小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
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先月中旬、中2の息子がインフルエンザにかかり、高2の息子がうつされました。続けて東京生活していた大学生までが同じ時期にかかり急遽、自宅に戻り療養、3人ともダウンし看病しました。息子達は6年振りにかかりました。ただ、予防接種や抗インフルエンザ薬のおかげで状態はそう悪くならずに済みました。2日も経つと、早く学校に行きたいと言い出し安心しました。まだまだインフルエンザ流行中です。手洗い・うがいを励行し乗り切りましょう。 そして昨秋、うちのクリニックで開業12年にして初めてのことがありました。なんと幼い頃からみていたお子さんがママになり、患者さんとしてお子さんを連れてきました。長年、診療してきて言葉にはならない感動を得ました。小児科冥利につきる瞬間でした。今月は3歳児健診や園・学校で行なっている尿検査についてお話しします。
腎臓はおへその後ろあたりに左右に1つずつあり、握りこぶしほどの大きさで1個150gほどの臓器です。体液・電解質・酸塩基・血圧の調節や老廃物を尿として排泄していたり、強い骨の維持や貧血の防止にも関与しており、体を正常な状態に保つ大切な臓器です。また、肝臓などと違って、ダメージを受けると再生する力がありません。もともと腎臓は大きな予備力を持っていて、普段は4分の1程度の働きで機能しており、症状がでた場合は腎臓の予備力がほとんどない状態になっていることから、検尿によって症状がでていない腎臓の予備力に余裕があるうちに腎炎などの病気を発見することが大切です。腎臓の機能が低下すると生活習慣や食事に気をつけていく必要があり、将来、透析や腎移植が必要になる場合もあります。透析とは老廃物や水の排泄を腎臓に代わって行う治療で週に何日か病院で行われ生涯続きます。
学校検尿は昭和49年から始まり、現在、3歳児健診・園・学校で定期的に行われ、主に腎炎の早期発見に役立っています。検尿の制度が始まったことで、尿量が増える・目のまわりや足のむくみ・疲れやすい・食欲がない・息切れなどの症状がでる前の早期に病気が発見できるようになりました。腎臓病についての治療や管理の方法が進歩したことで、早期に発見された腎炎は多くが治療可能で腎炎の予後が改善しています。平成11年の調査で学校検尿を受けた世代の新規透析導入患者数が減少したという結果が発表されています。
尿検査では潜血・蛋白・糖を調べます。潜血と蛋白で腎炎、糖で糖尿病を発見していきます。慢性の腎臓病が見つかる割合は、血尿(潜血)単独陽性者中5%、蛋白尿単独陽性者中10%、血尿と蛋白尿両方陽性の場合70%と言われており、血尿と蛋白尿が両方みられる場合は高頻度で病気が発見されます。このため、尿異常があれば必ず腎臓病というわけではなく、精密検査をしなければ病気かどうかはわかりません。
尿糖がでた場合、糖尿病だけでなく、糖尿病と違って血糖値が正常で尿に糖が出る腎性糖尿という場合もあり、血糖やブドウ糖負荷試験などの精密検査が必要になります。
前夜、寝る直前にトイレに行き、起床後はすぐに採尿してください。潜血が陰性化する恐れがあるため、前夜はビタミンCが入ったお茶、ジュース、薬は避けましょう。お子さんの場合、寝ている時には尿が出ず、起きている時にたんぱく尿がある状態を起立性たんぱく尿(体位性たんぱく尿)とよびます。治療の必要はありません。採尿時、出始めの尿ではなく、排尿途中の尿(中間尿)を取ってください。さらに前日に採尿をしてしまうと、時間を置くことで細菌が繁殖して蛋白が陽性になったり、血尿が消失したりします。
最後に、腎臓は再生する力がない臓器であるため、大切に扱っていくことが必要です。尿検査で異常を指摘された場合、症状がでていないから大丈夫と考えるのは早計です。継続的に経過をみていく必要がありますのでかかりつけ医にご相談ください。
学校検尿のすべて 日本学校保健会
山梨県小児科医会ホームページ