小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
ハナミズキが咲き誇り、新緑が眩しい季節となりました。
我が家では昨年に続きファミリーマラソンに出場しました。私も足首の故障から復活し、1周約1.2㎞超の17周を家族7人で交代しながら走り切りました。子ども4人が成人になると家族全員で一緒に会う機会が少なくなるので、こういったイベントを大事にして家族の絆を深めていきたいと思っています。
小林製薬の紅麹の成分を含むサプリメントを摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で健康被害の訴えが相次いでいます。うちのクリニックでも、20歳代の男性2人が健康診断時の血液検査で肝・腎機能異常を指摘され相談を受けたことがありました。今回の紅麹とは違いますが、別のサプリメントを飲んでいたため、そのサプリメントを飲まないことで肝・腎機能改善した経験があります。また、診察時にご両親からお子さんにサプリメントを飲んでいいかと質問されることがありますが、基本的には普段の食事だけで充分であることを伝えています。
今月は発達障害の一つとされている「場面緘黙(ばめんかんもく)」についてまず皆さんに知っていただければありがたいと思います。
場面緘黙とは、家庭ではごく普通に話すのに、幼稚園・保育園や学校などで話をしたりすることができない状態を言います。家では問題なく話すため、長い間、気づかず、先生やお友達から聞いて驚かれる保護者が多くいます。また、園・学校ではおとなしいタイプが多く、見過ごされがちになる場合もあります。不安や緊張が強く話すことができません。
場面緘黙は、医学・法令・学校教育で分類が異なり、学校教育においては「情緒障害」、医学的には「不安症群」、法令上は「発達障害者支援法」の対象となっています。学校では「特別支援教育」の対象であり、合理的配慮を求めることができます。
発症頻度は近年わが国で行われた大規模な調査では0.21%(約500人に1人)という報告(梶・藤田,2019)があります。発症は通常5歳未満で、社会的な交流や発表などの機会が増える入園入学後に症状がはっきりしてきます。親の過保護やしつけなど「育て方のせい」と考えるのは誤解で、最近の研究結果からも関連性は否定されています。
2歳で保育園に入園したお子さんが、園で話をすることができず、毎日のように帰宅後、ご両親に園に行きたくないと泣くばかりでした。困り果てたご両親は転園を決意、その園ではその子の特性に合わせたかかわりを園全体で理解し対応することで、不安が少しずつ和らぎ、先生・友達に少しずつ話をすることもできるようになりました。年長になった生活発表会では1人で発表することまでできる成長が見られました。その子にあった丁寧な関わりが実を結ぶ経験をしました。
場面緘黙のお子さんは自分の意志で「話さない」わけではありません。「話せない」のです。自分から悩みを発信することができません。適切な支援なく園・学校生活を過ごした場合、長期にわたるストレス状況から、うつ的症状や不登校などの2次的な問題へとつながるケースも見られます。自閉症スペクトラム症などの発達障害やその傾向をあわせもつ場合もあります。話せないこと以外の困り感や特性を知って支援してもらえるとありがたいです。さらに話せないことだけでなく、集団の場で不安や緊張が強く、体が動かなくなる場合もあります。
園・学校の対応法としては、家庭と園・学校などが協力して、まず安心できる環境を調整することが最も大切です。1)場面緘黙のお子さんは自分で助けを求めることができないので、家庭と連携し対応を協議する。2)「話せない」状態のため、話すことを強制せず、どうしたら話せるようになるかを本人と保護者と一緒に考える。3)大きな声や乱暴な言葉づかいにとても敏感なので、直接、本人に言ったわけでなく、周囲へ強い口調をしたことでも恐怖を感じます。そのため必要以上の叱責を控える。4)症状が一人一人違うので、以前経験した対応方法でうまくいかない場合もあります。その子にあったやり方を考える4点が挙げられます。
最後に、一番の理解者である保護者の方は場面緘黙であるお子さんのつらさを理解するように努め、話すようにプレッシャーを与えず、不安を取り除けるように子どもの話を聞きながら関わってください。焦らずに、園・学校、家庭、専門機関とも連携しながら、少しずつできる体験を増やし、お子さんの成長を見守っていきましょう。
かんもくネット https://www.kanmoku.org/
かんもくネット『場面緘黙Q&A』角田圭子(編)、学苑社、2008年
金原洋治・高木野潤『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド:アセスメントと早期対応のための50の指針』合同出版、2018年