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院長コラム

医療

新年明けましておめでとうございます。今年も小児医療に関して皆さんに役立つ最新の情報を提供していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。さて、昨年11月30日に第3回富士山マラソンに初出場しました。フルマラソンは初めてでしかも練習では30㎞までしか走ったことがないため、ドキドキしながらスタートしました。多くの応援に支えられていたのですが、なんと25㎞あたりから失速してしまいました。その後は気力で走り切りなんとか制限時間内の4時間55分で完走することができました。途中、太鼓や吹奏楽の演奏で勇気づけられ、歩道でボランティアの方々が自前でドリンクや飴などを提供してくれました。出場者を代表して協力者・応援者の皆様に感謝申し上げます。久々に初めてのことを経験したので大変興奮した1日となりました。

 先月、武装勢力に銃撃されながら一命をとりとめ、女子教育の権利を訴え続けているマララさんがノーベル平和賞を受賞しました。子どもたちが教育を受ける権利を訴え続けています。彼女のスピーチを聞いて、教育とは本当に大切だなと改めて感じました。日本は戦後、平和憲法の下で子どもたちがしっかりと教育を受けてきたおかげで平和が続いています。様々な課題はあるものの、今ある何気ない日常に感謝したいと思います。今月は県内では知事選が控えていることもあり、県内の小児医療の現状についてお伝えしたいと思います。パパ・ママ世代の投票率が低い傾向にあり、政治家は若い方の声に耳を傾けない風潮になってはよくないと思います。必ず選挙に行き一票投じていただきたいです。

 

重度心身障害者の医療費助成制度が窓口無料から一時払い方式に

 県が昨年11月から国が国庫負担金を減額するペナルティーを理由に重度心身障害者の医療費助成制度を窓口無料から一時払い方式に変更しました。障害者以外の子どもは今まで通り窓口無料ですが、障害者のみが一時払いになってしまいました。何か不公平な感じがしませんか?現在、市民団体「子どもの医療費 窓口無料化を求める会」が改善を求め運動をしています。

 

最近のワクチン事情

 数年前から今までになかったヒブ・肺炎球菌・ロタワクチンが新たに加わり、これらのウイルスにかかることで髄膜炎・肺炎・胃腸炎にかかるお子さんが大きく減ってきました。ヒブワクチン導入前後で髄膜炎が9割減ったという報告がでており、多くの子どもたちがこれらのワクチンによる恩恵を受けています。また、昨年10月から水痘ワクチンが定期接種化され、今後水痘にかかるお子さんも激減すると思われます。まだ定期接種化されていないロタ・おたふくかぜ・B型ワクチンも早期に定期接種化されることを強く望みます。

県内では任意の予防接種に独自に助成をしている自治体が2つあります。笛吹市はロタ・おたふくかぜワクチンを大月市はインフルエンザワクチンに対して一部費用の助成を行っています。この自治体に在住の子どもをもつ親御さんは、積極的にこの制度を活用していただきたいです。さらにより多くの市町村で助成が広がることを期待します。

 

県内の小児救急体制

 昨年11月、県が主催した「小児救急医療研修会」に参加し、救急を担っている大学病院小児科の先生から話を聞く機会がありました。日本では0歳と成人の死亡率は、主要13か国の中で低いのですが、1~4歳児の死亡率が高いことが課題になっています。重症な場合、出生時には新生児集中治療室(NICU)で、成人の場合は集中治療室(ICU)で対応するという体制が全国的に進んでいますが、幼児に対応する小児集中治療室(PICU)の整備がまだ進んでおらず、そのため死亡率が高いと言われています。このPICUは、日本では大都市においては整備されていますが、地方ではまだ未整備の所が多く、山梨県内にはありません。人口規模から考えると、県内にはICUに小児部門を入れてもらうことが得策であると考えられています。PICUの整備で救える命があることを皆さんに知っていただきたいと思います。

師走となりました。小児科は12月が一番忙しく、例年年賀状が気になりながらも、気がつくと年末投函になっています。今年こそ早めに済ませたいと思っています。先日、聴覚障がいを持つ親御さん対象に子育て講演をする機会がありました。私の横に手話通訳者の方がついて説明をしてくれたため、いつもと違う雰囲気がありました。講演後、話をしていて、子どもの病気について電話で相談をすることができないという話を聞き、私の知らなかった子育て上の悩みを初めて知りました。

 今月は病気の予防が大切であることを改めて皆さんにお伝えしたいと思います。日頃、健康のありがたみに気がつかず、病気になり痛感させられることもあるのではないでしょうか。

 

予防のすすめ

病気の予防についての学問に「予防医学」という言葉があります。予防医学は病気を防ぐことだけでなく、病気になっても進行を抑えたり遅らせたり、再発を防ぐという考えが含まれています。健康診断や予防接種は予防医学の一つになっています。

生活習慣病という言葉をよく耳にしますよね。生活習慣病は長年の食生活・喫煙・運動不足等が深くかかわり、糖尿病・高コレステロール血症などの脂質異常、高血圧、高尿酸血症などの病気のことを言います。がん・脳血管疾患・心臓病の3大死因も生活習慣と関係が強いと言われています。対策としては、バランスのよい食事・禁煙・適度な運動が大切です。

 

予防が広がらないわけ

今の国の医療制度は病気になって治療をすることに対して保険が使用できます。予防接種や検診などの予防については保険が使えず、自費扱いになっています。ほとんどの先進国においては予防接種や健康診断が受けやすい環境が整っています。来年から国で子宮頸がん・ヒブ・肺炎球菌ワクチンの助成を行う話が検討されているようです。これからはもっと予防に予算をかけていただきたいと思います。

 

お父さん・お母さんは健康診断を受けていますか?

 私は毎年、健康診断を受けています。今年は体重が増えていると言われました。そのため、気にするようになり、自転車通勤と時間があればランニングをするように心がけています。お子さんのことも大事ですが、まずは自分の健康管理が第一です。さらに、こころの健康も大事です。こころが病んでもよくありません。子育てがつらいと感じているママは、旦那さん、祖父母、ファミリーサポートなどを利用して、ご自分のために息抜きする時間も作ってください。

 

予防のいろいろ

こどもの病気を予防することはどの親も考えることです。予防接種をきちんと受けることはまず大事なことです。定期接種とされるBCG・三種混合・ポリオ・麻疹風疹・日本脳炎・2種混合、さらに自費扱いになっている水痘・おたふく・ヒブ・肺炎球菌・子宮頸がんワクチンの接種もお勧めします。例えば、おたふくにかかることで、髄膜炎・難聴・睾丸炎などの合併症にかかることもまれではありません。ワクチンをしておけば先ほど述べた合併症にまで発展することはほとんどありません。

たばこは吸っている人のがん予防、循環器系や呼吸器系の病気などの多くの病気を予防できることがわかっていますし、家族やお子さんの喘息・中耳炎などを予防できます。

また、母乳育児をしていると、人工乳にはない免疫物質などが入っているため、お子さんが感染症にかかりにくく、ぜんそく・アトピー性皮膚炎・乳幼児突然死症候群の発病が減ることが明らかになっています。母親にとっては、子宮収縮が促されることにより貧血が予防され、乳がんなどの女性特有のがんの発症率が下がることがわかっています。さらに妊娠中に蓄えられた体脂肪が母乳に使われることで無理なく体重を減らすことができます。

こころの健康についても大切です。家庭が安定していると、子どものこころの安全基地になり、こころの健康を保つことができると考えます。体の病気の予防も大事ですが、こころの病気にならないことも同じくらいに大切です。

 

~インフルエンザのお知らせ2~

 県内でもインフルエンザの報告がみられています。今年10月以降、国内でA香港型(H3N2)の集団発生がみられており、新型(H1N1)だけでなくA香港型も合わせて流行するとも言われています。どの型であれ、高熱・咳・鼻水等が主な症状で、予防はまずワクチン接種、次に手洗い・うがいです。

最後に、来年もみなさんの体とこころが健康でありますように願っています。


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