小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
9月になっても暑い日が続きました。寝苦しい日が続き、昼間も外に出る気力が失せてしまい、クーラーをつけた部屋で過ごすことが多かったと思います。
今月はお子さんと一緒に外へ出て、野山での遊びを楽しみたいですね。
先月14日、げんきキッズクリニックとげんき夢こども園子育て支援センター共催で「あおぞら共和国」(北斗市白州町)の施設をお借りして、医療的ケア(医ケア)児を含む重症心身障がい児とそのご家族との交流会を行いました。コロナ前には交流会を同園の夏祭りと一緒に開催していましたが、あおぞら共和国での開催は初めてとなりました。天候にも恵まれ、10組近い家族の参加がありました。まず、各ご家庭が自己紹介をしながら、2チームに分かれて家族全員参加のレクレーションを楽しみました。その後、健常児の兄弟は保育者らと自然探索や芝生で遊び、同時並行で保護者はうちの園長が司会をしながら、近況報告や子育ての振り返りなどの話をしながら交流を深めました。話の中で「一度も家族で外泊をしたことがなかったので、とてもうれしい。」という発言や、健常児の4歳の兄弟が母親に「今までの中で一番、楽しい日!」と言ってくれたことに胸をうたれました。最後は夏らしく手持ち花火をご家族で楽しんで幕が下りました。
ところで、げんき夢こども園の子育て支援センターでは医師による座談会を年に6回程行っており、今年8月は竜王レディースクリニック(甲斐市)の森澤宏行先生をお招きしました。6組の親子が参加し、悪阻(つわり)、分娩などの話を私も一緒に聞くことができました。
その話の中で一番の話題が「プレコンセプションケア」でした。今月はこのことについてお話します。
コンセプション(Conception)とは受胎、つまりおなかの中に新しい命をさずかることをいいます。プレコンセプションケア(Preconception care)とは、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことです。『プレコンセプションケア(プレコン)』によって、女性やカップルがより健康になること、元気な赤ちゃんをさずかるチャンスを増やすこと、さらに女性や将来の家族がより健康な生活を送れることをめざしています。
女性が妊娠前に自分のからだや心の状態をよく知ること、さらには少しでもよい状態にしておくことが、より健康に妊娠・出産を乗り切ることにつながります。実際には、栄養や生活・生理周期・ワクチン接種・貧血・骨・妊娠のしやすさ・若い人に多くみられる病気・薬の影響・心の状態などについてのトータルケアが必要となります。妊娠は女性だけの問題ではありません。男性も同じように気をつけていただき、健康維持につとめて赤ちゃんのできやすい体質になりましょう。
成育医療研究センターからプレコンのチェックシートが用意されています。女性用だけでなく、男性用もあります。女性用は適正体重をキープする・禁煙する、受動喫煙を避ける・アルコールを控える・バランスの良い食事をこころがける・食事とサプリメントから葉酸を積極的に摂取しよう・150分/週運動しよう・ストレスをためこまないなどの項目が挙げられています。このような生活上の注意点に配慮していくことで、早産・低出生体重児・先天異常・周産期死亡の割合を減らすことができます。
20代女性では、5人に1人が痩せ(BMI18.5未満)と言われていますが、特に、若年女性の痩せは骨量減少や、低出生体重児出産のリスク等との関連があります。出生体重は親世代と比べると180~190g減っていて、その原因は痩せの割合が多くなったことが影響しています。また、20代女性は10人に1人が肥満(BMI25以上)と言われ、妊娠合併症の増加が懸念されます。思春期の女子は食事を気にしすぎないようにご家庭でプレコンについて伝えてほしいと思います。
他には葉酸の摂取を意識することが勧められています。葉酸は水溶性のビタミンB群の一種で、細胞の増殖や成長のために不可欠なビタミンで、妊娠前からの積極的な葉酸摂取は二分脊椎等の胎児神経管閉鎖障害の発症リスクを低減するデーターが出ました。食品(ブロッコリー・ホウレン草・いちご・枝豆など)からの葉酸摂取に加えて、いわゆる栄養補助食品から1日0.4mgの葉酸を摂取することで神経管閉鎖障害の発症リスクが低減することが期待できます。
若い女性は外見を気にして、世間も痩せを善とする雰囲気がありますが、痩せは妊娠・出産にとって、母子ともにリスクを伴います。私たちみんながプレコンを理解し、若い男女が素敵な人生を送れるように見守っていきたいですね。
プレコンセプションケアとは 日本産婦人科医会
https://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/e7ac6ca3eae3b81561d1b7bf4ee4ecd2.pdf
プレコンセプションケアセンター 国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/
先日娘とキュウリ・ナス・ミニトマト・ピーマンの苗を買って、庭に植えました。毎日娘が水やりを気にしていて、大きく育ち一緒に収穫するのを今から楽しみにしています。
ゴールデンウイークが過ぎたころから、新しい生活に適応ができず、頭痛、腹痛などの症状を訴え、クリニックに相談に来る人が増えてきました。様子を聞くと、学校でのクラス替えによる友達関係の問題・新しい担任に慣れないことなどが挙がります。こうした場合は保護者が先生に相談をし、解決策を考える必要があります。ひどくならないうちに、早めの対応をお勧めしています。難しいケースは子どもの総合医である私たち小児科医も一緒に考えていきます。
そして少子化の勢いが止まりません。2023年の出生数が前年より約4万人減少し、約75万でした。いろいろな子育て支援策を実施しておりますが、なかなか歯止めがかからないのが現状です。1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標となる「合計特殊出生率」は1.26(2022年)であり、前年より0.04%低下しています。韓国は合計特殊出生率0.78(2022年)と日本よりもさらに低いことに非常に驚きました。子どもを育てやすい環境を若い人の意見を聞きながら、一つ一つ改善していく必要があります。
今月は子育て支援策の一つとして注目されている「産後ケア事業」について皆さんにお伝えいたします。
みなさんは「産後ケアセンター」って聞いたことがありますか?聞いたことはあるが、利用した人はそう多くないかと思います。産後ケア事業は、退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、産後も安心して子育てができる支援することとされています。
最近は核家族化し、自分の親などが近くにいない状態で妊娠・出産することがまれではなくなっています。また、近くにいても高齢や病気により親に頼れない場合もあります。妊娠・出産・子育てを家庭のみに任せるのではなく、生活している地域で様々な関係機関が支援し、母親の孤立を防ぐことが重要とされています。こうした背景の中「産後ケア事業」の役割があります。
種類は宿泊をしながらケアを受ける「宿泊型」、日中のみの「日帰り型」、自宅に助産師らが出向く「アウトリーチ型」があります。母体の心身のケア・育児に関する相談・沐浴や授乳などの育児指導を受けることができます。母親に対応するのは助産師・保健師・看護師などとなります。
実際、利用を検討する場合は利用料金・助成の回数などが市町村でバラツキがあります。対象者は産後に心身の不調または育児不安などがあり、支援が必要な方となっています。興味のある方はお住いの市町村にお尋ねください。ちなみに甲府市は利用料金が宿泊型3,600円(1泊2食)、日帰り型500円、助成回数が宿泊型3泊4日、日帰り5日まで、産後4か月までとなっています。他県の情報として鳥取県では令和2年度から利用料金を無償化(全国初)したそうです。
県内で産後事業を実施している施設は2016年から「健康科学大学産前産後センターママの里」(笛吹市)が、宿泊型・日帰り型をしています。来月から私のクリニックと連携しながら「げんき夢こども園」で産後ケア事業を開設する予定です。定員は2組、対象年齢は産後1年まで、日帰り型で助産師・看護師が対応します。昼食時は母親の孤独を防ぐために子育て支援センター利用の先輩母との交流も検討しています。小児科併設・子育て支援センター・一時保育・病児保育などの機能を活かしながら、微力ではありますが関わらせていただきます。
最後に、産後ケア事業は充足されれば、育児環境は万全かと言われると、決してそうではありません。産後ケアは母親のケアをしてもらえますが、子育てで母親と同じくらい大切な人である「父親」の存在・役割を忘れてはいけません。育休取得率が増えてはいますが、子育ての役割はまだまだ母親に重くのしかかっています。父親は仕事だけをする存在ではなく子育て・母親への支えをしていく役割が求められています。みんなで母親も父親もサポートしていきましょう。
産前・産後サポート事業ガイドライン(厚生労働省)
産後ケア事業について(こども家庭庁)
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/ce28e632-7504-4f83-86e7-7e0706090e3f/1d73c9a2/20231122_councils_shingikai_seiiku_iryou_tWs1V94m_04.pdf