小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
今月は梅雨が明けると夏本番です。熱中症に気をつけながら、夏を楽しみましょう。先月、恥ずかしながら夫婦げんかがありました。いつもなら互いに不機嫌になり、時間が解決してくれていたのですが、初めて、その解決に成人した子どもたちが関わってくれました。子どもが両者の言い分を聞き、仲立ちをしてくれました。子どもが成人になるとそれで終わりではなく、親を助けて(諭して)くれることがあるのだと子どもの存在の有難みに感謝しました。読者の多くの方は小さな子どもたちの子育てをして毎日疲れ切っていることでしょう。しかし、子どもが成人になったときに、思わぬところでご褒美をもらうことができます。
皆さんもこれからきっと経験できると思います。
先月、国民生活センターから「アームリング付き浮き具」を着けて子どもが溺水した事故があったことが報告されました。2023年8月、3歳男子が「アームリング付き浮き具」を着けて、屋外のレジャープールで遊んでいて、保護者がわずかに目を離した間に溺れ、浮いているところを発見されたそうです。一時は心停止と診断され、5日間入院しました。着用方法が逆になっていると溺水しやすいことを注意喚起しています。また、アームリング付き浮き具はライフジャケットとは異なり、命を守るためのものではないことを理解すること、さらに水遊びの際は必ず保護者も子どもと一緒に水に入り、万が一の場合に備え、すぐに手を差し伸べられるように寄り添うことも大事です。毎年海・川などでの溺水事故が多く発生しています。大人も子どもも水辺での遊びではライフジャケットを着用してください。
昨年5月から新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類になり、マスク着用は個人の判断が基本となりました。5類施行後、1年が経ちましたが、世間ではコロナ禍前よりもマスクを着けている方が多い印象です。大人はご自身の判断でよいと思いますが、子どもたちだけで判断させることは到底できません。今月は子どものマスク着用について考えてみたいと思います。
国立成育医療研究センターが2023年ゴールデンウイーク中、小6から高2までの学生749名からマスクの着用について質問をしました。その結果、「室内の近い距離で人と接する可能性があるとき」は約9割の子どもが「マスクをつけている」と回答、「マスクをつけたい」と思った理由は「病気の感染対策」「安心するから」「みんながマスクをしているから」などでした。マスクを外したい理由は「不快」「会話しにくい」「集中できない」などでした。
コロナ過ではマスクをつけなさいと子どもたちに強いてきました。2023年5月から個人の判断ということになりましたが、急に子どもたちに判断をさせるのはなかなか難しく、戸惑っている子どもも多いのではないでしょうか。大人だって同じだと思います。調査結果の「みんながマスクをしているから」という思いは、本当ははずしたいという気持ちが入っていることを大人は知っておく必要があります。
私が会員でもある「ファザーリング・ジャパン」(父親の子育て支援などに取り組むNPO法人)の会員間によるメーリングリストで木舟周作さんという会員からのメールに目が留まりました。ある中学校で半数以上が炎天下でマスクをしながら徒競走などをしている現状を目の当りにし、体育や運動会でマスク着用をしないように、みんなの笑顔が見える社会・素顔の日本を取り戻すために2024年4月に「素顔ジャパンプロジェクト」を立ち上げました。
このプロジェクトでは、『小学高学年から中高高校生の多くがマスクをはずせずにいる』『特に夏の炎天下、マスク着用で運動をさせることは虐待であると言っても過言ではない』『顔を見せるのが恥ずかしくマスクが手放せなくなってしまっているお子さんへ寄り添った対応をしてほしい』『不登校や自殺が増えているが、マスクの影響があるのではないかという懸念』などを訴えています。
最後に、5類以降、私はみんなにマスクを外してもらいため、診察以外は率先して外して来ました。2023年5月頃はマスクをつけないでいる方が少数のため、何か言われたらどうしょうとドキドキしていましたが、今は外している人が半数以上になってきているので安心しています。うちの娘(小6)のクラスは女子がほとんどマスクを着用しているようです。女子は様々な理由で外せないようです。お子さん自身が感染に心配して着用する場合は無理に外すように強いる必要はありませんが、大人はマスクを外したいと思っている子どもたちが外せるように考えてもらいたいです。成長期である子どもたちは、顔の表情を読んで学んでいることを忘れないでください。
国民生活センター アームリング付き浮き具による子どもの溺水が発生!
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20240522_1.html
東京くらしWEB 子供の水辺の遊びではライフジャケットを着用させましょう https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.lg.jp/anzen/test/lifejacket.html
素顔ジャパンプロジェクト https://sugao-japan.com/
例年のように猛暑が続く暑い夏、みなさんいかがお過ごしですか?水分補給をこまめに行い、クーラーを活用したり、シャワーを浴びたりしながら熱中症に気をつけてください。
先日、乳がんと闘っていた小林真央さんが亡くなりました。幼いお子さんを残してどんなに無念だったかと想像します。悲しく残念でたまりません。真央さんのブログから前向きに生きる姿が多くの方に伝わりました。また一日一日を大切し前向きに生きていくことを教えられました。ご冥福をお祈りします。
今月は視点を広げて医療と上手に関わりながら子育てをしていくには・・という話をしたいと思います。昨今はブログなどを含めたネットが普及し、情報が氾濫しています。子育ての情報のみならず、医療情報も多く、どの情報を信じればよいか迷う時もあります。
私が小児科医になったばかりの20年前は、喘息の治療薬があまりなかったため、夜発作を起こした子どもの受診が多く、救急外来は忙しい日々でした。現在は治療法が進歩し、抗ロイコトリエン薬や吸入ステロイドの誕生で発作を起こす子どもたちが明らかに減ってきています。喘息の治療をみても、昔より格段に進歩しています。薬を上手に使うことにより発作で苦しまずに済むお子さんが多くなってきています。喘息のお子さんは気道炎症が24時間起こっており、発作がなくても、抗炎症薬を使用し気道炎症を抑えることで発作を抑えることが大切です。上手に薬を使うと生活の質が高まります。
20数年前、ステロイド軟膏の副作用に関する誤ったテレビ報道をきっかけに使用を控える方が増加し、アトピー性皮膚炎の炎症が悪化し、真っ赤な顔になり受診する方が多く見られました。その後、その誤解を正すために多大な時間を要することになりました。その頃は私たち医師の話より、メディアや民間療法の影響が強く、ステロイド軟膏の使用に関して躊躇している方が多い印象をうけました。
2000年に日本皮膚科学会からアトピー性皮膚炎ガイドラインが誕生し、普及が進むことで、医師・患者の両者の共通理解が深まりました。そのおかげでステロイド軟膏を使用しない方は現在、ほとんどみられなくなっています。ステロイド軟膏の副作用が出にくい免疫抑制剤の軟膏も登場し、以前よりアトピー性皮膚炎の治療も進歩しています。
最近いくつもの予防接種が登場し、多くの恩恵が得られています。特にヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンが始まり、髄膜炎にかかるお子さんが激減しています。うちのクリニックでもヒブワクチンが始まる前は髄膜炎にかかるお子さんが年に数人はいましたが、現在はほとんどいません。またロタウイルスワクチンがない頃は、多くのお子さんが点滴や入院をしていたのですが、開始されてからは点滴治療も入院も激減しています。予防接種は発熱や接種部位が腫れることはありますが、重い副反応はまれとなっています。現在使われているワクチンは長い歴史があり、世界中のお子さんに使用されてきて安全性が確認されています。
予防接種をした後に高熱を出したり、脳炎を起こし報道される場合があります。接種後に起こすと直接的な原因と思われがちですが、その因果関係を調べることは簡単にいかないことも多いのが現状です。私が予防接種を勧めるときには予防接種のメリットとデメリットのバランスを考えて、メリットがデメリットを上回るようなら接種した方がよいと話をしています。予防接種の必要性についてはネット情報だけではなかなか理解できません。大切な自分の子どものワクチンの必要性について親としていろいろと心配するのは当然のことです。必要性があるかはかかりつけ医に相談をして、納得のいく説明を聞き、子どものために決定することが必要です。私たち小児科医は科学的なデーターを収集し、国の方針や日本小児科学会の提言を考慮し判断しています。
最後に喘息やアトピー性皮膚炎で上手に薬を使用することで、症状が軽くなっていること、予防接種をした恩恵でいろんな病気にかからないで済む時代になっていることを痛感します。私が医師になったばかりの頃と比較すると小児医療の進歩は早く、今の子どもたちは本当に幸せだと感じます。皆さんもご存知の通り、子育ては一人ではできません。医療との付き合い方も同様で、かかりつけ医に相談しながら、現在の最新の医療を上手に取り入れていただきたいです。そして、その情報を家族で共有しながら子どものために良い選択をしていってほしいと願っています。
新年明けましておめでとうございます。今年も小児医療に関して皆さんに役立つ最新の情報を提供していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。さて、昨年11月30日に第3回富士山マラソンに初出場しました。フルマラソンは初めてでしかも練習では30㎞までしか走ったことがないため、ドキドキしながらスタートしました。多くの応援に支えられていたのですが、なんと25㎞あたりから失速してしまいました。その後は気力で走り切りなんとか制限時間内の4時間55分で完走することができました。途中、太鼓や吹奏楽の演奏で勇気づけられ、歩道でボランティアの方々が自前でドリンクや飴などを提供してくれました。出場者を代表して協力者・応援者の皆様に感謝申し上げます。久々に初めてのことを経験したので大変興奮した1日となりました。
先月、武装勢力に銃撃されながら一命をとりとめ、女子教育の権利を訴え続けているマララさんがノーベル平和賞を受賞しました。子どもたちが教育を受ける権利を訴え続けています。彼女のスピーチを聞いて、教育とは本当に大切だなと改めて感じました。日本は戦後、平和憲法の下で子どもたちがしっかりと教育を受けてきたおかげで平和が続いています。様々な課題はあるものの、今ある何気ない日常に感謝したいと思います。今月は県内では知事選が控えていることもあり、県内の小児医療の現状についてお伝えしたいと思います。パパ・ママ世代の投票率が低い傾向にあり、政治家は若い方の声に耳を傾けない風潮になってはよくないと思います。必ず選挙に行き一票投じていただきたいです。
県が昨年11月から国が国庫負担金を減額するペナルティーを理由に重度心身障害者の医療費助成制度を窓口無料から一時払い方式に変更しました。障害者以外の子どもは今まで通り窓口無料ですが、障害者のみが一時払いになってしまいました。何か不公平な感じがしませんか?現在、市民団体「子どもの医療費 窓口無料化を求める会」が改善を求め運動をしています。
数年前から今までになかったヒブ・肺炎球菌・ロタワクチンが新たに加わり、これらのウイルスにかかることで髄膜炎・肺炎・胃腸炎にかかるお子さんが大きく減ってきました。ヒブワクチン導入前後で髄膜炎が9割減ったという報告がでており、多くの子どもたちがこれらのワクチンによる恩恵を受けています。また、昨年10月から水痘ワクチンが定期接種化され、今後水痘にかかるお子さんも激減すると思われます。まだ定期接種化されていないロタ・おたふくかぜ・B型ワクチンも早期に定期接種化されることを強く望みます。
県内では任意の予防接種に独自に助成をしている自治体が2つあります。笛吹市はロタ・おたふくかぜワクチンを大月市はインフルエンザワクチンに対して一部費用の助成を行っています。この自治体に在住の子どもをもつ親御さんは、積極的にこの制度を活用していただきたいです。さらにより多くの市町村で助成が広がることを期待します。
昨年11月、県が主催した「小児救急医療研修会」に参加し、救急を担っている大学病院小児科の先生から話を聞く機会がありました。日本では0歳と成人の死亡率は、主要13か国の中で低いのですが、1~4歳児の死亡率が高いことが課題になっています。重症な場合、出生時には新生児集中治療室(NICU)で、成人の場合は集中治療室(ICU)で対応するという体制が全国的に進んでいますが、幼児に対応する小児集中治療室(PICU)の整備がまだ進んでおらず、そのため死亡率が高いと言われています。このPICUは、日本では大都市においては整備されていますが、地方ではまだ未整備の所が多く、山梨県内にはありません。人口規模から考えると、県内にはICUに小児部門を入れてもらうことが得策であると考えられています。PICUの整備で救える命があることを皆さんに知っていただきたいと思います。
師走となりました。小児科は12月が一番忙しく、例年年賀状が気になりながらも、気がつくと年末投函になっています。今年こそ早めに済ませたいと思っています。先日、聴覚障がいを持つ親御さん対象に子育て講演をする機会がありました。私の横に手話通訳者の方がついて説明をしてくれたため、いつもと違う雰囲気がありました。講演後、話をしていて、子どもの病気について電話で相談をすることができないという話を聞き、私の知らなかった子育て上の悩みを初めて知りました。
今月は病気の予防が大切であることを改めて皆さんにお伝えしたいと思います。日頃、健康のありがたみに気がつかず、病気になり痛感させられることもあるのではないでしょうか。
病気の予防についての学問に「予防医学」という言葉があります。予防医学は病気を防ぐことだけでなく、病気になっても進行を抑えたり遅らせたり、再発を防ぐという考えが含まれています。健康診断や予防接種は予防医学の一つになっています。
生活習慣病という言葉をよく耳にしますよね。生活習慣病は長年の食生活・喫煙・運動不足等が深くかかわり、糖尿病・高コレステロール血症などの脂質異常、高血圧、高尿酸血症などの病気のことを言います。がん・脳血管疾患・心臓病の3大死因も生活習慣と関係が強いと言われています。対策としては、バランスのよい食事・禁煙・適度な運動が大切です。
今の国の医療制度は病気になって治療をすることに対して保険が使用できます。予防接種や検診などの予防については保険が使えず、自費扱いになっています。ほとんどの先進国においては予防接種や健康診断が受けやすい環境が整っています。来年から国で子宮頸がん・ヒブ・肺炎球菌ワクチンの助成を行う話が検討されているようです。これからはもっと予防に予算をかけていただきたいと思います。
私は毎年、健康診断を受けています。今年は体重が増えていると言われました。そのため、気にするようになり、自転車通勤と時間があればランニングをするように心がけています。お子さんのことも大事ですが、まずは自分の健康管理が第一です。さらに、こころの健康も大事です。こころが病んでもよくありません。子育てがつらいと感じているママは、旦那さん、祖父母、ファミリーサポートなどを利用して、ご自分のために息抜きする時間も作ってください。
こどもの病気を予防することはどの親も考えることです。予防接種をきちんと受けることはまず大事なことです。定期接種とされるBCG・三種混合・ポリオ・麻疹風疹・日本脳炎・2種混合、さらに自費扱いになっている水痘・おたふく・ヒブ・肺炎球菌・子宮頸がんワクチンの接種もお勧めします。例えば、おたふくにかかることで、髄膜炎・難聴・睾丸炎などの合併症にかかることもまれではありません。ワクチンをしておけば先ほど述べた合併症にまで発展することはほとんどありません。
たばこは吸っている人のがん予防、循環器系や呼吸器系の病気などの多くの病気を予防できることがわかっていますし、家族やお子さんの喘息・中耳炎などを予防できます。
また、母乳育児をしていると、人工乳にはない免疫物質などが入っているため、お子さんが感染症にかかりにくく、ぜんそく・アトピー性皮膚炎・乳幼児突然死症候群の発病が減ることが明らかになっています。母親にとっては、子宮収縮が促されることにより貧血が予防され、乳がんなどの女性特有のがんの発症率が下がることがわかっています。さらに妊娠中に蓄えられた体脂肪が母乳に使われることで無理なく体重を減らすことができます。
こころの健康についても大切です。家庭が安定していると、子どものこころの安全基地になり、こころの健康を保つことができると考えます。体の病気の予防も大事ですが、こころの病気にならないことも同じくらいに大切です。
県内でもインフルエンザの報告がみられています。今年10月以降、国内でA香港型(H3N2)の集団発生がみられており、新型(H1N1)だけでなくA香港型も合わせて流行するとも言われています。どの型であれ、高熱・咳・鼻水等が主な症状で、予防はまずワクチン接種、次に手洗い・うがいです。
最後に、来年もみなさんの体とこころが健康でありますように願っています。