小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
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夏到来、海や山に遊びに行く機会が増えます。けが、水の事故、熱中症に気をつけて楽しい夏の思い出を作ってください。先月の父の日、うちの娘は保育園で作ってきたフォトフレームを私にくれました。園児らで何を作るかを考え、何色が好きかと私に事前に聞き、一生懸命に作成してくれました。私の一生の宝物になりました。
先月11日、沖縄県の麻疹流行が終息しました。全国的な大流行にならず、安心しました。再び麻疹流行を阻止するには平時での取り組みが大切です。1歳児には麻疹風疹(MR)ワクチン1期、年長さんの方はMRワクチン2期を接種しましょう。今月は昨年発表された「小児急性胃腸炎診療ガイドライン」を基に、急性胃腸炎の対応法についてお話したいと思います。
原因はウイルスと細菌に分けられ、多くがノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルスなどのウイルスによるものです。頻度は少ないですが、大腸菌・サルモネラ菌・カンピロバクターなどの細菌によるものがあります。病名は胃腸炎が一般的ですが、感染性腸炎・腸感冒・おなかのかぜ・嘔吐下痢症はどれも同じと考えてください。症状は嘔吐・下痢・腹痛・熱・頭痛などがあります。嘔吐のみ、下痢のみ、腹痛のみで治まる場合もあります。例年秋からノロウイルス、年明けにロタウイルスが流行します。ロタウイルスは一般的にノロウイルスより症状が重く、乳児の場合は入院することもありますが、ロタウイルスワクチンが導入されるようになってから、重症化するお子さんがワクチン導入前に比べて大きく減っています。感染経路は主に接触感染で便や嘔吐物を触り、手などから口に入り感染します。潜伏期間は1~3日程度です。
最近、熱性けいれん・ぜんそく・食物アレルギーなど数々の診療ガイドラインが作成され、治療の均一化が進んでいます。そのガイドラインは推奨される治療法とその根拠が書いてあります。
「小児急性胃腸炎診療ガイドライン」は専門家(日本小児救急医学会 診療ガイドライン作成委員会)により、科学的根拠に基づく医療の考え方に沿って推奨される診療内容を17項目(CQ1~CQ17)にまとめて、初めて作成されました。重症化するO-157などの特殊な細菌性胃腸炎ではなくウイルス性胃腸炎に対してのみ書かれています。
「経口補水療法」については、軽症~中等症の脱水のお子さんは治療として経口補水療法が推奨されていること(CQ6)、経口補水療法は「OS-1」(大塚製薬)を代表とする経口補水液がお勧めで、初期治療として嘔吐や下痢で失われた水分と同じ量を4時間以内に飲ませること(CQ7)、与え方はティースプーン1杯程度を5分ごとに飲ませるとよいこと(CQ8)、経口補水液を嫌がる場合、塩分を含んだ重湯、お粥、野菜スープ、チキンスープで代替してもかまわないこと(CQ9)、
「食事療法」については、経口補水液を飲みながらでも母乳は中断せず、併用しながら対応してよいこと(CQ10)、脱水が改善したらミルクや食事はすぐに開始してもよいこと、食事の内容はお粥などではなく、年齢に応じた通常の食事でかまわないこと、食事制限をしても直るまでの期間に変わりはなく、むしろ体重の回復を遅らせる可能性があること(CQ11)、ミルクの希釈はしないこと(CQ12)、乳糖除去乳の有効性は確認されているが、コストと効果のバランスを考慮すると最初からすべてのお子さんに使用する必要はないこと(CQ14)、
「薬物療法」については、止痢薬・止瀉(ししゃ)薬の使用は推奨されないこと、止痢薬は有効とのエビデンスが乏しいこと、止瀉薬(ロペラミド)は乳児でイレウスの発症が報告され、2歳未満は原則禁忌となっていること、制吐薬は有効とする報告があるが、錐体外路系や心電図異常の有害事象が報告されていること、多くはウイルス性であるため一律に抗菌薬の使用は推奨されないこと、漢方薬は有効とするだけのエビデンスがなく、現時点で推奨度を決めることができないこと(CQ15)、
「予防と教育」については、ロタウイルスワクチンにより重症ロタウイルス胃腸炎に対する予防効果が90%以上認められること(CQ16)、感染拡大防止には手洗いの徹底と次亜塩素酸消毒剤による消毒が重要であること(CQ17)と述べられています。
一方で実際はガイドライン通りに診療すればよいのではなく、同じ病気でも子ども一人一人症状が違うため、ガイドラインを基にした個別の対応が求められています。
小児急性胃腸炎診療ガイドライン
新年あけましておめでとうございます。みなさんの今年の目標は何でしょうか?私は今年、医療に関する国際的な試験を受けようと思っています。受かったらお知らせしますね。また、今年3月に一番上の子が高校受験を迎えることもあり、親として今までになく落ち着かない新年を迎えました。
昨秋からノロウイルスが原因である感染性胃腸炎が10年ぶりに保育園や幼稚園を中心に大流行しており、メディアでも取り上げられています。すでにかかった人も多いと思いますが、最近変わりつつある胃腸炎の治療法についてお話ししたいと思います。
胃腸炎は最近よく耳にするようになってきました。感染性胃腸炎・腸感冒・おなかのかぜ・嘔吐下痢症はどれも同じ病気と考えて構いません。原因はウイルスと細菌に大きく分けられ、多くがノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルスなどのウイルスによるものです。頻度は少ないですが、大腸菌・サルモネラ菌・カンピロバクターなどの細菌によるものもあります。症状は嘔吐・下痢・腹痛・熱・頭痛などがあります。嘔吐だけ、下痢だけで治まる場合や、症状が軽い場合はむかむかするだけで治まることもあり、同じウイルスにかかっても人によって症状が違います。
例年10~11月からノロウイルスが流行し、年明けにロタウイルスが流行します。ロタウイルスは一般的にノロウイルスより症状が重く、乳児の場合は入院することもあります。
感染経路は主に接触感染で、便や嘔吐物を触り、手などから口に入り感染します。潜伏期間は1~3日程度です。予防は手洗いとうがいが大切です。また、ノロウイルス・ロタウイルスはインフルエンザと同じように一度かかっても何度もかかってしまいます。
嘔吐を1~2回しても元気がよければおうちで回復を待ってもいいかもしれません。しかし嘔吐の回数が多い・ぐったりしている・高熱がでる場合は早めの受診をお勧めします。
薬についてはウイルスが原因であれば、特効薬はないため薬を飲む必要はありません。胃腸炎の症状で一番心配なのは嘔吐が続く場合です。嘔吐が多く、脱水がひどくなれば点滴する必要がありますが、症状が軽い場合は「OS-1」(オーエスワン、大塚製薬)という経口補水液がお勧めです。決して大塚製薬のみを応援しているわけではないのですが、子ども用イオン飲料とは異なり、唯一「病児用食品」に分類され治療に用いられているため紹介しました。また他メーカーの商品が発売されるようなことがありましたら、お知らせします。
OS-1は症状が軽い場合に有効で、軽い脱水の場合、体への吸収がよいため点滴した場合と同じ効果があります。OS-1が発売されてから点滴をする頻度が減り、OS-1を飲んでよくなるお子さんが多くなってきました。吐き続けてぐったりしているお子さんをみて、点滴で楽にさせてあげたいという親御さんのお気持ちは十分にわかりますが、お子さんが点滴をされることでの苦痛や点滴の液が血管外に漏れて手が腫れたりするトラブルなどのことを考えると、OS-1で対応してみることも大事です。スポーツドリンクはOS-1と比べて塩分濃度が低く糖分が多いため腸の吸収が悪くなり、多く飲みすぎると血液中の塩分濃度が低くなり低ナトリウム血症という合併症を起こす危険もあり、おすすめできません。
OS-1の飲ませ方のコツは1~5分ごとに1回5mlずつをスプーンやキャップを利用して繰り返しあげて下さい。「少ない量で回数を多く!」を忘れずに根気よくあげて下さい。乳児の場合、OS-1でなく母乳・粉ミルクを飲ませても構いません。母乳なら回数を多く、粉ミルクなら薄めずに飲ませてください。
次に嘔吐が落ち着いたら食事を始めてください。食事は以前まではやわらかいものから始めるように言われていましたが、最近は普通の食事でよいと言われています。
インフルエンザの流行が始まりました。インフルエンザの特効薬は今まで「タミフル」という飲み薬と「リレンザ」という吸うタイプの薬の2種類がありました。今シーズンから「イナビル」という吸うタイプの薬が新発売されました。イナビルはリレンザと同じ吸うタイプの薬で、リレンザと比べて吸う回数が少なく、1回で済みます。また飲んだり吸入できないお子さんには点滴に入れる薬も登場しています。以前と比べて選択肢が多くなり心強い味方が増えました。