小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
寒い日々が続いてきましたが、ようやく、春らしさが感じられるようになりました。3月は卒園・卒業式などがあります。うちの第3子も大学生活を終えます。親としては仕送りが終わり、社会人として一歩踏み出すのを応援したいと思います。私にはまだ学生の子どもが2人いるので、もうしばらくがんばって稼がねばなりません。先月初旬、ランニングをしていたところ、段差につまずき、右足首をひねってしまい、腫れと痛みが続いています。上手に年を重ねていく難しさを実感しています。
今月は学校のことについて皆さんに伝えていきます。私は昨夏「夢みる校長先生」という映画を観てきました。その驚きの内容と、さらに1月末、放映された「NHKスペシャル“学校”のみらい~不登校30万人から考える~」についての不登校改善策、さらに私が診療している学校へ行きづらい子どもたちの声を皆さんにお届けします。
「子どもファースト」な学校改革を行った6つの公立学校の校長先生にスポットをあてたドキュメンタリーです。その6つの学校は長野県、東京都、神奈川県などにあり、校長の決断で通知表・定期テスト・校則・宿題などを廃止する試みをしています。その試みをしている学校が私立ではなく、公立学校であることに私自身、驚きを隠せませんでした。現行の制度の中で学校を変えることができるようです。映画の中で学校改革を取り組んでいる先生方や生徒たちの顔の表情がとても生き生きとしており、主体的に勉強に取り組んでいる姿が印象的でした。この取り組みは学校だけでなく、保護者や地域の人たちの理解と応援が支えになっていました。ちなみに、3月17日(日)に山梨県立文学館で上映予定があります。(問い合わせ:山梨県弁護士会事務局、055-235-7202)
2023年度現在少子化にも関わらず、不登校児童生徒数が年々増え続け、過去最多約30万人となっています。1月末「NHKスペシャル“学校”のみらい~不登校30万人から考える~」を観ました。国内外の子どもを主体とした学校やフリースクールの取り組みの紹介があり、不登校経験者・親・専門家たちの声を聞きました。私が一番興味を惹いたのが山形県天童中部小学校の取組で、前校長が「子ども主体の学校にする」と熱い思いを持って学校改革をしていました。一斉授業が全体の8割で、子ども自身が学び方を選択する授業が2割あり、主体的に子どもたちが学びを深め、生き生きとしている姿がありました。そしてこの学校はなんと「不登校ゼロ」であることが不登校改善策のヒントになると思いました。
私は不登校や不登校気味になるお子さんを診療する機会があります。その子たちは学校での生きづらさを感じ、頭痛・腹痛・気持ち悪い・倦怠感などの訴えがあります。
あるお子さんは友達とのトラブルがきっかけでした。診察を通じて親も初めて聞く場合もあり、次の診察までに親に子どもの困っていることを先生に伝えていただきます。こうすることで改善に向かう場合もあります。
また、頭痛を訴え、沈んだ表情で小2女子が診察室に入ってきたことがありました。話を聞くと「給食時がつらくて食べたくない」と私に訴えてきたので「給食の量を減らすといいかな」と聞くと、顔の表情がよくなりました。その後、親から担任の先生に給食の量を減らしてもらい、頭痛が改善しました。
宿題に取り組む時間がかかってしまい疲労が取れないお子さんもいました。丁寧に字を書きたい性格もあり、漢字練習に他の人の数倍もかかり、減らしてみるように先生に相談をしようと言うと、その子は「やれないと休み時間にやらなければならないからがんばる」と言っていました。
子どもたちの困り感は一人一人違います。子どもたちの声を聞きくことの大切さ、子どもたちは教師に言いづらいので、親から学校側に相談をして困り感を改善することをお勧めしています。
最後に、私も妻も上の子どもたち4人も小中高校とも公立で学ばせていただき、今は末娘が公立小学校にお世話になっています。私が子どもたちに公立学校を選択したのは、多様性に満ちたいろいろな子どもたちがいて、様々な経験ができると思ったからです。実際に様々な国籍の子どもや家庭との出会い・病気や特性を持つ子どもとのかかわり等、学校は勉学を学ぶ場以上に社会性を身につける、生きる力を養う場だと思っています。公立学校がもっと魅力的になれば、子どもたちも魅力的になります。私たちがもっと学校に関心を持ち、先生方を応援することで、今の制度内でも学校は変われることを知っていただけたら幸いです。
令和6年能登半島地震により、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。地震の翌日はJAL機炎上事故があり平穏とは程遠い年明けとなりました。先日小学生が受診時に「地震後から、次の地震がいつ来るのか心配になっていて、物が動いたりすると心配になってしまう」と相談に来ました。親御さんには安心するために「大丈夫だよ」という声掛けをすること・地震の映像を見させないこと・地震の話をしないようにと伝えました。
年末年始は実家に帰って親に会ったり、旧交を温めたりした人が多かったと思います。うちは家族7人が年末、久しぶりに全員で会うことができ、お互いの近況を伝えあうことができました。兄弟5人で絵しりとりやトランプをして、盛り上がっていました。
先月に引き続き、発達障害について今月もお伝えしたいと思います。私たちが子どもの頃、発達障害という言葉はありませんでしたが、現在は認知が広がっています。親だけでなく、発達障害の子が過ごす園・学校の関わりも大切です。今月は上手に学校と連携しながら、お子さんが過ごしやすい環境づくりについてお話します。
発達障害の第一人者である本田秀夫著「学校の中の発達障害」1)の中で、「学校は社会に出ていくための土台をつくる場所」と述べています。私自身、学校は勉強すること以上に大切なのは学校での友達を通して人間関係を学ぶ場であると思います。しかし、子どもたちだけでは問題解決できない場合もあるので、教師や保護者が仲立ちをして、その子たちの成長を助けていく役割があると考えます。失敗した時は、子どもの話に耳を傾け、共に悩み、解決策を提案していくような関わりを意識することが大切です。
学校へ行きたくない・頭痛や腹痛、気持ち悪いなどの訴えがあった場合、無理やり登校させるだけでは問題の根本的な解決にはなりません。子どもと向き合ってまず話を聞くことが早道です。きっと困っていることがあります。
いじわるをする友達がいる・仲間外れにされた・給食の時間が完食できないなど、様々な悩みを持っています。発達障害の子はこだわりが強かったり、コミュニケーションが苦手だったりといった特性があるため、普通の子どもより訴えてきます。
聴覚過敏のある子では音に対して敏感で、教室で休み時間に生徒通しでざわつく状態が普通の人の何倍も大きな音に聞こえてしまうため、教室に居ることができず、ストレスをかかえる場合もあります。こうした場合は、休み時間には図書室など静かな場所で過ごすことや、授業中もしんどいときに別室で休息すること等についても学校側と相談をしてもよいと思います。
宿題が負担で腹痛・頭痛など体に支障がでる場合もあります。発達障害の子は学習障害がある場合があり、苦手な教科の宿題を出されると、できないことで大きなストレスをかかえます。宿題をこなすことで体に負担がかかり、学校へ行けなくなるのは本末転倒です。宿題の量や内容についても、親が子どもの代弁者になって調整していくことが必要だと考えます。家に帰ってきたら、子どもたちは学校での生活で疲れているので、しっかりと体を休む、リラックスするとよいでしょう。発達障害の子は放課後等デイサービス(放デイ)の利用もお勧めです。放デイではスタッフがお子さんの特性にあった関わりをするため、運動や宿題に関わってもらえます。
先ほどの述べた著書1)の中に、小学校入学で通常学級か通級や支援級にするか迷った場合は、小1から通級や支援級に在籍することをお勧めしています。理由としては通常学級に在籍した場合「自分は失敗した、がんばらなかった」という挫折感を味わうトラウマ体験を経験することがない方がよいことと、学級を変更するには次年度、つまり1年待たねばならないことの2つの理由を挙げています。まず、そのことを踏まえて、親子で事前に見学などで情報収集し、子どもにとって過ごしやすい学級を選んでいただきたいと思います。
不登校になった場合は学校の関与も少なくなってしまい、親主導になりがちです。親だけで対応するのはお勧めしません。学校さらに医療機関にも相談をして、子どもの居場所を家庭のみにせず、家庭以外の居場所(フリースクールなど)を探しましょう。親以外の方との触れ合いは子どもの成長に役立ちます。
引きこもることで、ゲーム漬けになり、昼夜逆転、人間関係の学びも得ることができず、体を動かさないことによる体の不調も加わります。親はやがて老いるため、親亡き子の将来も考えることが大切です。
1)学校の中の発達障害 SB新書 本田秀夫著
まだまだ暑い日が続きますね。子どもたちは夏休みが終わり、園や学校に行き始め、やっと通常通りの生活がやってきたとホットしている親御さんは多いと思います。我が家の夏休みは県外にいた大学生3人がバラバラと帰省し、子どもたちの学校や友達の話を聞き、各々の成長を親として感じることができました。日頃あまり遊ぶことのない年の差の娘はプールや科学館へ兄に連れて行ってもらい、楽しい時間を過ごすことができました。
今回、千代田区立麹町中学校長工藤雄一先生の著書「学校の当たり前をやめた」という本をもとに、みなさんの子どもが通う「学校」について考えたいと思います。教育に関しては専門家ではない私ですが、かかりつけ医として「不登校」等のお子さんと接することがあるので、教育と医療の連携を痛感させられることが多々あります。著者の工藤先生は「定期テスト廃止」「宿題廃止」「クラス担任制廃止」など、数々の大胆な改革を行い、生徒・教員・保護者までもが主体性を発揮し、生き生きとした教育活動を展開しています。
全国ほとんどの学校で宿題を出すのが当たり前だと思っています。一般的に宿題の意義は「子どもの学力を高めること」「学習習慣をつけること」であると言われています。工藤先生は学力を高めていくには、自分が「分からない」問題を「分かる」ようにするプロセスが大切で、宿題を出すのであれば「分からないところをやっておいで」が大切であると言っています。
漢字の書き取りテストで間違えたところを1文字につき20回書くことが宿題となれば、「へん」だけを先に20回、その後に「つくり」を20回埋めていく「作業」をする人もいて、その時に「作業」を淡々とこなす際の脳はほぼ思考停止状態になっているそうです。この時「やらされている」気持ちだけになり、早く終わればいいとしか思っていないようです。これで学力を高めることができているかは疑問です。学習は「できない」問題を「できる」ようにするプロセスでないと意味がないようです。こういった考え方から日頃の宿題も夏休みの宿題も廃止したそうです。宿題を全廃したことで最も喜んだのは受験を控えた中3の生徒たちで、自分にとって重要ではない非効率な作業から解放されたからだそうです。
子どもの中には朝から夕方まで学校で活動し、帰宅後宿題に追われてしまい、疲れ果てている子も少なからず見受けられます。宿題に時間がかかる場合は担任の先生と相談し少なくしてもらう工夫も大切ではないかと思います。
工藤先生は「学校は子どもたちが社会の中でよりよく生きていけるようになるために学ぶ場所である」と本の中で何度も書いてありました。「自ら考え、自ら判断し、自ら決定し、自ら行動する」つまり「自律」する力を身に付けさせていくことだと言っています。大人が先回りをして、手を掛けすぎて育てられた子どもの多くは自律できず、自分で解決できない場合は他人のせいにしがちになるそうです。本来の学びとは、自分で分からなければ調べたり考えたり、それでも分からなければ聞くことが大切です。社会に出れば、物事を解決するときには対話→発信→受け取る→合意形成を行うことと同じだと述べています。
日々の子育てではなるべく失敗しないようにと親は手を出しがちで、学校ではお子さんのテストの点数がよければいいと思いがちですが、「自律する」ということにもっと目を向けないといけないことに私自身も気づかされました。
現場で働く教師の方々もこれらのことを理解しているものの、前例主義の前ではやれることも限られているのかもしれません。工藤先生は学校を良くするには校長や教員だけでなく、保護者も地域住民も「学校を良くするために、自分たちは何ができるか」という視点を持つ必要があると述べています。つまり、私たち保護者もお願いするだけではなく、共に連携することが大切であることを気づかされました。
楽しかった夏休み明けは特に園や学校へ行くことにすぐに慣れずに、頭痛や腹痛を訴えるお子さんがいます。私のクリニックにも相談に来ます。「なまけ癖がつくと困る」等と言ってお子さんを無理やり学校に行かせないでください。子どもは学校に行きたいという気持ちはあるものの、行けない状況になっているのだと理解して下さい。子どもの話をしっかりと聞き、遠慮せずに担任の先生や校長先生に相談をしてみて下さい。それでも難しければ、医療機関に相談をしてください。決して親子だけで悩まないでください。サポートしてくれる人は必ずいます。
学校の「当たり前」をやめた。時事通信社 工藤勇一