小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
秋本番となりました。
2024年のノーベル平和賞は日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が受賞しました。日本被団協は被爆者の立場から核兵器廃絶を訴えてきました。核兵器のない世界を実現するための努力と核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきたことが授賞理由となっています。1945年8月以降、核兵器が戦争で使われていませんが、現在、ウクライナへの軍事侵攻に踏み切ったロシアが核兵器使用をちらつかせています。私たちがこの現実を受け止め、核廃絶への道を考える必要があります。
10月から県内の病児保育利用料について、県と市町村より1人1日千円の助成が始まりました。山梨県は病児保育広域化利用と利用料公費助成がなされており、全国でも先進的な取り組みと評価されています。県と市町村の取組に対して感謝申し上げます。
ところで、皆さんは熱などの症状があり、医療機関から抗生剤(抗生物質、抗菌薬)を処方されたことがあると思います。抗生剤は現代の医療において重要な役割を果たしてきました。その一方で抗生剤の副作用、耐性菌とそれに伴う感染症の増加が国際社会で大きな課題の一つに挙げられています。
今月は抗生剤について皆さんにお伝えします。
抗生剤は細菌に効くお薬で、ウイルスやカビなどには効きません。つまり、ウイルスが原因である風邪には抗生剤は効かないのです。細菌に抗生剤を使用すると、細菌は生き残るために抵抗性を身につけて耐性菌が出現します。
ペニシリン(抗生剤)は1928年に発見されました。肺炎や敗血症などの感染症を治すことができ、多くの人の命が救われ、第2次世界大戦ではペニシリンのお陰で多くの戦傷兵が助かりました。その後、耐性菌が出現し、新規抗生剤を開発することを繰り返し現在に至っています。1980年代以降、新たな抗生剤の開発が減少しており、現在のように抗生剤の使用を続けていると、2050年には全世界で年間1,000万人が薬剤耐性菌により死亡することが推定されています。抗生剤を適正に使用しなければ、将来的に感染症を治療する際に有効な抗菌薬が存在しなくなることが懸念されています。
諸外国と比較すると日本では抗菌薬の使用量が多いことが指摘されています。米国では処方された抗生剤の少なくとも30%程度は不適正使用であることが示されています。日本においても、65歳以下の患者の下痢症で過剰に抗菌薬が処方され、小児の肺炎でガイドラインを遵守して抗菌薬を処方している施設が4 分の1しかないという現状があります。
抗微生物薬適正使用の手引き(第三版)では、小児の感冒・急性鼻副鼻腔炎・急性気管支炎・急性下痢症(胃腸炎)に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨しています。但し、症状が悪化し診断を再検討することもありますので治るまで経過をみておく必要はあります。
抗生剤が必要となるのは、溶連菌感染症・マイコプラズマ感染症・百日咳・クラミジア・ニューモニエなどです。第一選択薬として、溶連菌感染症はアモキシシリン(ペニシリン系の抗生剤)、マイコプラズマ感染症、百日咳、クラミジア・ニューモニエはマクロライド系抗生物質を推奨しています。
急性中耳炎は、抗菌薬処方がなくても、4分の3以上が1週間で自然治癒し、2 歳以上は3日で70%改善し、2歳未満の場合は10日で約半数が治癒することも知られ、全例に抗菌薬が必要ではないと言われています。米国小児科学会ガイドラインでは抗菌薬投与を①耳漏がある場合 ②重症(48時間以上持続する耳痛,39℃以上の発熱)の場合 ③6か月~2歳で両側の場合に抗菌薬投与を行う と推奨し、急性中耳炎の第一選択薬はアモキシシリンです。
抗菌薬が効かないのにウイルス感染で抗菌薬を飲むと、抗生剤は異物のためアレルギー反応を起したり、肝臓や腎臓を傷めたりすることがあります。口から腸の中や皮膚には無害な細菌や有益な細菌(いわゆる善玉菌)が数多く住み着いています(常在菌)。抗生剤は常在菌を殺してしまい、下痢や腹痛を起こすことがあり、耐性菌が多く住み着きます。このような状態で、細菌感染症にかかった場合、本来効くはずの抗生剤が効かない状況に陥りやすくなります。
痰の色だけで細菌性であるかの判断はできないとも指摘されています。
私自身も抗生剤の適正使用を心がけ、保護者にご説明しながら診療をしています。抗生剤のことを知って、上手に使用することをお勧めします。
抗微生物薬適正使用の手引き第三版 厚生労働省
新年あけましておめでとうございます。みなさんは今年、どんな年にしたいと思っていますか?私はアレルギーの試験を受けようと思っています。試験日が1月末なので少しずつ勉強をしています。今年はうちの子ども2人が中学・高校に進学します。何かと慌しい春になりそうです。
先月号に1月8日、小出裕章氏講演会「子どもの未来のために知ってもらいたいこと」の宣伝がありました。小出裕章さんは原発を研究しながらも反原発を唱えてきた人で3・11以降、脚光を集めています。私も著書「原発のウソ」(扶桑社新書)を読ませていただきました。先月は粉ミルクに放射性セシウムが検出され回収される騒ぎがありました。今年も放射能について目が離せません。みなさんで勉強しに行きましょう!
今月は年初めなので、基本とも言うべき「小児科」についてのお話をします。
皆さんもご存知の通り医療は日進月歩で発展を遂げており、予防接種を例に挙げても数年前と大きく異なっています。このため、一人の医師が子どもから大人まで、どんな病気でもしっかりと対応することはできないほど専門分化されています。小児科は予防接種・健診・かぜなどの感染症だけでなく、育児相談・こころの問題・発達障害・虐待など幅広い分野を守備範囲としています。対象年齢は今まで中学生までと言われてきましたが、5年前、日本小児科学会からの提言で成人する20歳まで対象を広げるようになりました。高校生でも小児科で対応できます。
かかりつけの小児科があれば、気軽に相談ができます。健診・予防接種などで元気な時のお子さんの様子がわかっているので、具合が悪くなったときなどにはスムーズに対応ができます。子どもたちは大人と違って、自分の体の状態をうまく表現できません。小児科医は元気さや食欲・症状などから子ども特有の病気も熟知しているため、敏速な対応ができます。例えば、腸重積という病気は2歳未満にかかる子ども特有の病気です。診断が早ければ高圧浣腸で治療ができますが、診断が遅れると開腹手術をしなければならず、お子さんの負担が大きくなります。また、こどもの病状は大人よりも早く進んでしまうこともあります。子どもの対応に慣れている小児科医をかかりつけにすることをお勧めします。
かかりつけの小児科医であればすべての子どもの病気に対応ができるわけではありません。より高度な専門性が必要とされる場合は、小児科の中でも神経・心臓・内分泌、腎臓、血液、アレルギーなどの専門家に紹介します。また、耳鼻科・皮膚科・整形外科・泌尿器科・歯科などへどのタイミングで受診したらよいのかについて判断ができます。小児科医は常に自分の子どもだったらどう対応するのが一番良いかを常に考えながら診療をしています。
かかりつけを探すポイントは2つあります。一つ目は、なるべくなら「小児科専門医」の資格を持った医師がよいでしょう。小児科専門医は日本小児科学会から認定されている資格で、2年間の卒後臨床研修を受けた後、小児科臨床研修を3年以上受けさらに専門の試験に合格し得られ資格です。待合室に掲げている所が多いと思いますのでみてください。内科・小児科など小児科と書いてあっても必ずしも、小児科専門医ではない場合もあります。二つ目は、医師との相性です。診療は患者さんと医師とで相互にコミュニケーションをとりながら行いますので、満足度を高めるためにも相性は大事だと思います。他には口コミやホームページを参考にすることもいいかもしれません。一番大事なのは自分の目で確かめること、つまり診療を受けて判断することだと思います。
仕事で疲れている・子どもの夜鳴きがうるさいから・仕事をしているパパを休ませたいという気遣いからパパは別の部屋で寝ているご家庭もあると思います。子育ては最初の6年間は体力的にたいへんだと思います。パパは夜おっぱいをあげられないので役に立たないように思えますが、夜鳴きも2人で一緒に乗り切りながら2人で一緒に試行錯誤しながら育児する、そういう夫婦はきっとよい家庭を築けると思います。あなたの家ではどうですか?