痛くない!」との発言があり、緊張がほぐれて笑顔に変わりました。付き添っていた母親も、子どもの様子をみて大変驚き、共に喜んでいただけました。
当院では以前から採血・予防接種時は子どもに事前に絵カードを見せながら看護師が説明しています。採血時も親は子どもから分離せず、親に抱いてもらったり、声をかけたりして、子どもへの痛みの軽減に努めてきました。
このパッチを利用すると、針を刺すときの痛みがほとんどないこともあり、スムーズにできます。不安が強い・痛みに弱いお子さんにはお勧めです。 今までは採血・予防接種は痛くて当たり前、「仕方がない」「我慢が大事」とされてきましたが、このパッチの利用で痛みが軽減できます。気になる点は、1時間前に貼付する必要があることと採血時は医療保険でカバーできますが、予防接種時は自費(1枚400円台)であることです。副作用は塗ったりした部位が赤くなる・青白くなる・かゆくなるなどがありますが、皮膚に対する重い副作用は認められていません。HPVワクチン・インフルエンザワクチン時に注射苦手な方は、このパッチの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
今まで痛みはその時だけの一瞬であり、この痛みが後々まで影響があるとは考えられていませんでした。しかし、痛みや恐怖の記憶が強いと、将来痛みに過敏になることがあるという研究結果が明らかになってきました。医療行為による痛みは「仕方がない」時代から医療従事者・子ども・保護者が協力して「痛みを減らす工夫」をすることで、子どもの苦痛を「やわらげられる」時代を迎えています。
お子さんは診察時、今から何をされるかわからないだけでも不安や恐怖を抱くと思います。年齢に応じた声かけを家から出る前に、「今日は採血があるけど、あなたのために必要なことなので、がんばろうね」「今日は予防接種があって、痛いけど、病気を守る体になり、病気にならないよ」「今日は痛いことはなくて診察だけだよ」など伝えてもらえると、お子さんも安心されると思います。
「悪いことしているから注射するよ」等と罰する意味での治療・診療に繋がるような声掛けはしないでいただきたいです。お子さん自身が積極的に治療・診療に向き合えるように協働してもらえたら小児科医として嬉しく思います。
エムラパッチ 佐藤製薬株式会社
https://www.medinfo-sato.com/emla-cream/use/emla-patch.html
ちっくん相談室
真夏がやってきました。熱中症に気をつけて夏を乗り切りましょう。
6月末、うちの娘の通う小学校で絵本の読み聞かせボランティア活動をしてきました。当日、娘から事前にくしゃみをしないこと・読み間違えをしないように言われ、プレッシャーを感じながら『このよでいちばんはやいのは』の絵本を選択し、何度か練習をして本番に挑みました。娘の教室に入ると全員が静かに待っていて、私の読み聞かせを真剣に聞いてくれました。照れくさそうに聞いているわが娘を垣間見ながら、とてもよい思い出となりました。
ところで、日々診察をしていると、父親が子どもを連れて受診に来ることがあります。その時には、「今日はお仕事休みですか?」と聞くようにしています。これまでは「今日は仕事休みです」、「仕事を抜け出しています。」と言う父親がほとんどでしたが、今春以降、同じ質問をすると、「育休で1か月取得中です」と言う父親が何人かいました。さらに大学病院で働いている医師である父も1か月育休していると聞き、時代の変化に驚きを隠せませんでした。働き方改革が実際に施行されていることを実感します。育休を取得した父が多くなることで、育休を取ることが当たり前になり、父親がもっと子育てに協力的になり、よりよい家庭が築かれることが期待されます。
7月の連休に全国病児保育協議会の研究大会が金沢市で開催され、医院・園スタッフ9名と共に学んできました。病児保育に関する勉強だけでなく、予防接種についての講義も聞きました。その中でHPVワクチンのキャッチアップ接種が来年の3月で公費負担が終了することが話題となっていましたので、今月はHPVワクチンについてお話します。
厚生労働省が2024年1~2月、HPVワクチン接種対象者等を対象に実施した意識調査では、HPVワクチンのキャッチアップ接種の対象者のうち53%がこの制度を「知らない」という結果がでました。対象者の約半分の方に情報提供されていない実態がわかりました。その対象者は1997年度~2006年度(平成9年度~平成19年度)生まれの女性です。対象者がいたら、ご本人に伝えていただけたらありがたいです。あなたがかかるかもしれない病気を予防するワクチンで、公費負担でお金もかかりません。
厚生労働省は1997年度~2006年度生まれの女性でHPVワクチン接種の機会を逃した方を対象に、公費負担でHPVワクチン接種する機会を設けており、この制度は来年3月末までとなっています。来年3月末までに3回接種を終える必要があり、接種は合計3回、完了するまでに約6か月間かかります。初回接種を9月末までに済ませてください。ちなみに予防効果の高い9価ワクチンは自費で計約10万円かかります。
子宮頸がんの95%以上はヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。感染経路は性的接触と考えられています。そして、そのうち一部の女性が子宮頸がんに発症し、数年から数十年かけて子宮頸がんに進行します。HPVワクチンはこのウイルスに対する免疫を高めることで、感染させないことで発症を防ぎます。
まず、9価のHPVワクチンは子宮頸がんを80~90%予防できます。HPVワクチンの副反応は日本小児科学会の「知っておきたい わくちん情報」によると、2価、4価HPVワクチンで医療機関から「重篤である」として届けられた副反応疑い例(有害事象)は10万接種あたり、それぞれ7.9、5.4と非常にまれなことがわかります。子宮頸がんは国内で毎年約1.1万人かかり、約2900人が亡くなっています。若い年齢層で発症する割合が比較的高いがんです。子宮頚がんの治療で子宮を失ってしまう(妊娠できなくなってしまう)人も、1年間に1000人います。
以上のことからも、重篤な副反応は非常にまれであり、ワクチンをしないことにより子宮がんに多くの方がかかっている現状を知っていただければ、接種勧奨の意味が理解できると思います。母親や家族から副反応が大丈夫かと強く言われ、接種を悩んでいる方も多いと思いますが、自分の体のことですので、ご自身で考えて決めていただくことが大切だと思います。
「HPVワクチンに関する調査」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001125941.pdf
HPVワクチン接種を逃した方に接種の機会をご提供します 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000918718.pdf
予防接種の副反応と有害事象 日本小児科学会
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_A-04hukuhannou_20240401.pdf
新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。昨年から猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、みんなが生活に不自由さを感じています。新型コロナウイルスのワクチンについて海外からの報道が期待されています。まだまだ終息が見えませんが、コロナの患者さんを診ている医療従事者の方々のためにも、無理をせず、私たち1人1人が配慮をしていきましょう。
寒くなり、家の中で過ごしがちになる冬は子育てをゲーム・メディアに頼りがちになりますが、子どもがメディア漬けにならないように、親が意識して子どもと関わることが必要です。うちは小2の娘にゲームの時間を1日15分と決めています。親としては子どもとトランプ・カルタをしたり、バトミントンをしたり家の手伝いも一緒にしながら、なるべくゲーム・メディアから遠ざけるように気をつけています。子どもは基本的にはゲーム・メディアよりも親との触れ合いを求めています。
今回、インフルエンザワクチン接種時にHPVワクチンについての質問がありました。積極的勧奨が中止となってすでに7年が経ち、経過を知らない方も多くいると思いますので、今月はHPVワクチンについて状況をお伝えいたします。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100以上の種類があります。子宮頸がん以外に中咽頭がん、肛門がん、腟がん、外陰がん、陰茎がんなどにも関わっていると考えられており、海外では感染予防のためにHPVワクチンをオーストラリアなどの24か国は男性にも公費負担が行われ、日本でも先月から男性の接種への適応拡大についても検討されています。
子宮頸がんは子宮の入り口付近にできるがんで、20~40代の女性を中心に毎年、約1.1万人が新たに診断され、年間約3,000人が亡くなっています。30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまう(妊娠できなくなってしまう)人も、毎年約1,200人います。性的な接触によってHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因と言われ、感染してもほとんどの人は自然に消えますが、一部の人でがんになってしまいます。
HPVワクチンは感染を防ぐことができ、将来の子宮頸がんを予防できることが期待できます。さらに、20歳をすぎたら2年に1度の子宮頸がん検診受診が大切です。
2013年4月から定期接種化され接種が始まりましたが、副反応とみられる症状が報告されました。同年6月に積極的勧奨が中止となっています。HPVワクチンのリスクは、接種後に接種部位の痛み・腫れ・赤みなどがあり、重い症状(重いアレルギー症状、神経系の症状)が1万人あたり5人とまれに起こりますが、その約9割は回復することがわかっています。国は重い症状が起こった場合に対応できる医療機関を全国に設置し、相談窓口も整備されました。
HPVワクチン効果は「子宮頸がんワクチンが、がんの原因となるHPVの感染を防ぐ」、「子宮頸がんワクチンは前がん病変を防ぐ」というデーターだけでしたが、2020年10月、スウェーデンの研究チームがアメリカの医学誌に世界で初めて「HPVワクチンを接種すると子宮頸がんになるリスクが5割低下すること」を発表しました。2006~2017年の間、10~30歳だった約167万人の女性を対象に4つのウイルスの型に有効なワクチン接種と子宮頸がんの発症との関係を調べました。その結果、17歳未満で接種した場合のリスクが88%減りました。
また、接種後に重い症状が報告されていましたが、2015年に行われた名古屋市の約3万人のアンケート調査では、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がありませんでした。
現在、WHO(世界保健機関)でも「HPVワクチンは極めて安全性が高い」とされ、世界80か国以上が定期接種化されています。日本産婦人科学会や多くの学術団体も積極的な勧奨再開への要望書を国に強く求めています。2020年10月からは厚生労働省より市町村へ対象者に個別通知を出すように通知が出されました。再開へ一歩ずつではありますが、前向きな動きが見られています。
現在でも、HPVワクチンは定期接種であるため、対象者(小学6年生から高校1年生の女子)は無料で接種できます。当院では接種をお勧めしていますが、年に数人の接種しかありません。今回、HPVワクチンについてまず、知っていただけたら幸いです。
厚生労働省ホームページ
日本産婦人科学会ホームページ
先月クリニックで、季節外れのインフルエンザ感染者が出て大変驚きました。幸い重くなる人は少なく安心しました。近くの園や小学校でもインフルエンザによる学級閉鎖等の報告がありました。また同時期に沖縄ではインフルエンザ警報が発表されたそうで、今後の発生状況に注意する必要があります。
先月、ここ数年恒例になったSSPE(亜急性硬化性全脳炎)という難病の親の会が主催するサマーキャンプに妻と娘と一緒に参加してきました。患者さんの父親から今年1月、お子さんが成人式に出席した話を聞きました。「この病気にかかり車いす生活となったことで、自分も付き添いで成人式に参加することができよかった。この病気にならなければ自分が参加することもなかった。」と何事にも前向きな父親からの話でした。このような両親に見守られているお子さんを本当に幸せだと感じ、今後もこの親の会を応援したいと思いました。
日頃このコラムでは子どものことを中心に書いていますが、今月は育児をする親に目を向けたいと思います。予防接種は以前に比べて、多くの種類が存在していて、そのほとんどは0歳~1歳のお子さんに接種しています。一方で昨年、大人の予防接種について推奨するホームページ(オトナのVPD)が開設されました。予防接種は子どもだけではなく、大人も大切なものです。
VPD(Vaccine Preventable Disease)とは「ワクチンで防げる病気」のことです。現在、多くのワクチンがありますが、接種すれば免疫が獲得され病気にかかりづらい体になります。VPDにかかっていない場合、子どもだけでなく、大人もワクチンを接種することが重要です。
オトナのVPDのホームぺージには「思春期・青年期(10~20代)」・「子育て世代」・「現役ミドル世代(40代~)」・「シニア世代(60代~)」と年齢別に4つ分かれています。自分の世代をクリックするとお勧めのワクチンが記載されています。読者の世代である「子育て世代」では麻しん・風しん・おたふくかぜ・水痘は大人でかかると重くなるので2回接種を勧めています。『妊婦さんにはインフルエンザワクチンをすることで、移行抗体で新生児の赤ちゃんを予防する効果があること』・『家族やパートナーがB型肝炎キャリアの場合は直ちにB型肝炎ワクチンを接種すること』・『子どもの時期に接種したワクチンの中で日本脳炎や破傷風は大人になると免疫が低下するため、日本脳炎流行地域に渡航する場合は追加接種をすること』・『破傷風は災害でのボランティア活動時は事前にワクチン接種をすること』が勧められています。
シニア世代には重症化しないようにインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチン・帯状疱疹後の神経痛はつらい症状が長く続くため水痘ワクチンを勧めています。
子育て世代と同様に麻しん・風しん・おたふくかぜ・水痘のワクチンを2回接種することだけでなく、性交渉などでB型肝炎が感染するのでB型肝炎ワクチン3回接種をお勧めしています。
さらに、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症を予防するHPV(子宮頸がん)ワクチンもお勧めです。子宮頸がんは性交渉によってHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染し、持続感染することでがん化するVPDです。日本での患者数は年間約1万人、20代後半から増加し40代以降は概ね横ばいになります。早期に発見されれば比較的治療しやすいといわれていますが、年間約3,000人が死亡しています。
HPVワクチンは6年前から小学6年生から高校1年生までを対象に定期接種となりました。その2か月後、接種後の慢性疼痛などの有害事象報告があり、一時的に積極的な勧奨接種が差し控えられています。しかし、一方で現在でも定期接種のワクチンとして原則無料で受けることができます。副反応出現時には定期接種として救済します。HPVワクチン接種後の慢性疼痛などの症状とワクチン接種には科学的な因果関係がないことが国内の研究でも明らかになっています。3年前に名古屋市が7万人以上を対象に大規模な疫学的研究(名古屋スタディ)を実施した結果、HPVワクチン接種後にワクチンとの関連が疑われた症状の発生頻度はワクチンを接種した人とワクチンを接種していない人の間で違いが認められませんでした。関連学会などが勧奨接種の再開を国に求めています。日本で認可されているHPVワクチンは2価(HPVウイルス2種類)と4価(HPVウイルス4種類)で7割の効果がありますが、現在、アメリカでは9価(HPVウイルス9種類)ワクチンに変わり、9割の効果があると言われています。日本でも早く勧奨接種が再開され、9価ワクチンになることを切望します。
「オトナのVPD」ホームページ http://otona.know-vpd.jp/
待ちに待った春到来。寒さに弱い私は本当にうれしいです。桜が咲く頃の花見が待ち遠しいです。うちの娘(5歳)は私がよく「真剣に」という言葉を使うのを聞いていたようで、私たちとトランプの神経衰弱をしたとき、娘が何枚も続けて取れたので「すごいね」とほめたら、娘は「だって真剣にやっているからね」と真剣に言っていました。私の口癖を真似したのだと夫婦で大笑いしました。娘は最初何で笑っているのかわからない様子でしたが、私たちの大笑いに続いて笑っていました。今月は入園前の準備の一つである予防接種についてお話したいと思います。
VPD(Vaccine Preventable Disease)とは「ワクチンで防げる病気」のことです。予防接種は現在、4種混合・BCG・麻疹風疹・ヒブ・肺炎球菌・水痘・B型肝炎・日本脳炎の8つが定期接種、ロタウイルス・おたふくかぜ・インフルエンザの3つが任意接種に分かれています。定期接種と任意接種どちらのワクチンも接種すれば、免疫が獲得され病気にかかりづらい体になります。ワクチンを接種して大切なお子さんを病気から守っていきましょう。
任意接種のワクチンは希望がある場合のみと思われがちですが、そんなことはありません。任意接種のワクチンも含めてすべてのワクチンをお勧めします。ロタウイルスワクチンを接種することで乳幼児がかかると重くなる胃腸炎が軽くなります。私の経験上、ロタウイルスワクチンが導入され、胃腸炎にかかっても症状が軽い場合が多く、入院や外来で点滴をするケースが導入前より大幅に減っています。
いろいろな事情で接種ができていない場合、かかりつけ医や市町村の保健師さんに相談をしましょう。定期接種のワクチンは接種できる年齢が決まっています。該当年齢を超えてしまった場合は接種しないとあきらめないで下さい。自費になってしまいますが、かかりつけ医で接種することができます。定期接種の水痘ワクチンは2回接種を2歳までに行うようになっていますが、3歳過ぎても、自費なら接種はできますので接種をお勧めします。
今すぐにお子さんの母子手帳の中にある予防接種欄を開いて見てください。適切に予防接種ができていますか?今は多くのワクチンがあるので、不安な方はかかりつけ医や市町村の保健師に相談をしていただけると教えてくれます。
予防接種のポイントは「生後2か月」になったらワクチンデビューすることです。特に百日咳は赤ちゃんがかかると重症化して死に至ることがあります。百日咳が含まれている4種混合ワクチンは生後3か月にすぐに接種してください。生後2か月から4週ごとに接種が続きますが、順調に進めば、生後6カ月過ぎると該当するワクチンがなくなります。そして1歳になると再び予防接種が始まります。入園すると病気をもらい予定していたワクチンが遅れてしまい、入院してさらに遅れる悪循環になってしまうお子さんもいます。
来月小学生になる年長さんは、3月末が期限である「麻疹風疹混合ワクチン」を済ませましたか?まだ接種していない場合は3月31日までに接種をお願いします。また、B型肝炎ワクチンは生後11か月まで、水痘ワクチンは2歳代までなどと期限がワクチンによって異なっています。ぜひ一度ご確認ください。
昔、ワクチンの安定剤として使われていた「ゼラチン」でアレルギーを起こし、死亡者を出したこともありましたが、現在はゼラチンを使用していません。生ポリオワクチンはワクチン接種でポリオを発症する恐れがありましたが、2012年9月からワクチンによるポリオを発症する恐れのない不活化ワクチンに切り替わりました。
熱や接種部位が腫れることは現在もありますが、大きな副反応とは言えず、熱は1日程度、腫れも数日で治まる程度のものです。副反応を恐れてしまい、ワクチンをしないと病気にかかる可能性があります。
例えば、おたふくかぜワクチンをすると、数千人に1人(0.05%)、無菌性髄膜炎が起きます。しかし接種せずに自然にかかると100人に2人程度(2%)、無菌性髄膜炎が起きます。ワクチンを接種した方がはるかに少ないことが明らかになっています。さらに日本耳鼻咽喉科学会の全国調査ではおたふくかぜに自然にかかり、ここ2年間で336人が難聴にかかったということが判明しました。難聴にかかると現在では完治することができません。おたふくかぜワクチンもお勧めします。小児科医や耳鼻科医はすべての予防接種を定期接種化することを願ってやみません。
「VPDを知って、子どもを守ろうの会」ホームページ http://www.know-vpd.jp