小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
先月のG・Wには妻が被災地ボランティアに行った岩手県山田町を1年ぶりに訪れました。ボランティアを通じて知り合った地域の人の話によると、役場にはまだ県外からたくさんの応援職員が来ていて、毎日夜遅くまで復興に関する仕事をしているとのことでした。がれきの山は大分片付いて、仮設の商店街もできていました。ちょうどG・Wということもありお祭りの催しにも参加し、活気が戻りつつあるように感じました。一方で数百世帯が一緒になっている仮設住宅はあちこちに点在し、そこで生活している人々にとっては震災前と比べ程遠い状態であることを思い知らされました。数日後の新聞では復興予算が別の目的で使われている報道がありました。やるせない気持ちになりました。
さて、新聞・TVなどで報じられていますが、風疹の流行がまだまだ止まらず患者数が増えています。当クリニックでも大人の方が風疹ワクチンの在庫がないため麻疹・風疹混合ワクチンを接種するケースが増えています。風疹の免疫のない大人の方はぜひワクチンをしてください。先月は風疹の恐さをテーマとして取り上げました。今月は、風疹以外に妊娠中にかかると胎児に影響がでる病気についてご紹介したいと思います。
妊娠中に初めて感染すると胎児に障害を引き起こす病気として、トキソプラズマ(Toxoplasma)、風疹(Rubella)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、ヘルペス(Herpes)、リンゴ病・梅毒など(Other)があり、これらの病気の頭文字をとって「TORCH(トーチ)症候群」と言います。妊娠中にサイトメガロウイルスやトキソプラズマにかかった患者の会「トーチの会」が昨秋立ち上がり、この病気の予防啓発に取り組んでいます。
10年前に行われた日本小児感染症学会の実態調査によると、サイトメガロウイルスは年50人、トキソプラズマは年5人程度と診断されていますが、診断がついていないケースもかなりいるのではないかと言われています。
サイトメガロウイルスは主に母乳や子どもの唾液や尿に触れて感染します。以前まではほとんどの方が感染していましたが、最近、妊娠可能な女性の抗体保有率が約9割から約7割に減っています。妊娠中に初感染した場合、妊婦さんは無症状か軽いかぜ症状がでる程度ですが、胎児にかかると、流産・死産、脳や聴力障害などを生じることがあります。子どもの唾液や尿を触ったら手洗いをきちんとすることが予防につながります。
トキソプラズマという原虫による感染症で妊婦の抗体保有率は約1割と言われます。生肉やネコの糞や汚染された土の中を介して経口感染でうつります。健康な方がかかってもサイトメガロウイルスと同様の症状がある程度ですが、妊婦さんが初感染し胎児にかかると流産・死産、脳や眼の障害などが生じることがあります。加熱不十分な肉を食べないことやネコの糞の処理や土をいじるときには手袋をすること、合わせて作業後の十分な手洗いが大切です。
一部の病気には治療薬がありますが、診断がしっかりとできないと治療薬も使えません。風疹以外は予防するワクチンもありません。これらの病気について知ることが予防につながります。
トキソプラズマ(国立感染症研究所) http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/3009-toxoplasma-intro.html
サイトメガロウイルス(国立感染症研究所) http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/407-cmv-intro.html
「トーチの会」ホームページhttp://toxo-cmv.org/