小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
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ようやく夏が終わり、秋らしく過ごしやすい季節になりました。うちは今秋、長女の保育園と四男の小学校・三男の中学校の運動会があり、今から楽しみにしています。10月から水痘ワクチンの定期接種が始まりました。4歳までのお子さんが対象になります。年齢が過ぎると対象外になり接種できませんのでお早めに対応して下さい。
最近熱帯や亜熱帯で流行するデング熱が日本国内で100人を超える感染者が出てしまい、新聞・ニュースなどでも連日大きく取り上げられています。私はまだデング熱の患者さんを診たことはないのですが、デング熱の流行地域であるベトナムで医師として働いている私の友人に電話でインタビューをした情報を併せてお話します。
デング熱はデングウイルスから発症する病気で、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカという蚊に刺され伝染する病気です。蚊に刺されてから発症するまでの潜伏期間は4~7日程度です。発熱・頭痛・筋肉痛・発疹が主な症状です。通常、1週間程度で症状が落ち着き、後遺症が出ることはあまりありませんが、まれに出血症状で亡くなる場合があります。治療は特効薬がなく、対症療法が基本で抗生剤も効果がありません。
ベトナム在住の友人医師は、お子さんが3年前にデング熱にかかった経験があります。高熱が続きぐったりして、出血症状が気になり血小板数を調べたところ輸血をする一歩手前まで血小板が減っていたそうです。結果としては輸血せずに回復したそうですが、多くのデング熱患者を診ていた彼でさえも自分の子どもがかかった時は、非常に不安になったと話していました。隣国シンガポールではデング熱の発生があるとその周辺を徹底的に消毒しますが、発生を抑えることはできないようです。
感染経路としてはデングウイルスに感染した人を蚊が吸血することで蚊の体内でデングウイルスが増殖します。 そしてその蚊が他の人を吸血することでウイルスが感染します。感染しても発症しないことも多くみられます。なお、ヒトからヒトに直接感染はしません。
デングウイルスを媒介する蚊は、「ネッタイシマカ」「ヒトスジシマカ」という種類の蚊です。ネッタイシマカは日本にはいませんが、ヒトスジシマカは日本(秋田県および岩手県以南)に存在します。ヒトスジシマカの幼虫はベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルに溜まった水、放置されたブルーシートや古タイヤに溜まった水などによく発生し、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などでよく刺されます。
例年、海外の流行地で感染し帰国後に国内で発症した人が毎年200人ほどいて、これまでは国外での感染のみでした。今回は国内での感染例が出たことが今までとは感染場所が違い、公園周辺の消毒などがおこなわれています。
蚊に刺されないように虫除けスプレーをしたり、長袖・長ズボンを着用し肌の露出を少なくすることが大切です。予防接種も予防薬もありません。ヒトスジシマカは日中、屋外での活動性が高いので日中に蚊に刺されない工夫が重要です。
最近のデング熱報道が影響し、お子さんが高熱で受診された時にデング熱かどうか心配されるようになりました。代々木公園周辺で蚊に刺された後に熱が出た場合は疑うかもしれません。代々木公園周辺でないところでも感染例があり、心配になると思います。10月下旬までで成虫のヒトスジシマカはいなくなります。卵を産んで越冬しますが、その卵を通じてデングウイルスが来年の蚊にうつすことはありません。
デング熱は軽症であれば普通のかぜと見分けがつかず、特効薬はありません。高熱が続いたり、止まらない鼻血・黒い便などの出血傾向がある場合は医療機関に相談してください。
今後の対応としてはヒトスジシマカが活動できる10月末まではかかる可能性があります。来年の夏に発生するかどうかはまだ不明です。
デング熱に関するQ&A(厚生労働省)http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever_qa.html